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アパレルショップ綺羅の事件簿 22

7 〈綺羅〉店内

 青マネキンが横倒しになっている。服を脱がされ、からだには大量の落書き。

 ほのか、早紀が下手から登場。満足そうな表情を浮かべている。少し遅れて、両肩を遥と楓に支えられた仁恵が登場。

早紀  「ああ……(うっとりとした表情で)今日も晶様はイケメンでした」

   「店長さん、大丈夫ですか?」

仁恵  「ああ……もう大丈夫。(一人で立ち上がり)迷惑をかけちゃったね」

   「びっくりしました。まさか本当に気絶するなんて」

仁恵  「あんなイケメン見たら、誰だって失神するってば。……あ、ダメ。思い出したらまた」

 その場に倒れそうになる仁恵を遥と楓が慌てて支える。

ほのか 「(床に倒れた青マネキンに気づき)あああああああっ!」

仁恵  「なに? 大きな声を出して……(マネキンに気づき、もっと大声で)ああああああっ!」

 大声を聞いて、慌てた様子で麻美とうららが登場

麻美  「なんだ、なんだ? どうした?」

うらら 「事件発生ですか?」

仁恵  「マネキンが……」

 キラにスポットライト。

キラ  「〈アパレルショップ綺羅〉の怪事件、事件その3! マネキン襲撃事件!」

8 〈綺羅〉店内

 青マネキンが舞台中央に立っている。それを取り囲む面々。

うらら 「うわーい♪ ようやく事件らしい事件が起こったじゃない。女子高生探偵星崎うららの名前を売る最大のチャンス到来! よーし、頑張るぞーっ! (咳ばらいをして)さて、皆さん。この殺人事件についてもう一度整理してみましょう」

   「殺人事件ではないけどね。マネキンが悪戯されただけだから」

仁恵  「でも、誰がこんなことを……」

麻美  「(青マネキンを見ながら)ばーか、ばかばか、あほ、まぬけ、おまえの母ちゃんでべそ――小学生レベルの落書きだな」

うらら 「午前十一時五分から十五分までのおよそ十分間、この店には誰もいませんでした」

   「みんな、プリンス晶を見に行ってたからね」

うらら 「犯行はその空白の十分間に行なわれたと考えて間違いないでしょう」

早紀  「まあ、普通に考えればそういうことになりますよね」

うらら 「入口のドアに鍵はかかっていませんでしたから、犯行は誰にでも可能でした」

麻美  「いや、それは違うな」

うらら 「へ?」

麻美  「私はイケメンなんてこれっぽっちも興味なかったし、この店にまた泥棒が入ったら大変だと思ったから、入口のドアの前に立って周囲を見張っていたんだ。貴様たちが戻ってくるまでずっとな。その間、店にやって来た者はひとりもいなかった。これは断言してもいい」

つづく

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