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読書は脳を発達させるのか?
川島隆太教授(東北大学加齢医学研究所教授)の2023年12月に出版された新刊本を発見したので、すぐにアマゾンで注文して、入手して、読みました。
当ブログは、脳科学を標榜していることもあって、川島隆太教授の本は、すべて読まざるを得ません。しかし、本書で、川島隆太教授が、データーを示して言うことには、正直、直感的には、賛成しかねるところがあると思いました。確かに、音読は、まんべんなく広く全脳を活性化させるのでしょうが、だからといって、読書が、脳の発達を促すという考え方には、塾・予備校の講師をして、色んな子供を見てきた人間や2つの小学校の同級生を見て来た人間からすると、賛成しかねるところがあると思いました。やっぱり脳の発達って、遺伝的(DNA)なところが多くて、それは、黒色人種の人が、陸上で好成績を上げるというのは、後天的に得られた脳の優秀性よりも、先天的な脳の優秀性の方が、大きいと思うからです。本書でも、繰り返し、指摘されていますが、身体(筋力・敏捷性・柔軟性など)も鍛えないと成長しないように、脳も、読書などで鍛えないと、その特定の部分が成長しないと主張しているのですが、ちょっと間違っていると思いますね。黒色人種の人の脳に黄色人種の人がなれないように、脳の成長も、先天的で、遺伝(DNA)的な要素の方が大きいと思うのです。脳科学というものが出てきて、他の人が言わないことを主張して、独自性や先進性を出したいという気持ちはわかりますが、間違っていると思いました。スマホやケータイがない時代に、塾の講師として、たくさんの子供と対話をしてきましたが、もう小学生の時代には、子供ごとの脳の個性というのは出てきてて、その現れが、性格であったり、おしゃべり好きであったり、創造性に富む子であったり、覚えるのが速くて正確な子とか、色んな、いわゆる「性格」や「頭脳の特徴」として、出てきているわけで、読書をしたから、脳の特定の部分の成長が促されるわけはないと思いました。同級生でも、色んな人がいたけど、成績が元々、良い子が、スマホやタブレットを持ったからといって、成績が落ちるとは思えないということです。成績が悪い子は、小学生などから、早めに、スマホを持たせて、調べる癖を付けると、成績が上がったり、社会人になってから、仕事ができる、使える子になったりする、つまり、使い方の問題ではないかと思いました。手で書いたほうが、覚えるというのは、経験的にわかっていることで、脳の特定部位を使わない、もしくは、脳の特定部位が成長しないから、覚えないということとは違うのではないかと思いました。たとえば、小学生がキャベツの生産量の順位の図表を覚えようとしても、スマホがあれば「OK!Google」をすれば、すぐその正確な情報を入手できるわけであって、覚えるのが苦手(→従来の概念で言うところの「成績が悪い子」)な子も、成績が良い子と同格、もしくはそれ以上の成果を上げることができるということなんだと思うんです。だから、スマホやタブレットは、脳の特定部位の成長を阻害し、成績が悪くなると、川島隆太教授が言うように決め付けるのは、早計だと思いました。スマホの使い方で、今まで、成績が悪かった子が、成績が良い子より成果を上げるように、義務教育で、徹底的に鍛えるべきで、そこには、スマホやタブレットを使うと脳の特定部位の成長が阻害されるということとは関係がないと思うんです。たとえば、受験とかで、ソラで、覚えなくてはいけないことは、覚えられるということと、スマホですぐ調べられるという子は、同格だし、実際、社会人になってからだと、自分ですぐ調べられる子のほうが、仕事ができる子として、重宝されると思いました。成績が悪い子には、すぐにスマホを買い与えたほうが、賢い子になると思うんです。社会人になってから、使える子供になると言っても、いいでしょう。だから、成績が悪い子には、早めにスマホを買い与えている傾向があるということじゃないでしょうか。成績が良い子は、親が勉強に集中してほしい、受験勉強の本試験の会場にスマホを持っていって、調べることはできないということから、必死に頭を使って、覚えて欲しいということではないかと思うんです。社会人になったら、「OK!Google」の嵐で、仕事をしていくこともあり、川島隆太教授の指摘より、受験(覚えることが中心で、覚えたことを問題演習をしてアウトプットした者が勝つ)の変容が求められているということなんじゃないでしょうか。
スマホにも、スマホをやっている時間が長い子供ほど、成績が悪いということをデーターを示して、本書で、川島隆太教授は言っていますが、①スマホを持っていると、気が散って、勉強に集中できない、②スマホを持っているとスマホが面白すぎて勉強する時間が少なくなったり、③スマホや電子辞書で言葉の意味を調べるより、紙ベースの辞書で、動作を伴って、調べた方が、記憶に残りやすい、という直感的な経験的な事実と違いはないと思います。スマホを持っていると、成績が悪いというのは、単なる「勉強法」レベルの話に過ぎないと思っています。
私は、むしろ、勉強のときに、スマホの電源などは切らずに、スマホを立てかけて、何らかの「更新情報」が入るのを楽しみに勉強するのはとても良いことではないかと思っています。勉強は、たいていは、辛いものですし、そんななかスマホでたまに休憩すると、勉強の集中力が逆に維持できて、長く勉強できると思うのです。勉強してて、わからないこと(キャベツの国内生産量のランキングなど)があれば、すぐに「OK!Google」をして調べることもできるというメリットもあります。それで、記憶したいことがあれば、スクショなどを取っておけば、勉強にも多大な貢献をしてくれると思っています。スクショを取っておけば、後からでも、何回も見直して、記憶することだってできます。わからない語句などがあれば、スマホに電子辞書をダウンロード(三省堂の新明解がお勧めです!)すれば、すぐに調べることもでき、漢字や語句の勉強にもなります。紙の辞書の方が、覚えるという話もありますが、スマホの辞書も大変便利なものです。ポストイットなどを付けなくても、目的別にフォルダを作って、調べた単語をそこにストックしていくことができますし、後から、履歴でまとめて復習することもできます。漢字だって、その履歴を見ながら、ノートにでも、手で書いて覚えることもできます。つまり、スマホは、効率的な勉強を支援するツールにもなり、辛い勉強の時間を楽しく過ごす、集中力を維持するツールにもなるのです。
本書の川島隆太教授の主張で良いところは、心理学の知見も、参照しているところだと思います。心理学を脳科学的なことで裏打ちを取りたいといっても、100%は、無理ではないか、心理学を100%脳科学で上書きすることは不可能ではないかと思いました。
加えて、本書の川島隆太教授の主張の足りないと思うところは、ドーパミンやセロトニンと言った脳内の化学物質に関する話への言及がないところです。同じく脳科学者の茂木健一郎さんは、「ドーパミン強化学習」を主張しています。スマホを持っていると、気が散ってしまうので、「ドーパミン強化学習」みたいなもので、学習を促進させるといいと思うんですね。
音読が脳を活性化させる、読書が脳を育てると言っても、脳が活性化すると、脳の成長が促される、頭が良くなる、感性か鋭い子になる、運動神経が良い子になるということは「ない」と思うんですね。これは、川島隆太教授が、脳トレ本の教授語録で言っていたことなんですけど、「性格というのは、脳内の化学物質の多寡が決めている」と言っていたので、音読や読書の習慣とは関係がないんじゃないかと思いました。音読などをすると、脳が活性化するのか、スカッとするところはあると思うのですが、「だから?」というところもあると思います。本書の主張は、ちょっと説得力に欠けるところがあるのではないか、脳科学最強論ばかりに傾倒し過ぎなのではないかと思いました。音読や読書が脳を育てているのではなくて、先天的なこと、遺伝的(DNA)なことが、脳の成長を決めているというのが、私の主張です。本を読む子は、脳の特定部位の成長が促されて、成績が上がるのではなく、本好きな子は、元々、勉強への意欲が高い子が多いだけではないでしょうか。本書の問題意識は、合理的な勉強法や集中力の保ち方で解決できる問題だし、脳科学が出てきても、心理学は消えることはないと思いました。心理学は、脳科学的な知見を取り込みながら、さらに発展していく学問だと思いました。脳は、身体と同じではないというのが私の持論です。本書の川島隆太教授は、脳は身体と同じで、音読などで鍛えないと成長しないという考え方は間違っていると思います。脳科学最強論ばかりに傾倒するのは、どうかと思っています。
私は、小学生にも、積極的にスマホを持たせて、使い方を教え、学力増進を図るべきだと思います。
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