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【現代人のための仏教心理学】 〜第1回「不安との付き合い方」〜



はじめに:シリーズを始めるにあたって

みなさん、こんにちは。
今日から「現代人のための仏教心理学」というシリーズをお送りしていきます。
第1回のテーマは「不安との付き合い方」です。

現代社会における不安とは

昨今、私たちの周りには不安の種があふれています。

たとえば、SNSを見れば、友人や知人の華やかな投稿に触れ、自分だけが取り残されているような気持ちになることもあるでしょう。

スマートフォンからは次々と新しい情報が入ってきて、それらを処理しきれない忙しさに追われています。

さらには円高による経済の先行き不安、働き方の変化、人間関係の複雑さなど、将来への不安を感じる要素は枚挙にいとまがありません。そ

んな現代だからこそ、2500年以上の時を経て受け継がれてきた仏教の知恵が、私たちの心の支えになるのではないでしょうか。

仏教から見た不安の本質

私たちが感じる不安の多くは、
「このままでいいのだろうか」
「将来はどうなるんだろう」
という漠然とした思いから生まれてきます。

仏教では、この世の中の全てのものは常に変化し、移ろいゆくと考えています。
これを「諸行無常」と呼びます。たとえば、空を見上げてみましょう。そこにある雲は、刻一刻と形を変え、風に流されて移動していきます。
じっとしているように見えても、実は絶えず変化しているのです。

私たちの心も同じように、まるで空を流れる雲のように常に変化しています。
でも、なぜか私たちは「今のままであってほしい」「変化してほしくない」という思いを心の奥底で抱えがちです。
その思いが強くなりすぎると、そこに執着が生まれます。

仏教では、この執着こそが不安や苦しみを生み出す根本的な原因だと考えています。
つまり、不安の本質は「変化を受け入れられない心」にあるというわけです。

不安との向き合い方:仏教が教える3つの実践

仏教には、不安な心と向き合うための具体的な実践方法が古くから伝えられています。
現代の心理学研究でもその有効性が実証されている、以下の3つの方法をご紹介します。

1. 呼吸に意識を向ける:阿那波那念(あなぱなねん)の実践

これは釈尊自身が実践し、弟子たちに教えた瞑想法の基本です。
呼吸に意識を向けることで、散乱した心を一点に集中させる方法です。

やり方はとても簡単。
お腹の下の方を意識しながら、まずはゆっくりと息を吐いていきます。
これを8秒くらいかけて、とにかくゆっくりと。
そして4秒くらいかけて、同じようにゆっくりと吸います。

この呼吸法のポイントは、「ゆっくり」というところです。
普段の呼吸があまりにも無意識なものなので、最初は少し違和感があるかもしれません。
でも、それも含めて意識的に行っていくことが大切です。

2. 不安を観察する:念(マインドフルネス)の実践

仏教の重要な実践である「四念処」の一つ、「心念処」に基づく方法です。
感情を執着せずに観察することで、その無常性(常に変化する性質)を理解していきます。

たとえば、大切な人を失うような出来事があれば、悲しみや不安が押し寄せてくるのは自然なことです。
ここで試してほしいのが、まるで第三者のように、少し離れた視点から自分の感情を見つめてみることです。
「あぁ、今の自分は不安を感じているんだな」と。
感情に飲み込まれるのではなく、その感情を観察する自分がいることに気づくのです。

3. 今できることに集中する:正念(サティ)の実践

禅の「只管打坐(しかんたざ)」の考え方にも通じる実践です。
現在の一瞬一瞬に意識を向けることで、過去や未来への執着から解放されていきます。

たとえば、お茶を飲むという何気ない行為。
普段はほとんど意識せずに行っていると思います。

でも、ちょっと意識を変えてみましょう。
ペットボトルを手に取った時の重さ、お茶の香り、色味をじっくりと確認します。口に含んだ時の温度、舌の上での味わい、喉を通っていく感覚...。

こうした一つ一つの感覚に意識を向けてみるのです。

歩く時も同じです。地面に触れる足の裏の感覚、体重の移動、腕の振り方など、普段は意識していない動きに注意を向けてみましょう。

日常での具体的な実践方法

これらの方法は、決して特別な時間を設ける必要はありません。
日常生活の中で、ちょっとした瞬間を使って実践できます。

たとえば、朝目覚めた時。まだベッドで横になったままで構いません。
そこで深い呼吸を3回。
これだけでも、一日の始まりが違ってきます。

スマートフォンを使う時も、画面の内容だけでなく、時々は自分の指の動きや、持っている手の感覚に意識を向けてみましょう。

電車やバスでの通勤時間、仕事の合間の休憩時間、寝る前のひととき。
そんな日常の一コマ一コマで、ほんの少しずつでも意識を向けていくことで、心はどんどんニュートラルな状態を取り戻していきます。

おわりに:継続的な実践のために

皆さんの日々の生活の中で感じている不安や、それとの向き合い方について、ぜひコメントで教えていただけたら嬉しいです。みなさんの経験は、きっと誰かの参考になるはずです。

次回は「怒りのマネージメント」というテーマでお話しします。
怒りの感情との上手な付き合い方について、仏教の視点からご紹介していきたいと思います。

それでは、また次回お会いしましょう。

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