ぼくには親父はいないから介護は楽させてもおうと思う
小学校2年。半日の授業が終わって家に帰る。
アパートの前には一台のタクシーが停まっていて。助手席には意を決した母がハンドバックを握りしめて少し浅めに座っている。
後部座席にはふたつ上の兄ちゃんが見えて、大泣きしているように見える。
なんのことかわからなかったが、いや、うすうす分かってはいたのか。ぼくは小走りでタクシーに駆け寄る。
「乗って」と母親に言われ、駄々をこねるわけでもなくタクシーに乗った。
母親の指示ででタクシーは走り出し、二度とそのアパートに訪れることはなか