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『詩』冬の朝露は国語なのよ、と君が言う

朝露がいっぱいに降りている
  ⎯⎯ 夏の朝露は数学だけど、
  冬の朝露は国語なのよ
庭を散策しながら君が言う
⎯⎯ ではガーデニングは哲学かな?
笑いながら僕が言うと
⎯⎯ 哲学なんかじゃないわ
近くの草花に手を延べながら
いつになく真顔で君が答える


まだ残っている草花も 冬が来て
ほとんど茎だけになって揺れている
僕らは見たことがなかったろうか、おざなりに
朝露が枯れた葉の上で揺れている
つまらないこんな抽象画を
綺麗に刈り取られたあとに広がる
黒々とした土壌の上で みつばちが
所在なさげに彷徨っている
こんな季節にいるはずのない それは僕の
気持ちのなかの染みのようで


⎯⎯ ねえ、ふと立ち止まって君が聞く
⎯⎯ どうして花は枯れるのかしら?
僕に確たる答えがない、そんな問いを
君はときどき口にする ごく真剣に
そして僕は知っている
時期が終わったから、などという答えを
君が期待していないことを そう言えば
君は僕の問いに答えていない 哲学でない
いったいガーデニングは何だろう?


不意に振り返った君は笑みを浮かべ
⎯⎯ ガーデニングはスポーツなのよ、と
心を読んだかのように口にする うろたえて
ああ、と呆けたように僕は答える
でも僕はきっと好きなのだ、今のような
こんな瞬間が 蚤の市で
ばったり掘り出し物に出会ったような
そして君の背中に目を向けながら 僕にとって
君こそが大きな問いなのだと
僕は気づいて嬉しくなる


⎯⎯ そう言えば、と
もう一度振り向いて君が言う
⎯⎯ 花が枯れるのはいったいなぜ?
しまった!まだそれを
君はしっかり覚えていたのか 僕は既に
今朝の朝食のマーマレードと
トマトジュースで頭がいっぱいだったのに!




今朝の自宅の庭は朝露でいっぱいでした。こんなことで、冬の訪れを感じる今日この頃です。冬の朝露が国語、と言うのは、見たまんまの感想。




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