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『詩』子どもたちが階段を下りてゆく
階段を降りてゆく 子どもたちが
長い長い階段を下りてゆく 艶消しの
ステンレスの空が広がり ひとすじの
長い階段がそこにあって
見えるものと言えばそれがすべてだ そんな
不思議に明るい空のあいだを
男の子も女の子も一列になって 階段を
リズムを取りながら下りてゆく
そうして子どもたちはみんな
とても愉快そうだ 自分たちが
あたかも歌にでもなったように 腕を振り
元気に階段を下りてゆく
下りてゆく子どもたちの周りには
光がいっぱいに溢れていて というよりも
ステンレスの空のせいで その世界が
まるっきり光そのもので 子どもたちは
時にとっても困ってしまう
なぜなら影が全くないので 次の足を
下ろそうとふと躊躇った その刹那
彼もしくは彼女は不安になって
前に進むことができなくなる
元気いっぱいだった子どもたちの列が
渋滞し 追突し ざわざわと
怒りが波のように伝わってゆく 立ち止まった
彼もしくは彼女は怖くなって
その場にしゃがみ込んでしまう!
何が起こったのか?
何が起こったのか!
何が、起こったのか ⎯⎯
それでもステンレスの空のなかを 階段は
高く高く上っていて 子どもたちが
何も知らない子どもたちが 元気よく
後から後から下りてくる 階段は
光のずっと奥まで伸びて
やがて吸い込まれるように
先が見えなくなってしまう 子どもたちは
どこからやってくるのだろう?
これ以上押してはいけない!
これ以上進んではいけない! 立ち止まり
しゃがみ込んだ彼もしくは彼女が
でないと階段から落ちてしまう、光のなかへ ⎯⎯
光のなかへ? でもそれは
いったいどういうこと?
艶消しのステンレスの空と
真ん中を貫く階段と
そうして光しかないこの世界で
落ちてゆく先には何がある?
初めて子どもたちは不安に怯える
いや、そうじゃない、ここに来て
初めて不安というものを知るのだ 歌であり
リズムであった自分たちに
生まれた何かに気づくのだ 子どもたちは ⎯⎯
そのとき初めて子どもたちは 足元に
薄い影を見つけ出し しゃがみ込んだ
彼または彼女は立ち上がり
恐る恐る一歩を踏み出す その瞬間
ステンレスの空が光から
輝きに似たファンファーレに変わり
すべての子どもたちを祝福する
彼または彼女の果てなき列を
*タイトルはこちらの画像を使用
René SchaubhutによるPixabayからの画像
1日くらい間を空けるようにすると、イメージが浮かんでくるようです。もっとも何のイメージかは、自分でもよくわからないけれど(汗)。
普通は、階段は上ってゆくものでしょうか? でも僕のなかでは下りてゆく気分があって、けれどそれは否定的なものではありません。その辺、ちょっと伝えるのが難しいですね。
今回もお読みいただきありがとうございます。
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