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mofi|映画・答え合わせ

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ハリウッド映画を中心に、新旧の映画の構造や効果を「答え合わせ」します。
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#ハリウッド映画

『ゴーストバスターズ:フローズン・サマー』ウェルダンだが加齢臭にじむフランチャイズ続編

『ゴーストバスターズ:フローズン・サマー』ウェルダンだが加齢臭にじむフランチャイズ続編

『Ghostbusters: Frozen Empire』(2024年)★★・・。

コアファンに牙を剥かれて炎上した2016年公開の女性版から素早く身を翻し、旧キャストのみならず監督までを血筋と縁故で固めたリブートシリーズ『ゴーストバスターズ』。

↑ からの。↓

通算3作目『アフターライフ』(2021年)に続く本作『フローズン・サマー』(2024年)は前作の物語を継承した、完全なるフランチャ

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完成型の進化形態『ヘンリー・シュガーのワンダフルな物語』ほか3遍

完成型の進化形態『ヘンリー・シュガーのワンダフルな物語』ほか3遍

『The Wonderful Life of Henry Sugar』(2023) ★★★★。

「ヘンリー・シュガーのワンダフルな物語」を皮切りに、ウェス・アンダーソンがロアルド・ダールの原作児童書を映像化。4日にわたって4本の短編が『白鳥』『ネズミ獲り男』『毒』の順にNetflixにて配信されており、視聴の順番もこの並びでいくのがトーンを鑑みるに順当だろう。「ヘンリー・シュガー〜」が39分とも

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『アーノルド』:つべこべ言わずに夢を追え

『アーノルド』:つべこべ言わずに夢を追え

『Arnold』(2023) ★★☆・。

ボディ・ビルダーであり、スター俳優であり、政治家となったオーストリア出身のアメリカ人、アーノルド・シュワルツェネッガーの人生を3部構成で辿るNetflixのドキュメンタリー。75歳を迎えた彼のこれまでのキャリアを、それぞれ「Athlete」「Actor」「American」と題して1時間ずつにまとめている。

文字通り、肉味のあるハイライトをアップビート

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『パスト・ライブス(原題)』沁み入る移民物語

『パスト・ライブス(原題)』沁み入る移民物語

『Past Lives』★★★★。

染みる。両親に連れられて海を渡る女の子と、母国に残る男の子。年月を経て再会する2人は…。ニューヨークとソウルの2都市をまたぐ、穏やかで抑えた展開。焦らず、しっとりと紐解く物語。

A24製作・配給のタイトルには決まって「良いシネマトグラフィが伴う」と言われていて、これもその例に違わない。セリーヌ・ソン監督が韓国系カナダ移民ということもあって、韓国での各年代の時

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轟音ドラマ『オッペンハイマー』の功罪

轟音ドラマ『オッペンハイマー』の功罪

『Oppenheimer』★★★☆。
Imdb / Wikipedia / Rotten Tomatoes

映像と音の圧が、同監督の近作と比べても群を抜いている。これに脚本の妙が加わると、一見してスペクタクルに欠ける科学者の地道な研究生活が怒涛のサスペンス作品になる。フラッシュ・インサートも多いし、音基軸のシーン・トランジション、時間軸の入れ替えも頻繁。そこへ重低音鳴り響くルドウィグ・ゴランソン

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『バービー』ブロックバスターモデルの再来

『バービー』ブロックバスターモデルの再来

『Barbie』★★☆・。

資本主義と物質主義と性差別と家父長制への皮肉たっぷりなコメンタリーを材料に、それでいて土台には80-90年代に幼少期を過ごした世代特有の懐かしくも温かい思いをあつらえた、あえて手作り感を隠さないことを是とした商業映画。

歴史ある商品ブランドをもとにしているからこそタイトルに掛け値なしの親近感を持つ層が多いことが特徴で、一方でアーティスト色の強いスタッフ布陣のイメージ

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『インディ・ジョーンズと運命のダイヤル』という若さへの挑戦

『インディ・ジョーンズと運命のダイヤル』という若さへの挑戦

『Indiana Jones and the Dial of Destiny』★★・・。

偏屈ジジイと化したジョーンズ博士が、歳を重ねたハリソン・フォード自身の性格と同化していると思わせる点は良い。しかし主演はかねてから再演を希望していたのだから、作れるものならもっと早く作られるべきだった。

AIとCG技術で再現した過去の物語に過分な尺を割いていること。それらで当人が吹き込んでいる声が、作り上

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『ジュラシック・ワールド/炎の王国』が食い荒らす名作の遺産

『ジュラシック・ワールド/炎の王国』が食い荒らす名作の遺産

『Jurassic World: Fallen Kingdom』★・・・。(4ツ星満点中、1ツ星。)

作品性と採算性が一致しないケースは、驚くほど多い。かつての名作ブロックバスターの「遺伝子組み換え作品:第二弾」とも言うべき「炎の王国」は、興行的成功とは裏腹な完成度を見るに、その顕著な例だと言っておくのが正解。

「作品単体への課金」という常識さえも覆りつつある現代。ともすれば映画興行のあり方を

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