『ゴーストバスターズ:フローズン・サマー』ウェルダンだが加齢臭にじむフランチャイズ続編
『Ghostbusters: Frozen Empire』(2024年)★★・・。
コアファンに牙を剥かれて炎上した2016年公開の女性版から素早く身を翻し、旧キャストのみならず監督までを血筋と縁故で固めたリブートシリーズ『ゴーストバスターズ』。
↑ からの。↓
通算3作目『アフターライフ』(2021年)に続く本作『フローズン・サマー』(2024年)は前作の物語を継承した、完全なるフランチャイズ作品。
当時から変わらないプロトンパック、ゴーストトラップ、ECTO-1、スライマー。そして今作から復帰した本部消防署まで、懐かしのアイテムやロケーションが総登場の最新作だ。映画化権を所有するソニーとしても、玩具の主幹ライセンシーを務めるハスブロとしても、シリーズの生命線を一生懸命に延ばそうと努力している様子がよくわかる。
リブート/背景
老朽化したアイデアを逆手に取り、恥ずかしげもなく「ストレンジャー・シングス 〜未知の世界〜」で脚光を浴びたノスタルジア・ブームに乗ったのは、ビジネス視点では間違いではなかった。同作からキャストまで拝借している(長男役のフィン・ウルフハードが続投)のだから、前作「アフターライフ」も狙いが明白。
そこに、1984年のオリジナルを手がけたアイヴァン・ライトマンの息子ジェイソン・ライトマンを監督・脚本に据えて、ダン・エイクロイドからビル・マーレイからアーニー・ハドソンから、果ては逝去したハロルド・ライミスまでを墓場から蘇らせたのだから、マーチャンダイズの力は畏れ多い。そうして、当時はサタデー・ナイト・ライブのコメディアンたちが思いつきで作ったポップ・フランチャイズは曲がりなりにも復活したのだから、ビジネスマンたちの商売根性というものは大したもの。
なお本作ではライトマンは脚本に集中し、監督は『モンスター・ハウス』(2006年)『ポルターガイスト』(2015年)などのギル・キーナンが手がけている。
本編
さて本作はどうか。
コロナ禍で何度も公開順延となった『フローズン・サマー』は、予想外に『アフターライフ』よりも人工的な匂いが少ない。その点では、ノスタルジアの押し売りに終始しない、物語的なまとまりがある。
前作よりも得しているのは、続編としてのメリットを活用できているからだろう。おなじみの本部からスタートし、幽霊駆除を冒頭から展開できるスピード感。旧作群から好きなだけ懐かしのロケーションやキャラクターを登場させられるし、ロー・ポイント(物語上の危機的状況)も作りやすい。カメオには助走時間を与えているので唐突な印象もおさえられている。
総合的には、チェーン店のステーキハウスで頼むような、ウェルダンのリブアイステーキを頼んだときのような出来。「そこそこ美味しいけど、わざわざ食べに来るほどではない」のだけど。
致命的なのは登場キャラクター数の異常な多さと、予測可能性の高さ。旧作と新シリーズとで登場人物数が倍加していて、役割がダブついているキャラクターも多い。丁寧な組み立てには好感も持てるが、危機が迫るまでのタイミングが遅いため中盤は飽きがくる。
正直、少ないスクリーン・タイムで一番笑いを取れている、中堅どころのクメイル・ナンジアニやポール・ラッドがもったいない。親子層をめいっぱい取り込みたい気持ちはわかるが、商業性優先でワチャワチャ感ばかりが目立つ。
焦点を絞る勇気があれば、内容物はもっと活かせただろう。と言ったとて、大企業のフランチャイズ病がいまさら治るわけでもないし、治す必要もないのだろう。
旧作群にそれなりの思い入れがあるなら、気晴らしに見るのも一興という一本。新しさはなく、加齢臭は否めない。
(鑑賞日:2024年3月21日 @Regal Edwards Aliso Viejo)