小原 康平

日本でアニメのプロデュースに携わって、2010年にアメリカへ渡り映画大学院(AFI)を卒業。2019年から再び動画配信事業者にてアニメの企画開発を担当したのち、この度アメリカへ再移住しました。(2023年9月〜)

小原 康平

日本でアニメのプロデュースに携わって、2010年にアメリカへ渡り映画大学院(AFI)を卒業。2019年から再び動画配信事業者にてアニメの企画開発を担当したのち、この度アメリカへ再移住しました。(2023年9月〜)

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    mofiの週刊マガジンに掲載し、小原および三谷個人のページで無料展開しているコラムをまとめたマガジンです。その週のコラム紹介や、ニュースに関するこぼれ話的な内容も載せています。

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伝えるに足る表現行為

『誰にも見せないことを前提にはじめたブログを公開したら、「スキ」や「Like」の数が途端に気になるようになってしまった。』 という冒頭部分だけを記した下書きが、2年以上も一覧の下のほうで眠っていました。 一度、パンドラの箱を開けてしまったら戻れないんだ、とでも言いたげな含み。 表現行為には、大きく二種類の出発点があるのだと思います。 自分のために残すものと、他人に向けて綴るものと。 「伝わる」あるいは「伝えるに足る」表現とは、その両方をバランスよく備えているのだと思

    • 『メガロポリス』の儚くも美しい醜態

      『Megalopolis』 IMDb | Rotten Tomatoes | Metacritic 公開日:2024年9月27日(北米) 公開日:未定(日本) 概要『メガロポリス』は、かのアメリカ映画界の巨匠フランシス・フォード・コッポラが手がけた久方ぶりの監督最新作だ。それは御年85歳のコッポラが監督のみならず、脚本とプロデュースまでを兼任した渾身の力作。本人が「苦節40年の末に念願叶ったパッションプロジェクト」と呼ぶ、大予算の超大作でもある。 企画から製作、宣伝、そし

      • 『I Saw the TV Glow(原題)』:自分を認めるか、逃げの人生を歩むか

        『I Saw the TV Glow』★★★☆。 IMDb | Rotten Tomatoes | Metacritic 公開日:2024年5月3日(北米) 公開日:未定(日本) どんな話かというと 子供の頃にのめり込んだ番組を大人になってから見直したら、抱いていた印象とびっくりするくらい違っていたことは誰しもある。これはそんな映画。 でも、それは表面上の話。 これは自分という存在を、とある番組の中に投影していた男の子の話。で、投影している自分自身が何者なのか、認める

        • 『MoviePass, MovieCrash(原題)』:恥を知れウォール街

          『MoviePass, MovieCrash』★★・・。 公開日:2024年5月29日@MAX / HBOにて展開(北米) 公開日:未定(日本) あらまし 2016年から2019年にかけて全米で一世を風靡した、映画館での「映画館・定額制・見放題サービス」ー。その名もMoviePass(ムービーパス)。 その隆盛と没落の裏側を、経営者や設立当時の幹部、サービスセンター従業員、投資家、アナリストなどの専門家へのインタビューを通して解き明かすドキュメンタリーが、米ディスカバリ

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          『マッドマックス:フュリオサ』:前作とのセットで味わう前日譚

          『Furiosa: A Mad Max Saga』★★★☆。 IMDb | Rotten Tomatoes | Metacritic 公開日:2024年5月23日(木)(北米) 公開日:2024年5月31日(金)(日本) 激しい。組み立てがいい。 『怒りのデスロード』よりも、いい意味で冷静な作り方なのだと思う。90年代以来、ミラーにとって数十年ぶりの『マッド・マックス』だった前作にはすべてが濃縮還元されていた。今作は物語構成が根本から異なる。テーマをあらわす副題付きの全5

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          『猿の惑星/キングダム』:シリーズ累計10回目の焼き直しは美味いか

          『Kingdom of the Planet of the Apes』(2024年)★☆・・。 IMDb | Rotten Tomatoes | Metacritic 公開日:2024年5月8日(北米) 公開日:2024年5月10日(日本) 物語のステークスがわかりにくい。 動機の変遷はわかっても、キャラクターの原動力が致命的に定まらない。主人公の類人猿ノアと人間の少女メイの目的が作中の大半で不明瞭なまま進むからだ。 類人猿は「村を救いたい」「成長したい」「人間を救えと

          『猿の惑星/キングダム』:シリーズ累計10回目の焼き直しは美味いか

          『フォールガイ』:職人仕事にひたる多幸感

          『The Fall Guy』★★★★。 IMDb | Rotten Tomatoes | Metacritic 公開日:2024年5月3日(金)(北米) 公開日:2024年8月16日(金)(日本) 今年に入って、好きになっていいアクション映画の筆頭にあげたい。大味な90年代アクション映画へのオマージュ、スタントマンと裏方スタッフへのリスペクトに、相性もパフォーマンスもキレッキレの主演陣。 これだけ直線的なプレミスに$120M(現為替で183億円あまり)もの制作費を正当化で

          『フォールガイ』:職人仕事にひたる多幸感

          『チャレンジャーズ(原題)』:テニスとベッドで重ね合う、心と身体のスリル

          『Challengers』(2024)★★★・。 IMDb | Rotten Tomatoes | Metacritic 公開日:2024年4月26日(水)(北米) 公開日:未定(日本) 最初に言いたくなることとしては変だけど、メイクと衣装が地味にすごい。主役の3人が、年代ごとに高校生、大学生、そして子持ちの社会人にしっかり見分けられるのは職人技のマジックのようだった。 というのも、この映画の語り口の肝は時間遊びにあるから、キャラクターの年頃や言動が見る人の理解度になおさ

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          『モンキー・マン(原題)』:「演じたい役は自分で書け」を実現した復讐アクション

          『Monkey Man』(2024)★★☆・。 IMDb | Rotten Tomatoes | Wikipedia 公開日:2024年4月3日(水)(北米) 公開日:未定(日本) 血とか汗とか涙とか、ヨダレとか。川の水とか、トイレの水とか、あとははらわたの汁?とか。いろんな液体が…たくさん…。 デヴ・パテルが主演し、脚本・監督としてもデビュー作となった本作のリビドーは、演者としてのパフォーマンスへの情熱が起点になっているのだろう。なにせ俳優が、演じたい役柄を自分で書き、

          『モンキー・マン(原題)』:「演じたい役は自分で書け」を実現した復讐アクション

          『リプリー』:古典原作の新解釈が不気味で笑えてオススメな件

          『Ripley』第1-8話(2024年)★★★★。 Netflixで4月4日から配信開始されたドラマ『リプリー』がイイ。 このご時世に白黒だし、アクション性もないので一見とっつきにくいかもしれない。でも近年でも出色のサスペンス・スリラーで、噛むほどに味わい深いスルメドラマ。原作や過去の映像化作品を知る者も、そうでない人も、一見の価値あり。 原作と映像化の背景 もともとはShowtime(パラマウント系列のケーブル局)で制作に漕ぎ着けたドラマだ。ShowtimeがPar

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          『シビル・ウォー(原題)』:シリアスな社会派ドラマ、に見せかけたド根性戦争サスペンスな記者物語

          背景 アレックス・ガーランドといえば、ダニー・ボイル監督とのタッグで名を挙げた英国出身の小説家、脚本家、監督。小説『ザ・ビーチ』を執筆し、レオナルド・ディカプリオ主演の映画化(2000)でボイルと初めて絡んだ。同作は酷評されたが、タッグはゾンビ映画の名作となった『28日後…』(2002)で開花し、その脚本でゾンビ・パンデミックものの定義を塗り替えた。 その後『サンシャイン 2057』(2007)『わたしを離さないで』(2010)とSF作品の脚本執筆に徹するガーランド。『ジ

          『シビル・ウォー(原題)』:シリアスな社会派ドラマ、に見せかけたド根性戦争サスペンスな記者物語

          『ミュータント・タートルズ:ミュータント・パニック!』:23年の隠れた名作アニメ

          『Teenage Mutant Ninja Turtles: Mutant Mayhem』(2023年)★★★☆。 見る気にならなければ、見ない理由はいくらでも並べられる。が、見たら驚かされる。23年の隠れた良作。 先入観 絵作りは『スパイダーバース』の後追いや二番煎じと言う者もいるだろう。「ニンジャタートルズはいろんなシリーズ作りすぎ」と、ニコロデオンの節操のなさをなじる者もいていい。どれも先入観としては当たっている。 そんな先入観をしっかり裏切ってみせるのが、セス

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          『ゴジラxコング 新たなる帝国』:頭カラッポの方が(怪獣プロレスの)夢詰め込める

          『Godzilla x Kong: The New Empire』(2024年)☆・・・。 近年でも稀に見る知能指数の低さで…そんなことを恥じ入るべくもなく。どこまでも怪獣プロレスに徹する1時間51分。もうCHA-LA、HEAD-CHA-LA。 日本に限らず、アメリカの観客が『ゴジラ-1.0』をとびきり楽しんで評価するのも、わかる。ハリウッドがこれだけ割り切った代物を作っていると知れば、わかってあげられる。これは見紛うことなきモンスター・パルーザ的WWEで、怪獣映画に知性

          『ゴジラxコング 新たなる帝国』:頭カラッポの方が(怪獣プロレスの)夢詰め込める

          『デューン: 砂の惑星 PART 2』:超級大作映画による娯楽と芸術の両立

          『Dune: Part Two』(2024年)★★★★。 難解なものを、難解さを残したまま、見たいものにする。 ドゥニ・ヴィルヌーヴの『DUNE 砂の惑星 パート2』が1.9億ドル(およそ288億円)の超大作映画で冒険しているのはこの点だ。 プロット上、疑問符が確実に上がる些事にはじまり。箱に手を入れると何かの適正が見られるとか、人間コンピュータが脳内でいろんな計算ができるとか(これは考えてみれば50-60年代の昔に戻っただけだけど)、全身を包むスーツが老廃物から水分補

          『デューン: 砂の惑星 PART 2』:超級大作映画による娯楽と芸術の両立

          『ゴーストバスターズ:フローズン・サマー』ウェルダンだが加齢臭にじむフランチャイズ続編

          『Ghostbusters: Frozen Empire』(2024年)★★・・。 コアファンに牙を剥かれて炎上した2016年公開の女性版から素早く身を翻し、旧キャストのみならず監督までを血筋と縁故で固めたリブートシリーズ『ゴーストバスターズ』。 ↑ からの。↓ 通算3作目『アフターライフ』(2021年)に続く本作『フローズン・サマー』(2024年)は前作の物語を継承した、完全なるフランチャイズ作品。 当時から変わらないプロトンパック、ゴーストトラップ、ECTO-1、

          『ゴーストバスターズ:フローズン・サマー』ウェルダンだが加齢臭にじむフランチャイズ続編

          『落下の解剖学』幾重に重なるテーマ性、高い技術力と表現力

          『Anatomy of a Fall』(2023年)★★★☆。 法廷ドラマ、というより法廷ミステリーか。ジュスティーヌ・トリエ監督(『愛欲のセラピー』『ヴィクトリア』)が脚本も共著したオリジナル作品として、ヨーロッパの各賞を席巻している。 フランス南東部はグルノーブルで人里離れて暮らす3人家族。夫・サミュエル(サミュエル・タイス)の転落死に他殺の疑いがかかり、容疑者として起訴されることになる、妻で小説家のサンドラ(サンドラ・ヒュラー)。 その嫌疑が、果たして正しいか否か

          『落下の解剖学』幾重に重なるテーマ性、高い技術力と表現力