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『アーノルド』:つべこべ言わずに夢を追え
『Arnold』(2023) ★★☆・。
ボディ・ビルダーであり、スター俳優であり、政治家となったオーストリア出身のアメリカ人、アーノルド・シュワルツェネッガーの人生を3部構成で辿るNetflixのドキュメンタリー。75歳を迎えた彼のこれまでのキャリアを、それぞれ「Athlete」「Actor」「American」と題して1時間ずつにまとめている。
文字通り、肉味のあるハイライトをアップビートなトーンで繋げた、北米のドキュメンタリー作品の定型にのっとった作り。ただ、シュワルツェネッガーという人の異色ぶりを知るにはとても効果的で、きっと誰しも想像している数倍は鑑賞の価値を感じられる。
第1部は幼少時代と青年期。ボディ・ビルディングと母国オーストリアの牧歌的な風景とのギャップに加え、硬い家庭で育ったアーノルド少年の逃避願望と、肉体改造欲求とが結びつく異様さが出色。
第2部は、移民としての成り上がり根性が爆発する俳優時代。目立つのは、俳優業に乗り出す以前から不動産業に進出していた商売っ気や、ブラフとセールストークを惜しまずに活用する口達者な側面だ。80年代アクション・スターたちの容赦ない負かし合いが垣間見れるのも良いスパイス。
そして第3部は政治家時代。物語をキレイに畳もうという意向を感じるのが難点だが、政界進出と私生活の両側面で起きた乱気流は、非カリフォルニア州民や彼の俳優としての姿だけを知る人には興味深い。
全編を通して通底するメッセージは「つべこべ言わずに行動しろ」あるいは「夢をもぎ取れ」ということだろう。『「今日どんな気分か」など関係ない』らしい。その意志の力の強さがすべて、という信念が心を打つ。
唯一、終盤で語られる私生活での致命的な欠陥は十分にカバーされていない。隠し子の存在を15年間黙っていた結果の離婚と余波は、掘り下げる余地が過分に残る。
しかし意志の力こそが、あれだけの身体を鍛え上げ、常人では想像もつかないキャリアを築き上げてきたことは事実だ。その証拠をいくつも見せつけられると、見ている者も否が応でも頑張らなければ、という気持ちになれる。わかりやすい故に幸福度の高い、コンフォート・フード(口にするとほっとするような食べ物)的な一作。
(鑑賞日:2023年10月10日@Netflix)