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『パスト・ライブス(原題)』沁み入る移民物語

『Past Lives』★★★★。

染みる。両親に連れられて海を渡る女の子と、母国に残る男の子。年月を経て再会する2人は…。ニューヨークとソウルの2都市をまたぐ、穏やかで抑えた展開。焦らず、しっとりと紐解く物語。

A24製作・配給のタイトルには決まって「良いシネマトグラフィが伴う」と言われていて、これもその例に違わない。セリーヌ・ソン監督が韓国系カナダ移民ということもあって、韓国での各年代の時代感や、描き方のトーンにも信頼を持てる。絵作りは盤石だし、各シーン、最小限のセットアップで物語を前に進めているのも効果的。基本的に、シーンに無駄がない。

物語は、今回が初作となる監督の実体験に基づいているそう。幼少期の幼馴染み同士が別れを経験したあと、それぞれの暮らしを3つの時代にまたがって語っていく。

英語字幕で「In-Yun」と言っていた韓国語は、日本語で言うところの「因縁」なのだろうか。だとしたら、日本語としては若干語彙が強い言い回しだ。それとも「輪廻」の方が適訳なのか?捉えようによっては、この物語が暗示するのは「どう転生しても結ばれない男女の話」のようにも思える点が、少し空恐ろしい。

ともあれ移民として海を渡る親世代の思いと、親の一大決心に従い、その暮らしぶりに染まる子世代の姿と、残される者が寂しさを噛み締める姿とが、物静かだがはっきりと描かれている。

人と人の心や身体の距離を語る物語というものは普遍的なものだ、と実感させる。技術的にも優れた、心打たれる移民物語だ。

(鑑賞日:2023年10月5日@Apple TV)

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