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超短編集

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自分の投稿した1~3分で読める読切超短編小説集。 黒色は暗めの、白色は明るめの話。 名前のない彼等の1頁。
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#暗い

オクル

浮かれているやつらが多くなるこの月の後半が嫌いになったのは、高校の頃だっただろうか。 そ…

SAI
3年前
1

透明になりたい

透明になりたいと思ったことがある。 映画の透明人間とか、ドラマで不思議な力を持った人間が…

SAI
3年前
1

スーサイドの約束

特に生きたいとも思っていなければ、特に死にたいとも思っていなかった。 彼と久しぶりにあっ…

SAI
3年前
3

出産

私は自分が普通だと思ったことは一度もない そう断言していた彼女のことを不意に思い出した。…

SAI
3年前

静かに

下で両親が喧嘩している声が聞こえる。 それを聞きつけた僕たちは一緒に部屋から出て、階段の…

SAI
3年前

ディスライク

俺には嫌いなものがたくさんある。 食べ物も、人間も、服装も、もっともっとあげればたくさん…

SAI
3年前

ノーリターン

みんなみんな、あの子のことを好きになる。 まるで何かの呪いにかかっているみたいに、あの子に会った人はみんなあの子を好きになる。 あたしだけが違うのは、あたしがあの子の双子の片割れだからなのだろうか。 双子と言っても二卵性なので、そこまで似ていないことも要因のひとつなのかもしれない。 とにかく、あたしとあの子は双子で、あたしはあの子が好きじゃない。 あの子があたしを好きかどうかは、正直どうだっていいことだった。 確かなことは、あの子があたしから周りの人たちを奪ってい

蝉が鳴くのは無駄なのか

日が暮れるまでの間、蝉に休みはないらしい。 クーラーをつけなくてもいい地域に住んでいる僕…

SAI
3年前

瓶詰の魂

深く眠っていると、時々自分の体ごとどこかへ連れ去られている感覚に襲われる。 眠っているの…

SAI
3年前
3

贈りものはもうない

あの日は晴れていたと思う。 彼等が私に宣言をした日だ。 雲ひとつない晴天。 まるで彼等の…

SAI
3年前
2

もう会えない

三年前、僕の散歩コースには古い一軒家が立っていた。 そこを通る度に、今にも崩れてきそうだ…

SAI
3年前

イズ イット ミー

近頃、あたしの周辺で奇妙なことが起こっている。 まず子供の頃になくしたシール手帳が、今現…

SAI
3年前
8

或る保護者の手記

ネオテニーという特異な存在が世界に増えてきている。 彼等は体が成熟しない人間である。 年…

SAI
3年前
2

カイコガの行方

タイムマシンがあったらどこに行く。 この小さい頃に友達と語り合っていた夢のようなお話が、現実味を帯びてきたのは人類史でもごく最近のことだった。 あたしはこの夢物語を人生で三度、経験している。 一度目は小学生の頃で、あたしたちは全員がみな迷うことなく未来に行くと言っていた。 そりゃそうだ、まだ生まれて十年くらいしか経っていなかったのだから。 過去はまだ積み重なっておらず、無限に広がっているかに思える未来ばかりに目を向けていた。 二度目は高校の頃で、この時は過去と未来