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ディスライク


俺には嫌いなものがたくさんある。

食べ物も、人間も、服装も、もっともっとあげればたくさん。

たくさんありすぎて、それを全部あげるとしたら疲れる。

それに嫌いなものだけあげても、意味をなさない気がする。

今、嫌いなものの中にあがっていないものでも、もしかするとこれから嫌いなものに入るかもしれない。

そしてそれは、好きなものにも当てはまることだ。

今、好きなものだとしても明日、明後日一週間後、一年後。

もしかしたらもっとずっと先かもしれないが、好きではなくなっている可能性がある。

俺の場合は可能性ではなく確定事項のような気もする。

好きになるのは早いが、飽きるのも早いのだ。

だから今好きなものが、これから先もずっと好きなままではないだろう。

嫌いなものは嫌いなままで、その数はこれからも増えていくと思うが好きなものは増えていかないだろう。

そして変わらず好きであり続けるものは、俺には存在しない。

それに比べてどうしてあいつは、好きなものが増えていくのだろう。

嫌いなものは減っていき、好きなものが増えていく。

俺とは真逆だ。

羨ましいさや妬ましさを感じたことはない。

だが、どうしてかあいつの近くにいると具合が悪くなることが多い。

いや、正しくは、多くなった。

嫌いな人間といる時の居心地の悪さとは少し違うが、似たような居心地が悪さを感じる。

そしてその感覚がだんだん強くなってきており、近頃は頭痛や体のだるさ等の不調が起きてきた。

このままあいつの近くにいると、その内俺は死んでしまうのではないか。

そんな馬鹿な考えが頭をよぎる。

有り得はしない、馬鹿げた考えだ。

冷静に考えてみれば、答えはわかりきっている。

俺はきっと、あいつのことを嫌いになりかけているのだ。

特に好ましいやつでもなかったが、嫌いではなかった。

それなのに、どうして。

俺はあいつを嫌いになることを恐れているのだろうか。

嫌いになったらずっと嫌いなもののままになるから?

わからない。

でもどうでもいい。

どうせ嫌いになるのなら。

そのままずっと、これから先も嫌いなままでいればいい。

俺は体調が良くなるし、いつものように嫌いなものがひとつ増えるだけ。


変わらない。


何も変わらないさ。






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