マガジンのカバー画像

歴史まとめ

10
平安時代を中心とした歴史についての書き物をまとめました。 おいおい平安だけでなく奈良や幕末の話もしたいです。
運営しているクリエイター

記事一覧

司馬遼太郎作品のフィクション性

司馬遼太郎作品のフィクション性

 中年になってから幕末にはまったにわかの学習日記です。
 もともとは奈良~平安時代が好きな歴史オタクでした。
 装束もお墓もはっきりしていないのが当たり前な界隈にいたので、「幕末って持ち物やお墓が残っててすごい!」と日々感動しています。

司馬遼太郎への偏見 実は幕末を好きになるまで、司馬遼太郎に対して偏見がありました。
『司馬史観』を信じる読者に対して、と言った方がいいかもしれません。

 具体

もっとみる
京極夏彦先生から松陰神社へ

京極夏彦先生から松陰神社へ


いざ、松陰神社へ 10/27に、東京・世田谷の松陰神社の例大祭へ行くことにしました。
 松陰神社の祭神は吉田松陰。
 松陰は過激な尊王攘夷思想を持つ行動家でもあり、現在の山口県萩市にあった松下村塾で熱心に門下生を教える教育者でもありました。
 1859(安政6)年の安政の大獄で井伊直弼から裁かれ、満29歳の短い生涯を終えますが、高杉晋作・伊藤博文らの松下村塾門下生がその教えを引き継ぎ、江戸幕府を

もっとみる
幕末の怖い風習とバタフライエフェクト

幕末の怖い風習とバタフライエフェクト

 水戸にわか3年、土佐にわか2年の北川と申します。
 水戸について学んでいたら期せずして知ってしまった土佐の習俗と、それに伴うバタフライエフェクトについての話です。

山川菊栄『幕末の水戸藩』 水戸天狗党への解像度を少しでも上げたくて、山川菊栄『幕末の水戸藩』(岩波文庫)を読んでいます。

 山川は女子英学塾(現在の津田塾大学)を卒業した社会主義者で、戦前は伊藤野枝や平塚らいてうと論戦を交わし、戦

もっとみる
もし2010年にnoteがあったら

もし2010年にnoteがあったら

 平安好き・幕末にわかの歴史オタクの短くならなかった日記です。

朝日のような夕日をつれて2024 先日、「『朝日のような夕日をつれて2024』を観に行きます!」という日記を書きました。

 お目当ては、『光る君へ』の藤原道兼役だった玉置玲央さんと、『舞台刀剣乱舞』の岡田以蔵役だった一色洋平さんです。
 日記は演劇ファンの方にも見ていただいているようです。
 この記事に、演者だけでなく役のファンに

もっとみる
【光る君へ】苦労人の推し活貴族・藤原行成(後編)

【光る君へ】苦労人の推し活貴族・藤原行成(後編)

前編の続きです。

道長と一条天皇の間でどっちつかずの振る舞い

『光る君へ』でも、行成は一条天皇に自筆の古今和歌集を献上して、天皇の美貌のとりこになっていましたね。

 行成は俊賢の推薦通りの有能さを発揮し、すぐに一条天皇から気に入られました。
 天皇の指示を受け、ひと月のうちに25日も内裏へ参って、文字通り身を粉にして働いていました。

 しかし同時に、行成は道長へも忠誠を誓っていました。
 

もっとみる
【光る君へ】苦労人の推し活貴族・藤原行成(前編)

【光る君へ】苦労人の推し活貴族・藤原行成(前編)

 大河ドラマ『光る君へ』の初期、藤原道長(柄本佑さん)・公任(町田啓太さん)・斉信 (金田哲さん)と行成が4人で勉強にいそしんでいたのがSNSで『F4』と言われていましたよね。
 高貴な少年たち(中の人たちの事情でそんなに若くは見えませんでしたが)が男子高校生のようなノリで休み時間に雑談したり、『源氏物語』の雨夜の品定めよろしくまひろ(紫式部)やききょう(清少納言)を上からジャッジする姿に、『花よ

もっとみる
【光る君へ】公任と実資は従兄弟だった!小野宮流衰亡記(後編)

【光る君へ】公任と実資は従兄弟だった!小野宮流衰亡記(後編)

 才にあふれながら不運で嫡流の座を失った公任に続いては、人間的な振る舞いで子孫に影響を与えた実資の紹介です。

 こちらも『光る君へ』のネタバレがありますのでご注意ください。

④公任の従兄・実資(957-1046)~堅物日記おじさん、晩年に跡を濁す 今まで知らない人の方が圧倒的に多かったであろう実資は、『光る君へ』ではロバート秋山さんの顔面と演技で絶大なインパクトを与えています。
『光る君へ』で

もっとみる
【光る君へ】公任と実資は従兄弟だった!小野宮流衰亡記(前編)

【光る君へ】公任と実資は従兄弟だった!小野宮流衰亡記(前編)

 タイトルに『光る君へ』と書いてあるこのnoteをお読みの方は、大河ドラマ視聴者が多いでしょう。
 平安オタク以外には『ドキッ! 藤原だらけの陰謀大会』状態だったドラマも十話を越え、視聴者も各キャラの顔と名前と役柄が一致してきた頃かと思います。

 その中で、順当に光っている君・藤原公任と、と黒光りして異彩を放つ君・藤原実資を真っ先に覚えた人も少なくないのではないでしょうか。
 町田啓太さんとロバ

もっとみる
【光る君へ】悪霊左府・藤原顕光のついてない一生(後編)

【光る君へ】悪霊左府・藤原顕光のついてない一生(後編)

 後の世で『悪霊左府』と呼ばれるようになった藤原顕光の踏んだり蹴ったり譚、後編です。
 前編では政治的敗者寄りのポジションだった顕光が捲土重来! と意気込むも不運には勝てなかったという話をご紹介しました。

【光る君へ】悪霊左府・藤原顕光のついてない一生(前編) 

 今のままでも言葉のかけようのない顕光ですが、更に目を覆うような悲劇が待ち受けています。

前編でも書きましたが、大河ドラマ『光る君

もっとみる
【光る君へ】悪霊左府・藤原顕光のついてない一生(前編)

【光る君へ】悪霊左府・藤原顕光のついてない一生(前編)

 2020年12月4日。
 その日、平安オタク以外の知名度は低かった一人の平安貴族が一気にトレンドを席巻しました。

『顕光殿、お目覚めを!』

 そう叫んで宝具(必殺技)を発動させたのは、この日スマホゲーム『Fate/Grand Order(FGO)』に新規実装されたサーヴァント、蘆屋道満。
 人の真心をもてあそび嘲笑う極悪法師陰陽師として、また安倍晴明というまぶしい天才に届かない手を伸ばす悲運

もっとみる