JW481 妻、帰国する
【垂仁天皇編】エピソード10 妻、帰国する
第十一代天皇、垂仁天皇(すいにんてんのう)の御世。
紀元前27年、皇紀634年(垂仁天皇3)。
ここは、朝鮮半島の新羅(しらぎ)。
阿具沼(あぐぬま)という沼の傍で、一人の女が昼寝をしていると・・・。
新羅の女「ん? ウリ(私)の陰部(いんぶ)に、日の光が、虹のようになって当たっているハセヨ。そして、あっという間に、孕(はら)んでしまったハセヨ?!」
いきなり妊娠(にんしん)した女は、たちまち、赤い玉を出産した。
その様子を見ていた男がいた。
男は、おもむろに近付くと、女に、こう言った。
新羅の男「その玉・・・欲しいハセヨ。ウリに、譲って欲しいニダ。」
新羅の女「いいよ!」
こうして、男は、赤い玉を肌身離さず持ち歩いたのであった。
そんなある日・・・。
新羅の男「どういう事情かは分からないけど、ウリは、牛で食べ物を山に運ぶことにしたニダ。」
するとそこに、新羅の王子、天日槍(あめのひぼこ)(以下、ヒボコ)が現れた。
ヒボコ「その牛は、何だ?! 牛を殺して食べるつもりか?!」
新羅の男「そんなことしないニダ! 運んでいるだけハセヨ!」
ヒボコ「怪しいニダ。捕らえて、牢獄に入れるニダ!」
新羅の男「勘弁して欲しいニダ。赤い玉を差し上げますんで、これで見逃してくださいませ!」
ヒボコ「仕方ないなぁ。許してやるニダ。」
「ヒボコ」は、赤い玉を持ち帰ると、床に置いた。
すると、玉は美しい娘に変わった。
娘「なんで、このタイミングなのかって? 私に分かるわけないでしょ!」
ヒボコ「よ・・・よく分からないけど、美しいから、ウリの妻にするハセヨ!」
娘「いいよ!」
娘は、毎日、おいしい料理を出した。
しかし、奢(おご)り高ぶった「ヒボコ」が、妻を罵(ののし)ると、娘は、激怒して、こう叫んだ。
娘「そういうこと言っちゃうんだ・・。親の国に帰ります!」
小船に乗り、難波(なにわ:現在の大阪府大阪市周辺)に逃走した娘。
それが、エピソード463で紹介された、比売許曽神社(ひめこそじんじゃ)の祭神、阿加流比売神(あかるひめ・のかみ)と言われている。
罵ったことを悔(く)いた「ヒボコ」も、妻を追い、海を渡ったが・・・。
ヒボコ「波速渡神(なみはやのわたりのかみ)が遮(さえぎ)っているニダ! これでは、上陸することが出来ないハセヨ! えっ? どうして、ウリが、ヤマトの神の名を知っているのかって? それは聞いちゃいけないことになっているハセヨ!」
妻を追うことを諦(あきら)めた「ヒボコ」であったが・・・。
ヒボコ「帰るべきか、残るべきか・・・。それが問題だ・・・。『古事記(こじき)』の記述に従い、新羅に帰ろうとして、多遅摩(たじま:現在の兵庫県北部)に停泊すべきとも思うが、舟で瀬戸内海に来ているのに、多遅摩に停泊するというのは、ちょっと変な話だしなぁ・・・。」
「ヒボコ」は、どのような決断を下すのであろうか?
次回につづく