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JW563 新たなる候補地
【伊勢遷宮編】エピソード22 新たなる候補地
第十一代天皇、垂仁天皇の御世。
紀元前4年、皇紀657年(垂仁天皇26)。
天照大神(以下、アマ)の鎮座地を求め、倭姫(以下、ワッコ)一行の旅は続く。
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前回は、宴が催されたのであったが、その直後か、翌日か、数日後のこと・・・。
ここは、奈尾之根宮。
二千年後の地名で言うと、三重県伊勢市宇治中之切町。
おかげ横丁のある町。
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ここに、一人の客人がやって来た。
大田命である。
大田「すいませぇぇん。『ワッコ』様の御一行が来たって、聞いたんですけど・・・。」
ねな「あら? 何? 何の用なの?」
大田「えっ? いや、挨拶に伺ったんですけど・・・。」
カット「左様か。では、案内致そう。こちらへ参れ。」
大田「ありがとうございます。」
こうして、大田は「ワッコ」に目通りしたのであった。
ワッコ「私が倭姫じゃ。今日は、如何なる用で参ったのじゃ?」
大田「実は、私・・・猿田彦大神の末裔なんですよね。」
ワッコ「えっ?」
大田「それから、私・・・宇治土公の先祖に当たりまして、子孫は、代々、猿田彦神社の宮司をやるんですよね。」
カーケ「自慢話を、しに来たのかね?」
大田「いえいえ、そんな滅相もない。」
くにお「では、何しに参ったのじゃ?」
大田「実は、奈尾之根宮の候補地が、もう一つ有るんですよね。それをお知らせしようと思いまして・・・。」
市主「もう一つ有ったと申されまするか?」
大田「そうなんですよ。津長神社と言いましてね。なんでも、五十鈴川の中洲が語源なんだとか・・・。」
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武日「なして、中洲が津長になるんや?」
大田「長く伸びた中洲を洲長と呼ぶんですけど、それが訛って、津長になったんでしょうね。」
おしん「まあ、ロマンってことだな。」
アララ「あらら・・・。そういうことになっちゃった。」
インカ「して、祭神は?」
大田「水の神、栖長比売命です。前回紹介された、那自賣神社の祭神、大水上御祖命の娘になります。」
ワクワク「何処に鎮座してるの?」
大田「伊勢市宇治今在家町に鎮座してます。」
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ちね「地図を見てみると、新川神社と石井神社が、同座してるみたいやなぁ。」
大田「そうなんですよ。新川神社の祭神は、川の神の新川比売命で、石井神社の祭神は、灌漑用水の守り神で、エピソード547と548にも登場した、高水上神こと『かみかみ』なんですよね。」
ワッコ「ところで、汝が国の名は何ぞ?」
大田「佐古久志呂、宇遅国です。」
オーカ「佐古久志呂は、宇遅にかかる枕詞にあらしゃいます。」
大田「補足説明、ありがとうございます。」
ワクワク「ちょっと、ワッコ様? 僕が、エピソード554で説明してるんだから、わざわざ、国の名を聞かなくても良かったんじゃない?」
ワッコ「許せ。『倭姫命世記』の記述では、そう尋ねておるのじゃ。」
ワクワク「ええぇぇ!?」
大田「ち・・・ちなみに『アマ』様に御供えする稲を育てる、神田も献上します。」
ワッコ「して、良き宮処は有るか?」
乙若「ん? ワッコ様? そのようなこと尋ねずとも、もう分かっておるではありませぬか。五十鈴川の川上と・・・。」
ワッコ「そ・・・そうなのじゃが、やはり『倭姫命世記』での記述が・・・。」
ワクワク「ぷんぷん! 一体、誰が書いたんだ? 僕が報告した意味が無くなっちゃうじゃないか! ぷんぷん!」
大田「ええっと・・・。言っても、よろしいでしょうか?」
ワッコ「あっ! すまぬ。申してくれ。」
大田命は、何と答えるのであろうか?
次回につづく