JW630 筑紫行幸計画
【景行征西編】エピソード1 筑紫行幸計画
第十二代天皇、景行天皇の御世。
西暦82年、皇紀742年(景行天皇12)7月。
ここは、纏向日代宮。
景行天皇こと、大足彦忍代別尊(以下、シロ)は、大連や大夫など、臣下が集う中、筑紫行幸に加わる人員を発表した。
シロ「まずは、戦に備え、久米の直の七掬脛こと『ナッカ』を連れて参る。」
ナッカ「ははっ。」
武日「軍全体の指揮は『おい』に任せてくんない。」
シロ「何を申しておるのじゃ? 武日は、大夫ゆえ、国中(奈良盆地)を守ってもらわねば困る。」
武日「は? じゃっどん、大伴無しで、軍を動かせるはずが・・・。」
シロ「それゆえ、汝の息子、武持こと『もち』を連れて参る。」
武日「なっ! そうなるんか?」
もち「お初にお目にかかるっちゃが。『おい』が『もち』やじ。」
武日「そんげなコツになるとは・・・。仕方なかっ。では『もち』よ。父に代わって、しっかりと務めを果たすんや!」
もち「じゃが!」
ちね「ほな、武具取扱担当の物部からは、わての息子が加わるっちゅうことですか?」
シロ「その通りじゃ。胆咋こと『いっくん』じゃ。」
いっくん「お初にお目にかかります。わてが『いっくん』やで。」
ちね「ほな『いっくん』・・・。気張るんやで!」
いっくん「任せとき!」
シロ「また、屋主忍男雄心こと『ヤヌシ』を連れて参る。」
ヤヌシ「エピソード624以来の登場なり! 嬉しいなり! ついでに、妻の影媛も連れていくなり!」
シロ「そうなるのか?」
影媛「よろしゅう御願い申し上げ奉りまする。」
ヤヌシ「そして、甥っ子の舟木も連れていくなり!」
舟木「一所懸命に務めまする。」
カーケ「されど、どうして、甥っ子を連れていくのかね?」
ヤヌシ「実は、のちのち、紀の直の穉日子という人物が、伝承に登場するなり。穉日子は『若い男』の意味で、固有名詞では無いなり! そこで、舟木に白羽の矢が立ったなり!」
カーケ「わ・・・若い男ゆえ、選ばれたというのかね?」
ヤヌシ「そういうことなり!」
くにお「されど、木国造の一族は、姓が『君』であろう? 伝承の人物は、姓が『直』となっておるが?」
ヤヌシ「問題無しなり! 西暦670年、皇紀1330年(天智天皇9)に、庚午年籍という戸籍が作成された際に、姓を『直』に改めたと言われているなり。」
くにお「語り継がれていく中で、改められた・・・というわけか?」
ヤヌシ「そう思っているなり!」
シロ「う・・・うむ。して、次に加わるのは、山部阿弭古の祖、小左じゃ。」
小左「かしこまりもうした。」
オーカ「山部は、山林の管理や、栗や竹などの産物を貢納する品部のことにあらしゃいます。」
ちね「品部は、職人集団っちゅうことやで。」
カーケ「阿弭古は、どういう意味なのかね?」
ちね「阿弭古は、網曳子のことやで。」
カーケ「ん?」
ちね「せやから、網を曳く人のことで、分かりやすく言うたら、漁師さんのことですわ。」
カーケ「山林を管理しているのに、漁師? 意味が分からないんだぜ。」
ちね「ま・・・まあ、あれやがな・・・。山部やけど、網を曳くことも出来るんやないか?」
小左「御安心くださりませ。山でも、魚は釣れますぞ。岩魚や山女魚などは、山に入らねば、獲れませぬからな・・・。」
カーケ「なるほど・・・。」
シロ「し・・・して、次に加わるのは、神代の直の神大野の宿禰こと『ワオン』じゃ。」
ワオン「かしこまりもうした。」
武日「名前が、長すぎるっちゃ!」
ワオン「致し方ありませぬ。されど、護衛役である宿禰は、要り様にござりましょう?」
シロ「その通りじゃ。それゆえ、もう一人、宿禰を連れて参るぞ。土師の連の野見の宿禰じゃ。」
野見「ははっ。」
オーカ「あれ? エピソード590で、先代から名前を授かった時には、土部となっておりましたが?」
野見「のちに、土師氏となりますので、これを機に、名を改めもうした。」
シロ「うむ・・・。それから、安曇の連の百足と、日下部の君の大屋田子こと『おやた』も同道致す。」
百足「ははっ。」
おやた「承知仕りもうした。」
オーカ「しばし、お待ちください。占いについては? 我は、大夫ゆえ、御供、出来ませんよ?」
シロ「占い師を連れて参る。その名も、卜部の殖坂じゃ。『えっさん』と呼んでやってくれ。」
えっさん「気張らせていただきますぅ。」
オーカ「初登場が多すぎるのでは、あらしゃいませんか?」
同行者発表は、まだまだ続くのであった。
つづく
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