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JW651 青と白

【景行征西編】エピソード22 青と白


第十二代天皇、景行けいこう天皇てんのう御世みよ

西暦82年、皇紀こうき742年(景行天皇12)10月。

五人の土蜘蛛つちぐも討伐とうばつするため、進軍しんぐんをつづける、景行天皇こと、大足彦忍代別尊おおたらしひこおしろわけ・のみこと(以下、シロ)の一行。

筑紫行幸参加者名簿

まずは、あおしろつ作戦に切り替え、柏峡かしわお大野おおの(大分県竹田市たけたし荻町おぎまち柏原かしわばるあたり)から北上ほくじょうするのであった。 

地図(柏峡の大野)
地図(青と白を討つ)

シロ「来た道を戻ることになろうとは・・・。」 

もち「仕方しかたないっちゃが。あおしろを、先に討つのは『日本書紀にほんしょき』の記述きじゅつどおりやじ。」 

シロ「ではあるが・・・。」 

モロキ「されど、行きは怖い、帰りは良い良いですな。」 

百足ももたり「どういうことじゃ?」 

モロキ「すでに、開かれた道を行くのじゃ。行きよりも、ろうせず、進めておるではないか。」 

百足ももたり「たしかに・・・。」 

シロ「ん? あゆみがまったぞ? 如何いかがしたのじゃ?」 

兵士(い)「大王おおきみ! これよりは、道なき道を進みまする。」 

シロ「ん?」 

兵士(ろ)「このまま進めば、行宮かりみやに戻ってしまいまする。それでは、あおしろを討つことあたいませぬゆえ・・・。」 

地図(行宮に戻ってしまう)

モロキ「そ・・・そうか・・・。ずっと、開かれた道を行くのではないのか・・・。」 

舟木ふなき「また、木々のしげる、やぶの中を進むのか・・・(´Д`)ハァ…。」 

えっさん「如何いかに考えても『あせだく』は、必至ひっしにあらしゃいますなぁ。」 

地図(道なき道へ)

シロ「みなもの! おくするな! さあ! 行くぞ!」 

ナッカ「再び、海石榴つばきつちの出番っすよ! 行くぜ! 久米くめ(兵士のこと)らよ!」 

兵士たち「おお!」×多数 

海石榴(椿)

こうして、いさましい兵士たちは、海石榴つばきつちで、山を穿うがち、草や木を切り払い、あおしろ石窟いわやの目と鼻の先まで到達したのであった。 

野見のみ「では、攻めまするか?」 

シロ「て。みなつかれがえてからじゃ。」 

夏花なつはな「そのような悠長ゆうちょうなことを、言っている時ですか?」 

シロ「道なき道を進んだのじゃ。われも、みなも、そして、なれも『あせだく』ではないか・・・。」 

ワオン「つかれておらぬ者だけで、先にんでは?」 

シロ「いや、そうすれば、逃げられるやもしれん。出来できれば、多くのつわもので、かこむように攻めたい。」 

ワオン「左様さようなれば、いたかたありませぬな。」 

しばらくの時が経ち、一行からは、あせが引き、体の火照ほてりも収まってきた。 

シロ「そろそろ頃合ころあいか?」 

もち「じゃがはい。」 

シロ「みなもの! 攻めかかれぇ!」 

一同「おお!」×多数 

突然のときこえに、あおしろが、激しく動揺どうようする。 

あおなんじゃ?!」 

しろどげんしたどうした!?」 

部下(い)「かしら! 敵が攻めてきたに! 夜麻登やまとが攻めてきた!」 

あおどけぇどうしたら、そげんコツそんなことになるんじゃ?」 

部下(ろ)「うっとうわしらに聞かんでくれ。」 

しろあいたしまった! 夜麻登やまとめ! あげんこげんあっちこっちふらついて、うっとうわしらを油断させようち、つくりたてた画策したんじゃ!」 

あお「なっ! さくじゃったか!」 

しろきしゃねぇきたない奴らじゃ!」 

あお「ぐぬぬ・・・。夜麻登やまとめ・・・。どおくるのもふざけるのもてえげにいいかげんにしちょれよっ! 押し返せ! どっとんどんどん押せぇ!」 

戦塵せんじんう中、つるぎつるぎのぶつかり合う音がひびく。

そのとき・・・。 

ヤヌシ「そこの男! 敵将てきしょうと見たなり!」 

あお「そうじゃとうたら、どけぇどうなるんじゃ?」 

ヤヌシ「御命おいのち頂戴ちょうだいつかまつるなり!」 

あおそげんそんな剣で、わしを討てるとでも・・・。」 

ザシュッ 

あお「ぐはぁ!!」 

しろ「あっ! あお!」 

もち「なびとの相手は『おい』っちゃ! 覚悟かくご!」 

しろ「ふん! なんちゃって宮崎弁みやざきべん分際ぶんざいで! つまらんダメなやっちゃぁのう!」 

もち「そいそれは、言わんでくんないください!」 

ザシュッ 

しろ「こ・・・こげんコツ・・・グフッ。」 

部下(い)「あっ! かしら!」 

部下(ろ)「に・・・逃げるぞ!」 

ナッカ「逃がさないっすよ!」 

舟木ふなき「このままちじゃぁ!」 

ウナ「こうして、われらは、あおしろの一党をたしたのじゃ。」 

いっくん「仰山ぎょうさん、血が流れて、くるぶしたっしたんやで。」 

おやた「それゆえ、時の人は、血が流れたところ血田ちだと呼ぶようになりもうした。」 

シロ「それは、二千年後の地名でもうせば、何処いずこになるのじゃ?」 

おやた「大分県豊後大野市ぶんごおおのし緒方町おがたまち知田ちたではないかと思われまする。」 

地図(血田→豊後大野市緒方町知田)

いっくん「せやけど、くるぶしって・・・ほとんど、虐殺ぎゃくさつやないかぁぁい!」 

シロ「それだけ、おおかりないくさだったのであろう。」 

ついに、あおしろった一行。

残るは、三人の土蜘蛛つちぐもである。

次回につづく

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