JW621 大王の十三人
【景行即位編】エピソード10 大王の十三人
第十二代天皇、景行天皇の御世。
西暦74年、皇紀734年(景行天皇4)11月から、しばらく経った頃。
ここは、纏向日代宮。
景行天皇こと、大足彦忍代別尊(以下、シロ)と、水歯郎媛(以下、みずは)との間に、子供が産まれていた。
五百野皇女(以下、イオ)である。
子供が産まれ、喜ぶ「シロ」の元に「みずは」の父母、祖母、伯母が訪問していた。
シロ「このような、大所帯で来ずとも良いではないか。」
ツクツク「そう仰いますな。孫が出来たのでござるぞ? 来るなとは、御無体にござりまするぞ。」
シロ「・・・ではあるが・・・。」
かに「ホントに驚きなんだぞ。私の曾孫なんだぞ。」
ふたじ「母上。本当に、よろしゅうございましたな。」
みたらし「私も、初めての孫で・・・(´;ω;`)ウッ…。」
みずは「泣かずとも、良いではありませぬか。」
イオ「あう。あう。」
するとそこに、男が駆け込んできた。
男「遅れて、申し訳ありませぬ。」
シロ「ん? 何者じゃ?」
男「なっ!? 我を、お忘れか? 『みずは』の兄、石城別王こと『いわきん』にござる。」
シロ「許せ。読者のためじゃ。」
いわきん「それを聞いて、安堵致しもうした。」
シロ「されど、おかしな流れになっておらぬか?」
ツクツク「おかしいとは?」
シロ「我らの御世は、通い婚じゃ。まことであれば、我が『ツクツク』の屋敷に赴くところでは、ないか?」
かに「そんなこと、気にしちゃダメだぞ。」
いわきん「それより、我にも、皇女を見させてくださりませ。」
みずは「どうぞ、兄上。」
いわきん「おお! まるで、玉のようじゃ。『イオ』! 伯父上じゃぞぉぉ。」
ふたじ「大伯母上ですよぉ。」
シロ「で・・・では『みずは』よ。久しぶりの一家団欒の時を過ごすが良いぞ。」
みずは「えっ? 大王は?」
シロ「わ・・・我は、大王ぞ? 忙しいゆえな・・・。」
そう言って、場を離れた「シロ」の向かった先は、もう一人の妃、八坂入媛(以下、やぁちゃん)の処であった。
やぁちゃん「大王? 如何なされました?」
そこには「やぁちゃん」の父、八坂入彦(以下、ヤサク)の姿も・・・。
ヤサク「おお! これは、これは、婿殿・・・。」
シロ「伯父上? その呼び方、どうにか、なりませぬか? 我は、大王にござりまするぞ。」
ヤサク「良いではござらぬか。一度、言うてみたかったのじゃ。」
シロ「されど、伝承の時代とはいえ、短い間に、これだけの子を儲けてしまったのか?」
やぁちゃん「はい。今のところ、三人、産まれておりまする。」
シロ「今のところ?」
やぁちゃん「まずは、五百城入彦皇子です。五百彦と、お呼びくださりませ。」
五百彦「あうわ。」
やぁちゃん「つづきまして、渟熨斗皇女にございます。『ヌーノ』と、お呼びくださりませ。」
ヌーノ「あう。あう。」
やぁちゃん「そして、五十狭城入彦皇子にございます。『イッサ』と、お呼びくださりませ。」
イッサ「あうう。」
シロ「さきほど、今のところと、申しておったが?」
やぁちゃん「はい。『日本書紀』によりますと、私・・・十三人も産んでいるようでして・・・。」
シロ「十三人じゃと!?」
ヤサク「鎌倉殿の十三人ならぬ、大王の十三人にござりまするな。」
やぁちゃん「されど、この物語では、あと一人しか産みませぬ。」
シロ「なっ!? なにゆえじゃ?」
やぁちゃん「名のみの登場ゆえ、活躍させる自信が無いと・・・。」
シロ「作者が、そう申したのか?」
やぁちゃん「はい。」
ヤサク「おのれぇぇ、作者めぇ! 我の孫に、そのような仕打ちをするとはぁ!」
シロ「伯父上?」
ヤサク「大王! 作者の横暴を許されますのか?!」
シロ「そ・・・そのようなこと、言われてものう・・・。」
ヤサク「大王! なんとか、してくださりませ!」
シロ「あっ! そうであった! 我には、務めが有ったのじゃ!」
ヤサク「あっ! 大王! 逃げられますのか!」
そそくさと「シロ」が逃げた先は、もう一人の妃、五十河媛(以下、いかわ)の元であった。
シロ「『いかわ』よ。今、参ったぞ。」
いかわ「読者のみなさま、お初にお目にかかりまする。『いかわ』にござりまする。そして、こちらが、大王との間に産まれた、神櫛皇子こと『ムック』にござりまする。」
ムック「あうわう。」
シロ「『いかわ』は、どこの豪族の娘か、何も書かれておらぬゆえ、ここは、静かで良いのう。」
いかわ「えっ? では、私は、何者なのでしょうか?」
シロ「これが、ロマンじゃ。」
とにもかくにも、たくさんの子供が産まれたのであった。
つづく
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