JW462 初の異国の使者
【崇神経綸編】エピソード37 初の異国の使者
第十代天皇、崇神天皇(すじんてんのう)の御世。
紀元前33年、皇紀628年(崇神天皇65)7月。
朝鮮半島南部から、男が来朝(らいちょう)している。
意富加羅国(おおから・のくに)の王(こきし)の子、蘇那曷叱知(そなかしち)(以下、ソナカ)である。
崇神天皇こと、御間城入彦五十瓊殖尊(みまきいりひこいにえ・のみこと)(以下、ミマキ)は、驚きつつも、客人を迎え入れた。
共に居並ぶのは、大后(おおきさき)の御間城姫(みまきひめ)(以下、みぃ)。
日嗣皇子(ひつぎのみこ)の活目入彦五十狭茅尊(いくめいりひこいさち・のみこと)(以下、イク)。
大臣(おおおみ)の尾張建諸隅(おわり・の・たけもろすみ)(以下、ケモロー)である。
ミマキ「初の異国(とつくに)からの使者じゃ・・・。して、ソナカ殿。一体、何用(なによう)で参られましたかな?」
ソナカ「『ヤマト』と親交を結びたいと考え、来朝したハセヨ。」
ミマキ「なに?! 海の向こうの異国でありながら、朝貢(ちょうこう)したいと?」
みぃ「ちなみに、朝貢とは、貢物(みつぎもの)を送って、臣下の礼を取ることにございます。」
ソナカ「えっ? いや、別に、臣下になろうというわけではないニダ。仲良くしたいだけで・・・。」
イク「うまく翻訳が出来ていないと言うべきか、都合良く解釈していると言うべきか・・・。」
ケモロー「でもよぉ。一緒に来た、角鹿国(つぬが・のくに)の者は、乙女を追って、やって来たとか言うとったで? ホントは、大王(おおきみ)に探してもらおうと思うとるんでないきゃ?」
ソナカ「さすがは、ヤマトの大臣ニダ。その通りハセヨ。さっきのは『日本書紀(にほんしょき)』の記述に従って、言ってみただけニダ。伝承バージョンでは、朝貢とか、一切、言ってないニダ。ちなみに、角鹿国は、二千年後の福井県敦賀市(つるがし)のことハセヨ。」
ミマキ「お・・・乙女を探して欲しいと申すか? されどのう・・・。難しいと思うぞ。」
ソナカ「なにゆえニダ? とってもカワイイ乙女ハセヨ? すぐ見つかるはずニダ。」
ミマキ「いや、いや、我が国の乙女は、皆(みな)、ことごとくカワイイゆえ、何とも言えぬ・・・。」
みぃ「とにかく、探してみては如何(いかが)でしょう? 私も、会ってみたいですし・・・。」
ミマキ「そ・・・そういうモノか? ならば、探そうではないか。しばらく、待っておれ。」
ソナカ「おお! カムサハムニダ(ありがとう)! 感謝、感激ハセヨ!」
イク「ところで、ソナカ殿には、どうして額(ひたい)に角(つの)が生えているの?」
ソナカ「生まれつきなんで、仕方ないハセヨ。ちなみに、角の生えた『ウリ(私)』が漂着したことから、角鹿国と呼ばれるようになったニダ。ところで、それ以前は、何と言っていたニカ?」
ケモロー「それが、ロマンというモノだがや。そして、二度と聞いたら、かんで(ダメだよ)!」
ソナカ「わ・・・分かったニダ。ちなみに『ウリ』には、いろんな名前が有るハセヨ。」
ミマキ「都怒我阿羅斯等(つぬがあらしと)じゃな? 都怒我(つぬが)と角鹿(つぬが)・・・。音が同じじゃが、何か関わりが有るのか? そもそも、どういう意なのじゃ?」
ソナカ「なるほど! 分かったニダ! これが『ロマン』ハセヨ! 感謝、感激ニダ!」
ミマキ「聞いた『わし』が、悪かった・・・。許せ・・・。」
みぃ「と・・・ところで、他にも、于斯岐阿利叱智干岐(うしきありしちかんき)という名も有るようですね?」
ソナカの名前についての解説は続く。