JW669 下された勅命
【景行征西編】エピソード40 下された勅命
第十二代天皇、景行天皇の御世。
西暦84年、皇紀744年(景行天皇14)。
ここは、筑紫(今の九州)。
景行天皇こと、大足彦忍代別尊(以下、シロ)の一行は、高屋宮に滞在していた。
二千年後の宮崎県宮崎市や西都市の辺りである。
そこに、蝦夷討伐の将となっていた、陸奥守豊益(以下、トヨマ)の家来が来訪していた。
ちなみに、家来の名は、オリジナル設定で「ザンソー」という。
ザンソー「御目通り叶い、恐悦至極に存じ申し上げ奉りまする。」
シロ「うむ。して、如何なることじゃ? よもや、兄上に何かあったと申すのではあるまいな?」
ザンソー「それが・・・。」
いっくん「早う言うて、楽になりな。」
ザンソー「実は・・・五十瓊敷入彦こと『ニッシー』様に謀反の疑い有りと・・・。」
シロ「なっ!! 戯けたことを申すなっ。」
ザンソー「されど、我が主、『トヨマ』は、大王を敬い、これを救わんとの想いにて・・・。」
もち「蝦夷も、これに加わっちょるんか?」
シロ「『もち』! 兄上が、謀反を起こした態で語るでない!」
タケ「大王・・・落ち着かれよ。まずは、じっくりと話を聞こうではないか。」
シロ「さ・・・左様にござりまするな・・・。して、蝦夷は、どうなった?」
ザンソー「蝦夷の平定は成りもうした。ただ、『ニッシー』様は、武士を従えたことで、お心を強くされたようで・・・。」
モロキ「好機と捉えたと!?」
おやた「『モロキ』! 何を申しておるか、わかっておるのか?!」
モロキ「さ・・・されど・・・。」
シロ「良い。して、兄上は?」
ザンソー「この勢いに乗れば、大王になることも能うと、お考えになったようで、我が主にも、謀反に加わるべしと・・・。」
シロ「信じられぬっ。そもそも、兄上らしくない!」
ザンソー「では、我が主を、お疑いになられまするか!? 別心を働いたと申しまするか!?」
野見「『ザンソー』! 無礼であるぞ!」
ザンソー「も・・・申し訳ござりませぬ。ちと、熱うなりもうした。」
シロ「もう良い! さがれっ。」
ザンソー「ははっ。」
「ザンソー」が立ち去ったあと「シロ」は、側近たちと語り合った。
シロ「皆の者・・・。どう考える?」
百足「にわかには信じられませぬ。」
小左「『トヨマ』の讒奏やもしれませぬぞ。」
ワオン「偽りの報せを奏上したと?」
えっさん「そもそも『ザンソー』の発言は、全て作者の妄想にあらしゃいますよ?」
舟木「されど、謀反の報せは、伝承通りにござりまする。」
シロ「『タケ』先生・・・。どうすれば良いと思われまするか?」
タケ「うむ・・・。『トヨマ』の奏上は、讒奏であろう。」
シロ「では『トヨマ』を咎人として、これを討てば、よろしゅうござりまするな?」
タケ「いや・・・。そういうわけにも、いかぬであろう。」
シロ「ん? それは、如何なる儀にござりまする?」
タケ「ここで『トヨマ』を討てば、大王は、身内贔屓をしたと見られるであろう。」
ナッカ「そんな! おかしいっすよ!」
タケ「おかしいのは、重々承知の上じゃ。されど、事の子細を知らぬ者らは、そのように受け止めるやもしれぬ。」
夏花「して『ニッシー』様は、そのあと、謀反の疑いを起こした者として、豪族たちから、白い目で見られることになると?」
タケ「それで済むなら、まだ良い。」
シロ「更に、良からぬことになると?」
タケ「報せを届けても、信じてもらえぬとなれば、こののち、どの豪族も、大王に、真を伝えなくなるやもしれぬ。」
シロ「そのような・・・では『タケ』先生は、兄上を討てと・・・そう申されまするか?」
タケ「私とて、可愛い弟子を殺めとうはない。されど、このまま『トヨマ』を討てば・・・。」
シロ「むむむ・・・。」
タケ「大王・・・。一つだけ『ニッシー』を助ける手立てがある。」
シロ「それは如何なる策にて?」
タケ「大王を辞め、『ニッシー』に位を譲ることじゃ。」
シロ「なっ!?」
タケ「さすれば、『ニッシー』の顔も、『トヨマ』の顔も立つ。大王? それが出来るか? こののち、位は、力で奪うが、当たり前の世となるであろうが、兄は救われる。如何する?」
シロ「くっ・・・。『ザンソー』を呼べ。勅命を下す・・・。」
たっちゃん「大王?」
シロ「す・・・速やかに・・・逆賊・・・い・・・五十瓊敷入彦を・・・討てと・・・。」
ついに下された勅命。
一体、どうなるのであろうか?
次回につづく