JW517 産まれたかも
【垂仁天皇編】エピソード46 産まれたかも
第十一代天皇、垂仁天皇(すいにんてんのう)の御世。
年が明け、紀元前14年、皇紀647年(垂仁天皇16)となった。
そんなある日のこと・・・。
ここは、纏向珠城宮(まきむくのたまき・のみや)。
垂仁天皇こと、活目入彦五十狭茅尊(いくめいりひこいさち・のみこと)(以下、イク)の元に、大后(おおきさき)がやって来た。
すなわち、日葉酢媛(ひばすひめ)(以下、ひばり)である。
ひばり「大王(おおきみ)・・・。具体的な日付は分かりませんが、産まれたかもしれませぬ。」
イク「えっ? 生まれた? ど・・・どういうこと?」
ひばり「『記紀(きき)』には、何も書かれておりませぬが、時間の流れから鑑(かんが)みて、今年、男の子を産んでいるようです。」
イク「そ・・・そうなの? ってことは、誉津別(ほむつわけ)こと『ホームズ』に、弟が出来たってことだね?」
ひばり「そういうことになりまする。」
ホームズ「・・・・・・。」
ひばり「その子の名前ですが、五十瓊敷入彦(いにしきいりひこ)と申します。『ニッシー』と呼んであげてくださいませ。」
ホームズ「・・・・・・(不思議そうに見つめながら、赤ちゃんのほっぺたを指でつつく)。」
ひばり「どうですか? 皇子(みこ)? 弟が産まれたのですよ。」
ホームズ「・・・・・・(不思議そうに『ひばり』を見つめる)。」
イク「それにしても、いつになったら言の葉を発してくれるのかな・・・(´;ω;`)。」
ひばり「気長(きなが)に待つほかありませぬ。いつか、話も出来ましょう。」
イク「そうだと、いいんだけど・・・(´;ω;`)ウッ…。」
ひばり「あっ! そうでした! 今年、大事件が起きているんですよ。」
イク「大事件?」
ひばり「エピソード429で紹介されているのですが、木国(き・のくに)の日前宮(にちぜんぐう)が、水害によって、秋月(あきづき)に遷座(せんざ)したのです。」
イク「豊鍬入姫(とよすきいりひめ)こと『きぃ』義姉上が、御杖代(みつえしろ)だった頃だね。紀元前47年、皇紀614年の崇神天皇51年のことだから、もう三十年以上前のことになるんだね。」
ひばり「懐かしいですね。『きぃ』様は、丹波(たにわ)にも来たことがあるのですよ。」
イク「そうだったね。」
するとそこに「ひばり」の妹たちが乱入してきた。
すなわち、真砥野媛(まとのひめ)(以下、マー)。
渟葉田瓊入媛(ぬばたにいりひめ)(以下、バタ子)。
薊瓊入媛(あざみにいりひめ)(以下、あざみ)である。
バタ子「姉上が皇子を産んだので、私も子供たちを紹介しちゃいます。」
イク「えっ? そうなるの?」
バタ子「私は二人、産みましたよ。鐸石別(ねてしわけ)こと『ヌテシ』と、胆香足姫(いかたらしひめ)こと『イッカ』ちゃんです!」
イク「男の子と女の子なんだね。」
あざみ「私だって、男の子と女の子よ。池速別(いけはやわけ)こと『イケイケ』と、稚浅津姫(わかあさつひめ)こと『あさ』ちゃんよ!」
イク「すごいね! ホームズ? 弟と妹が、いっぱい出来たんだよ!」
ホームズ「・・・・・・(赤ちゃんのほっぺたをつつき始める)。」
イク「あれ? ところで『マー』は?」
マー「悪かったわね! 私だけ孕(はら)まなかったのよ! なんでか分かる? 大王が・・・。」
イク「えっ? 僕の所為(せい)なの?」
マー「どう考えても、そうとしか考えられないんですけど!」
イク「ち・・・違うと思うけど・・・。」
あざみ「姉上・・・。これがロマンってヤツですかね?」
バタ子「ち・・・違うと思うけど・・・。」
ひばり「まあまあ、落ち着いて・・・。鸛(こうのとり)が鳴くまで待ちましょう。」
マー「姉上は、もう産んでるから、そんなことが言えるのよ!」
ひばり「い・・・いや、そ・・・そういうわけじゃなくて・・・。」
こうして、続々と「イク」の皇子と皇女(ひめみこ)が産まれたのであった。
つづく