JW592 大きな亀
【垂仁経綸編】エピソード14 大きな亀
第十一代天皇、垂仁天皇の御世。
西暦5年、皇紀665年(垂仁天皇34)3月2日。
垂仁天皇こと、活目入彦五十狭茅尊(以下、イク)は、山代国(現在の京都府南部)に行幸(天皇が外出する事)した。
ここで、随行する大連や大夫たちが語り始めた。
ちね「大王? 山背大国不遅こと『フッチ』の元に行くんでっしゃろ?」
イク「えっ?」
カーケ「これまで解説されてなかったが『フッチ』の娘、苅幡戸辺こと『カリファ』を妃にしているんだぜ。」
くにお「三人の皇子が、生まれておりまするな。」
武日「じゃが。祖別こと『オージン』様。五十日足彦こと『五十日』様。胆武別こと『イタケ』様の三人やじ。」
ニック「せやけど、姉の方を妃にするやなんて、大王も、変わってますなぁ。」
イク「えっ? どういうこと?」
ニック「妹の綺戸辺こと『かに』の方が、美人なんやで。」
イク「そ・・・そういうことなら、仕方ないね。」
オーカ「えっ? 大王? 矛を手に取って、如何なされたので、あらしゃいます?」
イク「これより、誓約をおこなう。」
ちね「えっ? どういうことやねん?」
カーケ「気にせず、誓約を始めたんだぜ。」
イク「必ず、その美人に会いたいので、途次に、瑞兆が現れて欲しい!」
その後、行宮に到着する頃合になって、大きな亀が川の中から出て来た。
イク「ん? もしかして、瑞兆? よく分かんないけど、亀の甲羅に、矛を刺してみよう。」
ニック「なんで、そうなるんでっか?」
武日「そんげなコツ、言うちょったら、大王が刺してしまったじ!」
カーケ「か・・・亀が、石になってしまったんだぜ。」
イク「これは、間違いないね。必ず、霊験が有るんだろう。『かに』を妃にしちゃうよ!」
そこに「かに」がやって来た。
かに「姉上に続き、私まで妃にしちゃうとは、ホントに驚きだぞ。」
イク「よろしくね。『かに』・・・。」
かに「そんなこと言ってたら、子供が産まれたぞ。磐衝別こと『ツクツク』だぞ。」
ツクツク「お初にお目にかかりまする。我が『ツクツク』にござりまする。」
くにお「時の流れが、おかしくなっておりませぬか?」
かに「更に、女の子も産まれたぞ。両道入姫こと『ふたじ』だぞ。」
ふたじ「お初にお目にかかりまする。私が『ふたじ』にござりまする。」
イク「す・・・凄い展開だね・・・(;^_^A」
そして、年が明け、西暦6年、皇紀666年(垂仁天皇35)となった。
その年の9月・・・。
ここは、纏向珠城宮。
「イク」は、五十瓊敷入彦(以下、ニッシー)を呼び出していた。
ニッシー「なんですか? 父上?」
イク「うん。『ニッシー』には、川内国(現在の大阪府中部)に行って欲しいんだよね。」
ニッシー「また、新しい妃? 父上も、いい歳して、何、やってるの? 今の父上を見たら、母上が何て言うか・・・。」
イク「そ・・・そっちじゃないよ。池を造って欲しいんだ。」
ニッシー「えっ? 池?」
イク「うん。合いの手として、五十野こと『イソノくん』を同道させるよ。」
ニッシー「えっ? 誰? っていうか、通称の方が長いんですけど!」
イク「それじゃあ、紹介するよ。『イソノくん』だよ!」
イソノくん「お初にお目にかかるっちゃ。うちが『イソノくん』やに。」
イク「『イソノくん』は、大倭の直の市磯長尾市こと『イッチー』の息子だよ。」
そこに「イッチー」がやって来た。
イッチー「大王。不束な息子ですが、どうぞ、よろしくやに。」
ニッシー「も・・・もしかして『イッチー』殿は、これにて、引退ってこと?」
イッチー「そういうことやに。息子よ。気張って行くんやに!」
イソノくん「分かったに! うち、頑張るっちゃ!」
こうして、二人の池づくりの旅が始まったのであった。
つづく
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