JW594 神になった皇子
【垂仁経綸編】エピソード16 神になった皇子
第十一代天皇、垂仁天皇の御世。
西暦6年、皇紀666年(垂仁天皇35)冬。
池を造った、五十瓊敷入彦(以下、ニッシー)は、大王に言挙げするため、纏向珠城宮に参内した。
同行した、大倭の直の五十野(以下、イソノくん)も連れての参内である。
垂仁天皇こと、活目入彦五十狭茅尊(以下、イク)を始め、大連や大夫たちは、彼らの報告を受けるのであった。
ニッシー「・・・ということで、国中(奈良盆地)の池も造ったよ。」
イク「そうか・・・。御苦労だったね。」
イソノくん「皇子? あのことも話しておいた方が、良かち思いますが・・・。」
ニッシー「ああ、あのことか・・・。父上?」
イク「何だい?」
ニッシー「母上の陵にも参ってきたよ。」
イク「えっ?」
ニック「なるほど・・・。狭城池の近くに、亡き大后の陵が有るんでしたなぁ。」
カーケ「流石は『ニッシー』なんだぜ。本当に、母親想いなんだぜ・・・(´;ω;`)ウッ…。」
ニッシー「母上に、しっかりと、言挙げしてきたからね。」
イク「ん? 言挙げ? 何を言挙げしたの?」
ニッシー「それは・・・。」
イソノくん「皇子! うちが、あのことと言ったのは、そっちじゃなかっ。」
ニッシー「えっ? じゃあ、何のこと?」
イソノくん「狭山池の社についてやに。」
ちね「社? 狭山神社のことか?」
オーカ「エピソード450で紹介されておりますなぁ。鎮座地は、大阪府の大阪狭山市半田にあらしゃいます。」
くにお「天照大神と素戔嗚命が祀られておったな?」
オーカ「それだけではありません。我の祖、天児屋根命も祀られておりますし、中臣臣狭山も祀られますぅ。」
武日「中臣臣狭山? 聞いたことのない人物やじ。汝の親戚か?」
オーカ「まだ登場しておりませんが、我の息子にあらしゃいます。」
イク「いずれ、祀られる日が、来るってことだね?」
オーカ「そうですぅ。」
ニッシー「あの・・・。僕が言いたいのは、そっちじゃなくて・・・。」
イク「えっ? 狭山神社についてじゃないの?」
ニッシー「関わりが無いわけじゃないよ。その社の境内に鎮座する、摂社だから・・・。」
カーケ「新しい社が、建ったのかね?」
イソノくん「じゃが。それが、狭山堤神社やに。」
くにお「祭神は?」
ニッシー「は・・・恥ずかしながら、僕・・・神様になっちゃった・・・(〃ノωノ)」
イク「えっ? 『ニッシー』が祀られたの?!」
ニッシー「そうなんだよねぇ。『古事記』では、僕が、狭山池を造ったことになってるんだよね。」
イソノくん「そういうわけで『ニッシー』様は、神様になったんやに。」
ちね「生き神様っちゅうことか?!」
ニッシー「そういうことになっちゃうね・・・(〃ノωノ)」
こうして、皇子は、神様になったのであった。
そして、二年の歳月が流れた。
すなわち、西暦8年、皇紀668年(垂仁天皇37)1月1日。
ついに「イク」は、日嗣皇子を定めた。
イク「日嗣は、大足彦忍代別尊こと『シロ』だよ!」
シロ「恐悦至極に、存じ申し上げ奉りまする。」
イク「しっかりと学び、しっかりと覚えていくんだよ。」
シロ「かしこまりもうした。」
さて、そのころ、海の向こうの大陸では、一つの国が滅びようとしていた。
この年の12月、漢王朝が滅び、新王朝が誕生するのである。
次回につづく