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JW610 消えた刀子

【垂仁経綸編】エピソード32 消えた刀子


第十一代天皇、垂仁すいにん天皇てんのう御世みよ

西暦59年、皇紀こうき719年(垂仁天皇88)7月10日。

垂仁天皇こと、活目入彦五十狭茅尊いくめいりひこいさち・のみこと(以下、イク)が、天日槍あめのひぼこ玉津宝たまつたからを要求。

めいを受けた、清彦きよひこは、多遅摩たじまから、纏向珠城宮まきむくのたまき・のみやへと向かう。

系図(清彦)
地図(多遅摩)
地図(纏向珠城宮)

大連おおむらじ大夫たいふたちが見守る中、清彦きよひこは、無事に、参内さんだいたしたのであった。 

人物一覧表(大連、大夫たち)

清彦きよひこ「これが、曾祖父そうそふたずさえし、宝物ほうもつだっちゃ。」 

イク「ありがとう。清彦きよひこ神庫ほくらにて、ちゃんと管理するね。」 

清彦きよひこ神庫ほくら?」 

ちね「宝物を納める倉庫のことやで。」 

オーカ「『日本書紀にほんしょき』には、くわしいことが書かれておりませんが、作者は、石上いそのかみ神宮じんぐう神庫ほくらではないかと、考えてるみたいですなぁ。」 

地図(石上神宮)
石上神宮(鳥居)
石上神宮(拝殿)

イク「ん? ちょっとって・・・。」 

清彦きよひこなんだいや?」 

イク「かずが、少なくない?」 

清彦きよひこ「えっ?」 

くにお「しばし、おちくだされ・・・。羽太はふとたま足高あしたかたま鵜鹿鹿うかか赤石あかいしたま日鏡ひのかがみくま神籬ひもろき・・・。」 

カーケ「合わせて、五つなんだぜ。」 

武日たけひ「たしか、七つか、八つだったはずや。」 

ちね「せやな。本文ほんぶんでは、七つで、別伝べつでんでは、八つになってるなぁ。」 

カーケ「これは、どういうことかね?」 

清彦きよひこ経年劣化けいねんれっか・・・かも、しれないんだわいや。」 

イク「そういうことなら、仕方しかたないね。」 

くにお「大王おおきみ? まことに、よろしいのですか? かくしておるのやも・・・。」 

イク「せっかく、とお多遅摩たじまから、ってきてくれたんだよ? うたがっちゃダメでしょ?」 

くにお「大王おおきみが、そうもうされるのであらば・・・。」 

イク「さぁ。清彦きよひこには、酒をたまわろう。国中くんなか(奈良盆地)の高橋邑たかはし・のむらで造った、お酒だよ。くわしいことは、エピソード272を読んでね。」 

清彦きよひこ「ははっ。では、いただきます。」 

清彦きよひこが、酒を飲もうとした、そのとき、清彦きよひこころもから、ある物が出てきた。 

イク「ん? それはなに? とても立派な小刀こがたなだね?」 

清彦きよひこもうわけございません! ささたてまつった玉津宝たまつたからたぐいだっちゃ!」 

イク「えっ?」 

清彦きよひこ出石いずし刀子かたなだっちゃ。これだけは、手放てばなしたくないと思い、かくしていたんだわいや。」 

くにお「まことに、かくしておったとは・・・。」 

ちね「えらいことやで!」 

イク「とにかく、その小刀こがたなを、仲間からはずすことは出来できない。ささげてもらおう。」 

清彦きよひこ「わ・・・かったわいや。」 

こうして、六つの宝物が納められたのであるが、それから、数日後のこと・・・。

「イク」の元に、物部もののべむらじ多遅摩たじま(以下、タジ)がんできた。 

系図(物部氏:タジ)

タジ「大王おおきみ! えらいこっちゃ!」 

イク「ん? タジ? どうしたの?」 

タジ「じつは、この物語では、いそがしい大叔父上おおおじうえわって、僕が、神庫ほくらの管理をしてる設定になってるんですよ。」 

イク「それで? 宝物に、なにか、あったの?」 

タジ「はい。出石いずし刀子かたなだけ、消えて無くなってもうたんですよ。」 

一同「ええぇぇ!!」×6 

ちね「く・・・くらものが無くなった?」 

カーケ「なにを言っているのかね?」 

オーカ「誰かにぬすまれたので、あらしゃいますか?」 

くにお「それでは、くらの意味が無くなってしまうではないか!」 

タジ「くらが、あばかれたあとも無いんですよ! 神憑かみがかってるとしか・・・。」 

イク「神憑かみがかってる? 神様の仕業しわざかも・・・。」 

タジ「えっ? ホンマに、そう思うんですか?」 

ちね「大王おおきみ清彦きよひこの元に、帰ったかもしれへんで。」 

イク「そ・・・そうだね。すぐに、使いを送ろう!」 

今回も、使者となったのは、三輪みわきみ大友主おおともぬし(以下、オート)ということにしたい。

系図(三輪氏:オート)

そして・・・。 

イク「『オート』・・・。どうだった?」 

オート「清彦きよひこ殿にたずねたところ、夜中に、刀子かたなが戻って来たとのこと・・・。」 

武日たけひ「やっぱり戻ってたんやな。」 

ちね「ほんでそれで、取り戻してきたんか?」 

オート「それが、翌朝には、せていたと・・・。」 

イク「お・・・おそおおい・・・。これが、神意しんいだと言うのなら、さがすのは、めるべきだね。」 

こうして、刀子かたなは行方不明となった。 

つづく

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