JW698 妊婦に見つめられ
【景行征西編】エピソード69 妊婦に見つめられ
第十二代天皇、景行天皇の御世。
西暦88年、皇紀748年(景行天皇18)7月。
景行天皇こと、大足彦忍代別尊(以下、シロ)の一行は、還幸(天皇が帰宅すること)と銘打って、筑紫(今の九州)の巡幸(天皇が各地を巡ること)をおこなっていた。
そして、佐賀県鳥栖市のある邑に来た時、集まってきた地元の人々に向かって、犬の真白が吼えるのであった。
真白「ワンワン!」
地元民(い)「なんや? わしら、嫌われとるんか?」
タケ「大王の言うことを聞かぬのは、初めてではないか?」
シロ「た・・・たしかに・・・。」
そのとき、地元の妊婦が、遅ればせながら、やって来た。
妊婦「大王が来てるって、ホント?」
真白「ワンワン!」
妊婦「あらぁ、真っ白な、お犬さんねぇ。」
地元民(ろ)「何言うとうと? 『肥前国風土記』では、大王が飼っていた犬としか、書かれとらんぞ?」
地元民(は)「白い犬になったのは、作者の陰謀やぞ?」
妊婦「ど・・・どっちでもいいんだけど・・・。」
シロ「そ・・・そんなことより・・・。」
地元民「えっ?」×4
シロ「吼えるのを止めたぞ。」
いっくん「あっ! ホンマや! 妊婦に見つめられて、吼えるの止めましたで!」
真白「クゥゥン。クゥゥン。」
たっちゃん「ど・・・どういうことなのじゃ?」
シロ「よくわかりませぬが、真白が吼えるのを止めたので『止む』の国と呼ぶことに致しましょうぞ。」
地元民(い)「かしこまりました。」
夏花「その後、訛って養父郡となったぞ。」
モロキ「二千年後の地名で申せば?」
夏花「わかりやすく言えば、佐賀県鳥栖市の一部と、佐賀県みやき町の一部じゃ。」
ワオン「前回の分明邑こと旭地区を包み込むような形になるぞ。」
百足「たしかに・・・旭地区の東側と北側に広がる地なのですな?」
ワオン「そういうことじゃ。」
もち「北側の方で、みやき町も含まれちょるんやな?」
ワオン「左様にござる。」
シロ「そ・・・そうか・・・。」
地元民(ろ)「では、ここまで来たついでに、あの井戸を、お見せしようではないか!」
地元民(は)「えっ? あの井戸を?」
妊婦「塩辛い井戸なんて、大王が喜ぶのかしら・・・。」
シロ「塩辛い井戸? 行ってみようではないか。」
こうして、地元民の案内というオリジナル設定で「シロ」たちは、井戸に向かった。
地元民(い)「ど・・・どうでしょう?」
シロ「うっ。これは、海の水か?」
地元民(ろ)「そうやと思います。」
リトル(7)「うへっ。塩辛いぃぃ。」
タケ「ん? 井戸の底に、海藻が生えておるぞ。」
舟木「おお! まことに、海藻が・・・。」
シロ「海藻か・・・。では、この井戸を『海藻立つ井』と名付けようぞ。」
地元民「いいね!」×4
野見「その後、訛って米多井となり、邑の名も、米多郷となりもうした。」
えっさん「二千年後の佐賀県上峰町の前牟田にある、米多地区と言われておりますぅ。」
おやた「上米多公民館がある一帯にござりまする。」
シロ「そうか・・・。では、次に進もうぞ。」
地元民たちと別れ、一行は、更に進んでいった。
すると・・・。
シロ「ん? 何じゃ? この邑は、皆、疲れ切っておるぞ。」
リトル(7)「本当だ! 俺が、野見に、相撲(相撲のこと)で負けた時のような顔をしておる。」
野見「皇子? 例えになっておりませぬぞ。」
シロ「邑の者よ。如何したのじゃ?」
邑人(い)「苦しんでいるのですぞ。」
シロ「ん?」
一体、何に苦しんでいるのであろうか?
次回につづく