JW461 蘇那曷叱知の冒険
【崇神経綸編】エピソード36 蘇那曷叱知の冒険
第十代天皇、崇神天皇(すじんてんのう)の御世。
紀元前33年、皇紀628年(崇神天皇65)のある日・・・。
朝鮮半島南部に、一人の男がいた。
意富加羅国(おおから・のくに)の王(こきし)の子、蘇那曷叱知(そなかしち)(以下、ソナカ)である。
「ソナカ」は、白い石から乙女に変化(へんげ)した神を求め、海を渡った。
そして、我が国の穴門(あなと)に到着した。
穴門とは、のちの長門国(ながと・のくに)。
山口県西部である。
ソナカ「牛を追い、乙女を追い、異国に来てしまう『ウリ(私)』って、すごいハセヨ!」
するとそこに、伊都都比古(いつつひこ)(以下、ツツツ)がやって来た。
ツツツ「汝(なびと)は、何者じゃ!? 面妖(めんよう)な奴原(やつばら)め!」
ソナカ「ウリは、王子様ハセヨ! 怪しい者ではないニダ。乙女を追って、やって来たハセヨ。」
ツツツ「温羅(うら)という百済(くだら)の王子様がおったが、そんな感じか?」
ソナカ「そ・・・そんな感じハセヨ。ところで、ウォ(あなた)は、何者ニダ?」
ツツツ「ん? 我(われ)か? 我は、この国の王じゃ。我の他に王はいない。それゆえ、他の地に行ってはならぬ。我の元で、働くが良い! そして、夜麻登(やまと)に対抗するのじゃ!」
ソナカ「なるほど・・・。夜麻登か・・・。そっちが王様に決まっているニダ!」
ツツツ「い・・・いや、今のは、無しじゃ。そのようなこと『日本書紀(にほんしょき)』では、一言も言うてはおらぬ。ちょっと、口が滑(すべ)ってしまっただけじゃ。」
ソナカ「完全に怪しいニダ。ウリは、ここを離れるハセヨ!」
こうして、穴門を飛び出した「ソナカ」であったが、地図もナビも無い時代である。
あっという間に迷子になり、出雲(いずも)を経由して、北津海(きたつうみ:今の日本海)の島々を彷徨(さまよ)うこととなってしまった。
そして・・・。
ソナカ「あ・・・あの岸に船を付けるニダ。そして、地元民に尋ねてみるハセヨ・・・。」
地元民「おろぉぉ! おんじゃん(おじさん)、額(ひたい)に角(つの)が生えとるんな?」
ソナカ「えっ? そ・・・そうだけど・・・。おかしいニカ?」
地元民「おろぉぉ! 言の葉も違うんけ?」
ソナカ「そんなことより、聞きたいことが有るハセヨ。」
地元民「なんど(何ですか)? どんなんど(どうしたの)?」
ソナカ「ここは、何処(どこ)ニカ?」
地元民「ここは、角鹿国(つぬが・のくに)の笥飯浦(けひ・のうら)や。」
ソナカ「角鹿? その地名は、角の生えた『ウリ』が流れ着いたことで、名付けられたと言われているニダ。だから、それより前は、何と言っていたニカ?」
地元民「・・・・・・・・・。二千年後の福井県敦賀市(つるがし)のことや。」
ソナカ「華麗にスルーされたニダ! では、質問を変えるニダ。夜麻登は、何処(どこ)ニカ?」
地元民「そんなら、我(われ)に付いて来たら、ええど(いいよ)!」
こうして「ソナカ」は、ヤマトの国中(くんなか:奈良盆地)。
すなわち、磯城瑞籬宮(しきのみずかき・のみや)に至ったのであった。
つづく