JW691 山鹿灯籠
【景行征西編】エピソード62 山鹿灯籠
第十二代天皇、景行天皇の御世。
西暦88年、皇紀748年(景行天皇18)6月。
景行天皇こと、大足彦忍代別尊(以下、シロ)の一行は、還幸(天皇が帰宅すること)と銘打って、筑紫(今の九州)の巡幸(天皇が各地を巡ること)をおこなっていた。
シロ「して、ここは、前回のつづきで、熊本県山鹿市なのか?」
たっちゃん「そうじゃ・・・と言いたいところじゃが・・・。」
シロ「ん? 如何なされましたか? 義兄上?」
たっちゃん「濃い霧が立ち込め、もはや、ここが何処かは・・・。」
シロ「わからぬと申されまするか!?」
野見「いわゆる、迷子にござりまするな。」
リトル(7)「父上? どうするのだ?」
シロ「ど・・・どうしたものか・・・。」
夏花「あっ! あれは何じゃ!?」
シロ「如何した?」
夏花「あれは・・・灯りではありませぬか?」
おやた「言われてみると、そう見えるのう。」
ナッカ「間違いないっす! あれは、松明の灯りっすね。」
シロ「されど、誰が松明を?」
タケ「物の怪やもしれぬのう。」
リトル(7)「えっ! どうするのだ? 先生!」
タケ「案ずるな。里の者やもしれぬ。」
ワオン「里の者であってくれ・・・。」
すると、灯りの方から声が聞こえてきた。
女「ようこそ! 杉山へ!」
男「よくぞ、お出でくだされた!」
シロ「おお! 里人のようじゃな・・・。」
女「はぁぁい! あたいが『マリア』よ。」
男「そして、私が『パウロ』です。」
シロ「そうか・・・。して、この松明は?」
マリア「霧の所為で困ってるんじゃないかと思って・・・。」
シロ「そうか・・・。ありがたく思うぞ。」
パウロ「さあさあ、杉山まで、お導き致しますよ。」
百足「おお! かたじけない!」
マリア「このときの松明が、山鹿灯籠の起源と伝えられてるのよ。」
リトル(7)「山鹿灯籠? 何なのだ? それは?」
マリア「それは・・・あとで説明するわね。」
リトル(7)「今では、ダメなのか?」
とにもかくにも、一行は、杉山という邑に到着した。
シロ「では、ここに行宮を設けようぞ。」
パウロ「大王? 行宮は、その後、社となったのですよ。」
シロ「そうか・・・。社となったのか・・・。」
えっさん「それが、大宮神社にあらしゃいます。」
もち「鎮座地は、熊本県山鹿市の山鹿やじ。」
マリア「そして、あたいたちは、お導きした松明に肖って、毎年、社に灯火を捧げ奉るようになったのよ。」
リトル(7)「さっきの松明が、ここでつながってくるのだな?」
マリア「そうよ。」
パウロ「初めは、灯火を奉るだけだったのが、室町時代になると、紙で作った金灯籠に変わったんですよ。」
ワオン「紙? 紙とは、何じゃ?」
マリア「もう少し後の御世に、発明されるモノよ。」
シロ「そのようなモノが出来るのか・・・。」
マリア「それだけじゃないわよ。更に、金灯籠を頭に掲げた女たちが踊る『山鹿灯籠踊り』も誕生したのよ。」
パウロ「千人灯籠踊りは、祭りの代名詞と言われてますね。」
いっくん「なんか・・・盛り上がってるやんけ!」
マリア「いいでしょ? 盛り上がるのって!」
もち「いいじ!」
シロ「そこまで、我を慕うてくれるのは、真にありがたきことなれど・・・。」
舟木「なれど?」
シロ「里人たちを見るに、なにやら、思い詰めた面持ちに感じるのは、気のせいか?」
パウロ「さ・・・さすがは、大王・・・。皆様方に御願いしたき儀がございまして・・・。」
モロキ「出来れば、賊の退治が良いのう・・・。」
パウロ「その通りです。賊を退治て欲しいのです。」
モロキ「なんと! 言うてみるモノじゃな!」
小左「モロキ殿! 喜び過ぎじゃ!」
シロ「良い良い・・・。では、賊を退治しようではないか。して、その賊の名は?」
マリア「名前なんてありません。」
百足「ん? 名なしの賊? はて、面妖な・・・。」
タケ「人では無いということか?」
マリア「その通りです。賊は、八頭の大きな亀なんです。」
いっくん「亀? 八つの頭が有るとか?」
パウロ「い・・・いえ、八頭の亀です。」
いっくん「前回の亀とは、ちゃうんやな・・・。」
パウロ「前回?」
シロ「気にせずとも良い。ともかく、退治てくれようぞ。」
こうして、亀退治作戦が発動されたのであった。
つづく
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