JW446 親の心、子知らず
【崇神経綸編】エピソード21 親の心、子知らず
第十代天皇、崇神天皇(すじんてんのう)の御世。
ここは、磯城瑞籬宮(しきのみずかき・のみや)。
日嗣皇子(ひつぎのみこ:皇太子のこと)の活目入彦五十狭茅尊(いくめいりひこいさち・のみこと)(以下、イク)の元に、兄弟姉妹が集っていた。
すなわち、彦五十狭茅(ひこいさち)(以下、のまお)。
国方姫(くにかたひめ)(以下、ニカ)。
千千衝倭姫(ちちつくやまとひめ)(以下、チック)。
五十日鶴彦(いかつるひこ)(以下、イカッピ)。
倭彦(やまとひこ)である。
異母兄の八坂入彦(やさかいりひこ)(以下、ヤサク)の姿もある。
のまお「皇子(みこ)! 前回の神社紹介に出演しないなど、暴挙(ぼうきょ)の極(きわ)みにござりまするぞ? 短慮(たんりょ)は、いただけませぬな・・・。」
イク「兄上・・・。短慮なんかじゃないよ。出雲(いずも)の人たちのことを想うと・・・。」
ニカ「されど、大王(おおきみ)は、訝(いぶか)しんでおられましたよ。」
イク「姉上・・・。別に、大王のやり方に不満が有るとか、そういうことじゃないんだ。」
チック「じゃあ、どういうことなの?」
イク「大王は・・・。父上は、急ぎ過ぎてるんじゃないかって思うんだ。出雲が、いずれヤマトに組み込まれるのは、自明(じめい)の理(り)だったと思う。でも、戦(いくさ)まで引き起こし、今度は、出雲の人々を移住させた・・・。恨(うら)まれるようなことばかりだ・・・。」
イカッピ「移住の件は、恨まれたりしてないと思うわよ。暮らしが大変な人たちには、ありがたい話だったんじゃないかと思うの。何でも、悪く受け止めない方が、いいわよ。」
イク「でも、強制だったら? ヤマトに対して、良からぬことを考えてしまうかも・・・。」
倭彦「例え、そうであっても、今のヤマトに歯向かえる豪族がおりましょうか?」
ヤサク「汝(いまし)ら、まだまだ若いのう・・・。」
イク「えっ? ヤサク義兄上? それは、どういうこと?」
ヤサク「大王の御心(みこころ)が、全く分かっておらぬ・・・ということよ。」
のまお「大王の御心? 大王には、何か、お考えが有ると?」
ヤサク「その通りじゃ。大王は、悪役を買って出たのじゃ。例え、出雲の人々に恨まれようとも、御自身の御世に、ことごとく押し進める思し召し(おぼしめし)なのじゃ。」
ニカ「なにゆえ、悪役を買って出たのですか?」
ヤサク「全ては『イク』ちゃんのためじゃ。」
イク「えっ? 僕の?」
ヤサク「心優しい『イク』ちゃんでは、出雲との関わりは、宙(ちゅう)ぶらりんのままとなるであろう。そうなれば、出雲を与(くみ)する機会を逃し、大乱となるやもしれぬ・・・。そう考えられ、是が非でも、自身の御世にて、併呑(へいどん)を進められたのであろうな・・・。」
チック「なるほど・・・。『イク』ちゃんの御世になる前に、問題を解決しておこうと?」
ヤサク「そういうことじゃ・・・。」
イク「そ・・・そんな・・・。大王は、僕のことを想って・・・(´;ω;`)ウッ…。」
こうして、皇子たちを通して、作者の見解が語られたのであった。
つづく