JW567 国寿ぎの宴
【伊勢遷宮編】エピソード26 国寿ぎの宴
第十一代天皇、垂仁天皇の御世。
紀元前4年、皇紀657年(垂仁天皇26)。
天照大神(以下、アマ)の御杖代、倭姫(以下、ワッコ)一行と、忌部和謌富奴(以下、わかとん)たちは、伊勢神宮の建造を開始した。
物部八十友諸と呼ばれる職人たちが作業をする中、遷座に向けて、着々と準備が進められていたのである。
そんなある日の夜のこと、ワッコが眠っていると、夢の中に「アマ」様が現れた。
アマ「ワッコよ・・・。ワッコよ・・・。」
ワッコ「えっ? アマ様? 如何なされました?」
アマ「わらわは、高天原にいらっしゃり、かつて、高天原の門を押し開かれ、眺め見られて、見定めた国の宮処は、まさに、この地でありました。わらわは、この地に、お鎮まりになり、お定まりになろうと思う。」
ワッコ「ん? アマ様? 言の葉が、少しおかしくは、ありませぬか?」
アマ「し・・・仕方なかろう。『倭姫命世記』の原文が、自身で敬語を用いる、自敬表現になっておるのじゃ。」
ワッコ「そのような表現方法が有るのですね。」
アマ「とにかく、そういうことじゃ。」
ワッコ「されど、なにゆえ、夢の中に?」
アマ「そう書かれておるのじゃ。仕方あるまい。」
ワッコ「か・・・かしこまりました・・・(;^_^A」
翌日の朝、ワッコは、夢の内容を大夫や「ワクワク」たちに語った。
一同「おお!」×大勢
ちね「なんや、よう分からへんけど、良かったなぁ。」
インカ「左様ですな。」
カーケ「しかし、さんざん出演しておいて、この時だけ、夢で伝えるところが、ニクいんだぜ。」
オーカ「これまでの出演は、オリジナル設定にあらしゃいますよ?」
乙若「オイジナウ?」
くにお「されど、『倭姫命世記』では、拙者たち、五人の大夫と『ワクワクさん』にだけ語ったような記述になっておるのう。」
おしん「えっ? ホントだべか?」
武日「安心するっちゃが。この物語では、職人たちも含めた、皆が聞いちょるんやじ。」
八十友諸(い)「いやぁ。場所が間違ってる・・・なんて、言われたら、恐ろしいことになってましたで。」
八十友諸(ろ)「恐ろし過ぎるやろ!」
八十友諸(は)「ホンマ、そうならんで、良かったなぁ。」
ワクワク「よぉぉし・・・。それじゃあ、ここで、国寿ぎしちゃうよ。」
ねな「国寿ぎとは、国を褒め讃える言の葉よ。」
ワクワク「神風の伊勢の国、百船、度会の県、佐古久志呂、宇治の五十鈴川の川上に鎮まり定まる『アマ』様。」
ワッコ「よし! では、今日は目出度いゆえ、宴楽を致そうぞ!」
市主「分かりやすく言えば、飲み会で、お休みですな?」
ワッコ「うむ。今日は、作業無し! 宴じゃ!」
わかとん「おお! かたじけなし!」
アララ「やったぁぁ!」
カット「えっ? アララ? 初めて、異なる台詞を言ったのではないか?」
アララ「ようやく解禁されました。おいら、すっごく感動してます!」
カーケ「き・・・禁じられていたのかね?」
こうして、宴が催された。
夜通しおこなわれたと「倭姫命世記」は語る。
ねな「舞っちゃいまぁぁす!」
おしん「おらは、唄うべぇ!」
乙若「ささっ、一献。」
八十友諸(に)「これは、これは、かたじけない。」
ワッコ「では、私も国寿ぎ致そう。」
インカ「おっ! ワッコ様が、国寿ぎ?」
ワッコ「朝日向かう国、夕日向かう国、波の音が聞こえぬ国、風の音が聞こえぬ国、弓矢や武具の音が聞こえぬ国、稲穂の浪が幾重にも打ち寄せる、素晴らしき国、神風の伊勢の国の度会の県の佐古久志呂、五十鈴の宮に鎮まり、お定まりくださいませ。」
一同「おお!」×大勢
こうして、宴は、朝まで続いたのであった。
つづく