ＪＷ５７５　坐ってみよう

【伊勢遷宮編】エピソード34　坐ってみよう

第十一代天皇、垂仁すいにん天皇てんのうの御世みよ。

紀元前4年、皇紀こうき657年（垂仁天皇26）。

天照大神あまてらすおおみかみ（以下、アマ）の御杖代みつえしろ、倭姫やまとひめ（以下、ワッコ）は、アマ様を祀まつるため、様々な準備をおこなう。

そして、垂仁天皇こと、活目入彦五十狭茅尊いくめいりひこいさち・のみこと（以下、イク）たち家族と共に、御膳御贄みけおおみにえの処ところを定さだめる船旅ふなたびに出た。

系図（大王一行）

アマ様に捧ささげる食べ物を探す旅に出たのである。

付き従うのは、大神主おおかんぬしの大若子おおわくご（以下、ワクワク）と、舎人とねりの乙若子おとわくご（以下、乙若おとわか）であった。　

ワッコ「して、私たちは、何処いずこに来ておるのじゃ？」　

ワクワク「三重県みえけん南伊勢町みなみいせちょう河内こうちだよ。」　

地図（三重県南伊勢町河内）

イク「かなり、南みなみに下くだったみたいだね。」　

ひばり「ここに、御膳御贄みけおおみにえの処ところが有るのですね？」　

乙若おとわか「いいえ。有りませぬ。」　

ニッシー「はぁ？　じゃあ、なんで、ここに来たの？」　

ワクワク「実は『ワッコ』様に坐すわって欲ほしい岩いわが、有るんだよね。」　

ワッコ「い・・・岩いわ？」　

乙若おとわか「どうぞ、お坐すわりくだされ。」　

ひばり「変なこと、しませんよね？」　

乙若おとわか「ご・・・御安心くださりませ。」　

ワッコ「坐すわれば良いのじゃな？　こ・・・こうか？」　

ワクワク「ありがとう！　ワッコ様！　腰掛石こしかけいしの伝承でんしょうが成立したよ！」　

腰掛石（鳥居と標識）

腰掛石（石碑）

石碑の裏に腰掛石が有る

腰掛石

マス子「伝承？　ここで、休憩きゅうけいしたってことですか？」　

乙若おとわか「左様さようにござりまする。」　

ロミ子「ちなみに、瀧原宮たきはらのみやから、次の遷座地せんざちを求め、彷徨さまよった際の伝承にござりまするよ。」　

地図（倭姫命腰掛石）

ワッコ「で・・・では、エピソード551の時に？」　

イク「えっ？　彷徨さまよってた？　そんなことが有ったの？」　

ワッコ「は・・・はい。」　

ひばり「大変な想いをしながら、旅を続けていたのね。」　

シロ「して、ここに、我われが坐すわったら、どうなるのじゃ？」　

ワクワク「ちょっと！　坐すわったら、おかしなことになるから！」　

イク「僕も坐すわってみよう。」　

乙若おとわか「大王おおきみ！　もっと、おかしなことになりまする。」　

ダッコ「と・・・ところで、御膳御贄みけおおみにえの処ところは？」　

カキン「姉上の申もうされる通とおりじゃ。早はよう参まいりましょう。」　

ワクワク「了解！　じゃあ、北上するよ！」　

シロ「北上？」　

ニッシー「通り越してたってこと？！」　

こうして、船旅が再開され・・・。　

イク「ようやく辿たどり着ついたってわけだね？」　

ワクワク「その通り！」　

ワッコ「して、この国くにの名なは何なんぞ？」　

ワクワク「嶋国しま・のくにの国崎嶋くざきしまだよ！」　

ロミ子「二千年後の鳥羽市とばし国崎町くざきちょうにござりまするよ。」　

地図（三重県鳥羽市国崎町）

乙若おとわか「ところで、物ものの怪けが出てくる気配けはいもありませぬので、そろそろ、鎧よろいを脱ぬいでも、よろしいでしょうか？」　

イク「僕が、物ものの具ぐせよと、言ったわけじゃないからね。いいんじゃないかな。」　

ワクワク「ありがとう！　暑あつかったんだよね。」　

ダッコ「こうして、鎧を脱いだので、近くの岬は、鎧崎よろいざきと呼ばれるようになりました。」　

地図（鎧崎）

ニッシー「僕も、身に付けたかったなぁ(*´Д｀)」　

するとそこに、一人の女人にょにんがやって来た。　

女人にょにん「ようこそ！　皆様みなさま！」　

イク「ん？　汝いましは、誰だれ？」　

シロ「左様さよう！　先に、名を名乗るのが、筋すじにござろう！」　

女人にょにん「これは、これは、申し訳ありません。私は『お弁べん』と申もうします。この地で、潜かづき女めを致いたしております。」　

ワッコ「潜かづき女め？」　

ひばり「海女あまのことよ。」　

弁べん「左様さようにございます。そして、こちらの鮑あわびを捧ささげ奉たてまつりまする。」　

鮑

イク「どれどれ・・・。う・・・うまい！」　

マス子「ほっぺたが、落ちそうですねぇ？」　

カキン「姉上？　ここで、決まりですな？」　

ワッコ「そうじゃな。」　

弁べん「何を、お決めになられたのですか？」　

ワッコ「弁べんよ・・・。私は、この地の潜かづき女めたちを、湯貴ゆきの潜かづき女めに定さだめたいと思うておる。」　

弁べん「湯貴ゆき？」　

ロミ子「アマ様の朝あしたの御饌みけ、夕ゆうべの御饌みけを、捧ささげ奉たてまつる務つとめにござりまするよ。」　

弁べん「えっ？　そんな・・・畏おそれ多おおいことにございます。」　

イク「そんなこと言わないで・・・。僕からも、御願いしたい。」　

弁べん「さ・・・されど・・・。」　

弁べんは、どうするのであろうか？　

次回につづく