JW589 日葉酢媛、逝く
【垂仁経綸編】エピソード11 日葉酢媛、逝く
第十一代天皇、垂仁天皇の御世。
垂仁天皇こと、活目入彦五十狭茅尊(以下、イク)が、殉死を禁じて、二年の歳月が流れた。
すなわち、西暦1年、皇紀661年(垂仁天皇30)1月6日。
ここは、纏向珠城宮。
「イク」は、二人の皇子を呼び出していた。
五十瓊敷入彦(以下、ニッシー)と、大足彦忍代別尊(以下、シロ)である。
ニッシー「父上? どうしたの?」
イク「うん。汝たちが望む物・・・それを教えてくれないかな?」
シロ「言えば、望む物をいただけるのですか?」
イク「その通りだよ。何でも、言ってよね。さあ、何が欲しい?」
ニッシー「じゃあ・・・。僕は、弓矢が欲しい!」
イク「えっ? 弓矢で、いいの?」
ニッシー「うん。戦には、弓矢が、要り様でしょ? だから、弓矢が欲しいんだよね。」
イク「い・・・戦?」
ニッシー「父上も、知ってるでしょ? 僕は、丈夫の道を歩むつもりだから・・・。」
イク「武人に、憧れてるの?」
ニッシー「当たり前じゃん! 僕には、四道将軍の血が、流れてるんだよ?」
イク「えっ?」
ニッシー「曾祖父は、大彦命。祖父は、丹波道主王。四人の内、二人の血を受け継いでいるんだよ? 丈夫の道を歩まないなんて、そんな馬鹿な話は無いよね?」
イク「なるほど・・・。オリジナル設定で、若日子建吉備津日子こと『タケ爺』の弟子になってたのは、そういうことだったんだね?」
ニッシー「その通り! タケ先生は、四道将軍の一人だからね!」
イク「そ・・・それで・・・『シロ』は、何が欲しいの?」
シロ「我は、大王の位をいただきたく存じまする。」
イク「分かった・・・。『シロ』は、必ず、僕の跡を継ぐように・・・。」
シロ「かしこまりもうした。」
ニッシー「『シロ』も、馬鹿だなぁ。」
シロ「なにゆえに、ござりまするか?」
ニッシー「大王になったら、国中(奈良盆地)から、出られないんだよ? 遠征とか、出来ないんだよ?」
シロ「そのようなことは、ありませぬぞ。」
ニッシー「何、言ってんだよ。父上も、おじいさまも、一歩も国中から出てないでしょ?」
シロ「兄上は、七代目様を御存知ありませぬのか?」
ニッシー「あっ!」
イク「七代目、孝霊天皇だね? たしか、七代目は、稲葉(現在の鳥取県東部)や、隠伎(現在の隠岐の島)、伯伎(現在の鳥取県西部)に遠征されてるね。」
ニッシー「そ・・・そうだった・・・。忘れてた・・・。」
シロ「七代目様は、我の憧れとする御方にござりますれば、我も、そのような大王になりたいと思うておりまする。」
イク「お・・・穏便にね・・・(;^_^A」
ニッシー「なぁ? 『シロ』? 僕も・・・やっぱり・・・大王が、いいなぁ・・・なんてね(;^ω^)」
シロ「綸言、汗の如し・・・にござりまするぞ。兄上。」
イク「一度、言ったことは、汗のように、戻すことは出来ないってことだね。」
ニッシー「わ・・・分かってるよ! 言ってみた、だけだよ!」
こうして、王位を継ぐ者が決まったのであった。
そして、更に、二年の歳月が流れた。
西暦3年、皇紀663年(垂仁天皇32)7月6日。
大后の日葉酢媛(以下、ひばり)が、最期を迎えようとしていた。
イク「ひ・・・ひばり・・・。そんな・・・(´;ω;`)ウッ…。」
ひばり「大王・・・。お許しくださいませ・・・。」
子供たちが、次々に声をかけていく。
ニッシー「嫌だ! そんなの、嫌だ!」
シロ「大后・・・(´;ω;`)ウッ…。」
ダッコ「定めとはいえ、あんまりです・・・(´;ω;`)ウゥゥ。」
カキン「嗚呼! どうして、こんなことに!」
ホームズ「義母上・・・。我・・・再び・・・母を失くす・・・悲しい・・・(´;ω;`)ウッ…。」
ひばり「ホームズ・・・。この子たちのこと、頼みますよ・・・。」
ホームズ「はい・・・。」
ニッシー「台本を書き換えることって、出来ないの?!」
イク「そ・・・そんな、無茶な・・・。」
シロ「母上・・・。何か、言い残すことは、有りませぬか?」
ひばり「ワッコに・・・もう一度だけ・・・会いたかっ・・・ガクッ。」
イク「ひ・・・ひばりぃぃ!!」
子供たち「母上!」×5
大后の突然の死であった。
つづく
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