JW636 四人の賊
【景行征西編】エピソード7 四人の賊
第十二代天皇、景行天皇の御世。
西暦82年、皇紀742年(景行天皇12)9月。
ここは、崗国。
二千年後の福岡県北九州市の八幡西区周辺。
三人の男が、先に筑紫(今の九州)に派遣された。
すなわち、多の臣の武諸木(以下、モロキ)。
国前の臣の菟名手(以下、ウナ)。
物部の君の夏花である。
男たちは、崗県主と共に、福岡県田川市夏吉を治める魁帥(首長のこと)、神夏磯媛と語らっていた。
カンナ「アタイたち、すごく困ってんのよ。」
ウナ「なるほど! 賊を鎮定せねば、ならぬのじゃな?」
カンナ「そうよ。賊が、いっぱいなのよ!」
モロキ「して、その賊とは、どのような奴原なのじゃ?」
カンナ「一人目は、鼻垂よ。恣に大王の名を騙り、山谷に入って人を集め、菟狭の川上に屯してるわ。」
夏花「大王の名を騙るとは、許し難し!」
カンナ「作者は、大分県宇佐市の駅館川の上流じゃないかって、考えてるみたいね。」
ウナ「その名については、我も知っておる。手強い相手じゃ。」
モロキ「そうか・・・。汝は、国東半島の豪族であったな?」
ウナ「うむ。まことに、許し難き賊なのじゃ!」
カンナ「二人目は、耳垂よ。この賊は、貪り食って、しばしば人々を襲い、奪い取ってるのよ。御木の川上に居るわ。」
夏花「御木の川上?」
カンナ「作者は、大分県中津市の山国川上流じゃないかって、考えてるみたいね。」
県主「そげんとこにも、賊が居ると?」
カンナ「仕方ないでしょ。いるのよ。」
ウナ「うむ。悔しいが、地元の豪族たちでは、手も足も出なかったらしい・・・。」
モロキ「作者のオリジナル設定を盛り込むでない!」
ウナ「されど、このままでは、我ら、地元の豪族が、何もしてなかったように思われるであろう? それでは、癪に障るのじゃ!」
モロキ「分かった、分かった・・・。して、これで全てか?」
カンナ「まだまだ、いるわよ。三人目は、麻剝よ。密かに徒党を集めて、高羽の川上にいるわ。福岡県田川市の彦山川上流じゃないかって、考えられてるわ。」
県主「すんまっしぇん。『おい』も、賊の討伐を頑張っとうよ。ばってん、麻剝は、強かけん・・・。」
夏花「別に、責めてはおらぬ。」
カンナ「四人目は、土折猪折よ。緑野の川上に隠れ住み、山川の険しいのを頼って、多くの人々から奪い取ってるわ。」
県主「福岡県北九州市の紫川上流と考えられとうよ。ちなみに、こっちも強かけん・・・。」
モロキ「分かった、分かった・・・。して、これで、全てじゃな?」
カンナ「これで、全てよ。」
夏花「他に、申し伝えることはないか?」
カンナ「そうね・・・。この四人の根城は、要害の地で、輩を多く従え、もはや、魁帥と言っても、過言ではない力を持ってるわ。」
ウナ「悔しいが、認めねばならぬ。」
カンナ「アタイは、ヤマトが来ると聞いて、アイツらを説き伏せようと試みたんだけど、四人とも、ヤマトには従わぬと言ってたわ。」
モロキ「恐れを知らぬと見ゆるな・・・。」
カンナ「とにかく、早く討ち滅ぼしてちょうだい! 今こそ、そのときよ!」
ウナ「安心せよ。間もなく、大王の率いる兵たちが参る。きゃつら、大人数を見て、慌てふためくであろうな。」
モロキ「いや、大王が参る前に、仕留めておこう。」
ウナ「なっ! なにゆえじゃ?」
モロキ「此度の御幸は、あくまで、熊襲に相対するためのモノ・・・。兵が減れば、それだけ、熊襲が利することとなる・・・。それに・・・賊の鎮定なれば、我らで足りると思うが、どうか?」
夏花「兵の数に頼らず、賊を屠ると申されまするか?」
県主「ちょ、ちょ、待ちんしゃい! どげんすっとや?」
モロキ「策を用いて、これを滅ぼさん。」
カンナ「策? どんな策なの?」
モロキ「まずは、麻剝を招く。直ちに、使いを送れ。」
賊を招くとは?
次回につづく
この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?