JW700 艫綱について
【景行征西編】エピソード71 艫綱について
第十二代天皇、景行天皇の御世。
西暦88年、皇紀748年(景行天皇18)7月。
景行天皇こと、大足彦忍代別尊(以下、シロ)の一行は、還幸(天皇が帰宅すること)と銘打って、筑紫(今の九州)の巡幸(天皇が各地を巡ること)をおこなっていた。
そして、一行は船路を進んでいたのであった。
シロ「やはり、船は速いのう。」
夏花「されど、もう、そろそろ、陸に上がられては?」
シロ「何じゃ? 夏花? 船酔いか?」
夏花「く・・・悔しいですが、作者の陰謀で・・・うっ!」
シロ「よし。では、船を停めようではないか。」
するとそこに、邑人がやって来た。
邑人(に)「ようこそ! 磐田杵の村へ!」
えっさん「二千年後の地名で言うと、何処になりますのや?」
邑人(ほ)「佐賀県白石町の沿岸だと思いますが、詳しくは、わかりません。」
シロ「ともかく、艫綱を『カシ』に繋げよ。」
リトル(7)「ともづな? カシ?」
タケ「艫綱とは、船に備え付けられた綱のことじゃ。」
たっちゃん「船尾・・・すなわち、船の後ろ側を御覧くだされ。綱が巻かれておりましょう?」
リトル(7)「あっ! ホントだ。船の縁に、木の棒が、くっ付いていて、そこに綱が巻かれておる。」
百足「して、この綱を伸ばし、『カシ』に巻き付けるのでござる。」
リトル(7)「『カシ』というのは、水の中から突き出ている、木の棒のことか?」
小左「その通りにござる。『カシ』とは、船を繋留するための杭のことですぞ。」
リトル(7)「杭? 木の棒ではないのか?」
モロキ「地中に打ち込んだ、木の棒のことを杭と言うのでござるよ。」
リトル(7)「なるほど・・・。そして、船尾の木の棒と、陸の『カシ』が、綱でつながって、船が流されなくなるのだな?」
おやた「左様。ちなみに、船首・・・すなわち、船の前側に綱があったら、どうなると思いまする?」
リトル(7)「ん? 船尾と船首で、何か変わるのか?」
おやた「名前が変わるのでござるよ。」
リトル(7)「えっ!?」
おやた「さぁ、皇子。船首の場合、何という名前になると思います?」
リトル(7)「そのようなこと言われても・・・。」
ナッカ「ちょっと! おやた! 皇子に意地悪しちゃダメでしょ! ちなみに、船首の時は、舳綱っすよ。」
リトル(7)「そ・・・そうか・・・。されど、なにゆえ、綱の場所が変わると、名前も変わるのだ?」
おやた「変えねばならぬ訳と申されましても・・・。」
ナッカ「変えたかったから?」
リトル(7)「これだから、大人は・・・。」
舟木「あっ!」
シロ「ん? 如何した?」
舟木「あの『カシ』から、水が湧いておりまする。」
シロ「何?」
リトル(7)「あっ! ホントだ! 『カシ』から、冷たい水が出ておる!」
いっくん「地下水が、杭の中を通って、外に出てきたっちゅうこと? 有り得へん。絶対、有り得へん。」
野見「ロマンということでは?」
リトル(7)「うわっ。出たっ。ロマン!」
もち「あのう・・・。こんげな時に、申し訳ないんやが、船が、上へ上へと、昇っちょるんですが・・・。」
ワオン「たしかに、船が上がっておりまするな。」
シロ「どういうことじゃ?」
タケ「船が、上がっておるのではない・・・。陸が生まれておるのじゃ。」
リトル(7)「えっ? 陸?」
邑人(に)「陸が・・・広がっていく・・・。」
夏花「ついには、島になってしまいましたぞ!」
邑人(ほ)「これが、神業ってヤツなんですかね?」
シロ「そ・・・そうかもしれぬのう。」
突然、現れた島。
一行の運命や、如何に・・・。
つづく