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JW699 琴の楠
【景行征西編】エピソード70 琴の楠
第十二代天皇、景行天皇の御世。
西暦88年、皇紀748年(景行天皇18)7月。
景行天皇こと、大足彦忍代別尊(以下、シロ)の一行は、還幸(天皇が帰宅すること)と銘打って、筑紫(今の九州)の巡幸(天皇が各地を巡ること)をおこなっていた。
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そして、疲れ切った人々が住む邑に辿り着いたのであった。
シロ「邑の者よ。如何したのじゃ?」
邑人(い)「苦しんでいるのですぞ。」
シロ「ん?」
邑人(ろ)「荒ぶる神々によって苦しんでいるのですぞ。」
たっちゃん「何か災いが齎されておるのか?」
邑人(は)「そんな感じですぞ。伝承に詳しいことが書かれてないので、これくらいしか言えないんですぞ。」
リトル(7)「父上! 荒ぶる神々をやっつけよう!」
シロ「やっつけるのではない。鎮めるのじゃ。」
リトル(7)「鎮める?」
シロ「神々を祀り、これを鎮めん。」
モロキ「社を建てられると?」
シロ「その通りじゃ。」
百足「して、建てられた社は、二千年後も鎮座しておりまするのか?」
シロ「しておるぞ。その名も、櫛田宮じゃ。」
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真白「ワンワン!」
タケ「ふむ・・・。鎮座地は、佐賀県神埼市の神埼町神埼と申しておるぞ。」
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シロ「では、社を建てる前に、行宮を設けようぞ。」
いっくん「行宮を建てんと、あかんのですか?」
シロ「社を建てるのじゃ。時がかかるは、必定であろう?」
いっくん「な・・・なるほど。」
野見「こうして、行宮が建てられた邑は、宮処の郷と呼ばれるようになりもうした。」
シロ「二千年後の地名で申せば?」
野見「佐賀県神埼市千代田町の西南部地域と言われておりまする。」
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小左「ん? 神埼町神埼では、ありませぬのか?」
舟木「ロマンということでは?」
リトル(7)「出たっ。ロマン!」
夏花「ちなみに、神埼の地名も、災いが収まったことから『神幸』と称したことが起源とされておりまする。」
邑人(い)「ちなみに、参道の横には、推定樹齢1000年の神木『琴の楠』が有るのですぞ。」
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おやた「琴? なにゆえ、琴なのじゃ?」
邑人(ろ)「大王が、琴を地中に埋めたそうですぞ。」
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シロ「我が埋めた? なにゆえじゃ?」
邑人(は)「ロマンですぞ。」
リトル(7)「うわっ。また出たっ。」
えっさん「荒ぶる神々を鎮めるためでは、あらしゃいませんか?」
シロ「そうかもしれぬな。」
いっくん「ほんで、琴を埋めたところから、木が芽生えたっちゅうことやね?」
邑人(い)「そういうことですぞ。」
舟木「では、荒ぶる神々も鎮まったことですし、次は、何処に向かわれまするか?」
シロ「うむ。船路を進もうぞ。」
ナッカ「海に出るんすか?」
シロ「そうじゃ。」
もち「大王? 何言うちょるんや? 船は、どこに有るんや?」
するとそこに、一人の人物がやって来た。
水沼県主の猿大海(以下、ルオ)である。
ルオ「お久しぶりにござりまする。エピソード695以来の登場ですぞ。」
もち「なして、汝が、ここに居るんや?」
ルオ「みなさん、よく見てください。この筑後川の向こう岸を・・・。」
夏花「あっ! 水沼県!」
ルオ「左様。福岡県大木町や大川市の辺りになる、水沼県は、宮処の郷の向かい側なのですぞ。」
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たっちゃん「・・・ということは、汝が支度したと?」
ルオ「その可能性も否めますまい?」
用意された船。
一行が、次に向かう地は?
次回につづく