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JW493 国方姫来訪

【垂仁天皇編】エピソード22 国方姫来訪


第十一代天皇、垂仁天皇(すいにんてんのう)の御世。

紀元前26年、皇紀635年(垂仁天皇4)9月。

謀反(むほん)を計画する、狭穂彦王(さほひこ・のきみ)は、和珥彦国葺(わに・の・ひこくにふく)(以下、くにお)の屋敷を訪ねていた。

系図(狭穂彦、くにお)

狭穂彦「一昨年(おととし)、任那(みまな)にて、赤絹(あかぎぬ)が奪われた一件は知っておろう? 新羅人(しらぎ・びと)に奪われた一件じゃ。」

地図(赤絹強奪事件:エピソード477)

くにお「ヤマトより贈った赤絹が奪われた件にござりまするな? それが何か?」 

狭穂彦「任那は、ヤマトに与(くみ)した国。その国の赤絹が奪われたのじゃ。これでは、ヤマトの面目(めんもく)は丸つぶれ。ヤマトと新羅は、いがみ合っていると考えるべきであろう。」 

くにお「仕方ありますまい。新羅は、ヤマトと誼(よしみ)を結ぶつもりは無いようにござる。」 

狭穂彦「それよ・・・。にも関わらず、昨年、大王は、新羅の王子を迎え入れた。エピソード487で語られた通り、新羅の王子が、亡命者であったなら・・・。新羅は、快(こころよ)くは、思うておらぬであろう。ことによっては、戦(いくさ)になるやもしれん・・・。」 

くにお「そのようなこと・・・有り得ませぬ。王子一人を迎え入れたからといって・・・。」 

狭穂彦「されど、王子が、ヤマトに亡命したとあらば、次は、新羅の面目が丸つぶれ・・・。有り得ぬとは言い切れぬぞ? そして、各地の豪族は、それを恐れておるはずじゃ。」 

くにお「そのような『記紀』に書かれておらぬことを・・・。」 

狭穂彦「されど、各地の豪族は、嫌(いや)がるはずじゃ。あの者たちは、己(おのれ)の身を守ることだけを考えておる。出雲(いずも)との戦にて、豪族たちが人数を出したのは、出雲が弱り切っていたからじゃ。されど、新羅は、そうは、ゆかぬぞ・・・。」 

くにお「まだ、戦になると決まったわけではござりますまい。それに、大王が、戦を起こすような御仁(ごじん)では無いこと、狭穂彦様も、よく御存知(ごぞんじ)のはず・・・。」 

狭穂彦「そんなことは分かっておる。されど、各地の豪族は、そうは思うておらぬ。このままでは、せっかく纏(まと)まったヤマトが、再び分かれてしまう。それだけは止めねばならぬ。それに・・・。今が、高貴なる血を継ぐ、我(われ)が、大王となる、絶好の機会なのじゃ!」 

くにお「狭穂彦様というか、作者の言いたいことは分かりもうした。されど、拙者(せっしゃ)は、同心(どうしん)できませぬ。聞かなかったことに致しましょう。『記紀』に書かれておらぬ上は、致(いた)し方ござらぬ。」 

狭穂彦「そうか・・・。されど、我(われ)が大王となった時には、そうも言えぬであろうがな・・・。」 

こうして、二人の会話を通じて、作者の妄想が語られたのであった。

それから、しばらくの時が流れ、年が明け、紀元前25年、皇紀636年(垂仁天皇5)となった。

そんなある日・・・。

大后(おおきさき)の狭穂姫(さほひめ)(以下、さっちん)の元に、垂仁天皇の姉、国方姫(くにかたひめ)(以下、ニカ)が来訪していた。

系図(さっちん、ニカ)

ニカ「『記紀(きき)』に、このような場面は無いのですが、来てしまいました。」 

さっちん「義姉上? 如何(いかが)なされたのです?」 

ニカ「近頃、大后の顔色が優(すぐ)れぬので、案(あん)じておったのです。何か、気がかりなことが有るのではありませぬか? 大王(おおきみ)と喧嘩(けんか)をしているとか?」 

さっちん「えっ? そ・・・そのようなこと、有り得ませぬ。ま・・・まさか、大王と私が・・・。」 

ニカ「心に留(とど)めず、口にした方が、スッキリしますよ? 姉の私に、何でも言いなさい。」 

さっちん「で・・・では、申しまする・・・。」 

「さっちん」は真実を語るのであろうか? 

次回につづく

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