JW514 丹波の娘たち
【垂仁天皇編】エピソード43 丹波の娘たち
第十一代天皇、垂仁天皇(すいにんてんのう)の御世。
紀元前15年、皇紀646年(垂仁天皇15)2月10日。
ここは、纏向珠城宮(まきむくのたまき・のみや)。
垂仁天皇こと、活目入彦五十狭茅尊(いくめいりひこいさち・のみこと)(以下、イク)は、亡き丹波道主王(たにわのみちぬし・のきみ)の娘たちを呼び寄せた。
娘たちとは、下記の通り。
日葉酢媛(ひばすひめ)(以下、ひばり)。
真砥野媛(まとのひめ)(以下、マー)。
渟葉田瓊入媛(ぬばたにいりひめ)(以下、バタ子)。
薊瓊入媛(あざみにいりひめ)(以下、あざみ)。
竹野媛(たかのひめ)(以下、たかのん)である。
そして、彼女たちの母、河上摩須郎女(かわかみのますのいらつめ)(以下、マス子)も同席するのであった。
イク「初めまして。僕が大王(おおきみ)だよ。」
ひばり「丹波(たにわ)より罷(まか)り越(こ)しました。どうぞ、よろしく御願い致しまする。」
イク「う・・・うん。で・・・でも、まだ、誰を妃にするか・・・決めたわけじゃないんだよね。」
するとここで、大臣(おおおみ)の尾張建諸隅(おわり・の・たけもろすみ)(以下、ケモロー)が叫んだ。
ケモロー「何を言うとるがや! 決めたわけじゃない? どういうことだがや?!」
イク「五人全員にしなくても、いいんじゃないかって・・・。」
マス子「ちょっと待ってください。五人全員と仰(おっしゃ)られたのは、大王ですよ? 気が変わったんですか?」
イク「き・・・気が変わったというか・・・やっぱり、全員を妃にするのは酷(ひど)い話なんじゃないかなぁって・・・。」
マー「わざわざ呼びつけて、気が変わったでは困ります!」
バタ子「そうよ! けっこう大変な道のりだったのよ!」
あざみ「ちょっと幻滅(げんめつ)しちゃったんですけど・・・。」
たかのん「まあまあ、姉上様・・・。まずは、大王の話を聞いてみましょう。」
イク「ま・・・まあ、何と言うか、僕にも選ぶ権利が有るよね?」
ケモロー「権利? そんなモノ、我(われ)らの時代には無いがや!」
イク「と・・・とにかく、よく吟味(ぎんみ)する必要が有ると思うんだ。うん。国の支えとなる人物であるかどうか、よく見定めて・・・。」
マス子「ちょっと待ってください! うちの娘たちは、品物じゃないんですよ?」
イク「わ・・・分かってるよ。でもね。そういうことになったんで、よろしく!」
こうして、誰を妃にするか吟味されたのであった。
そして、結果発表がおこなわれた。
同年8月1日のことである。
イク「・・・というわけで、大后(おおきさき)が決まったよ! 大后となったのは『ひばり』だよ!」
ひばり「お・・・大后となりました。一所懸命に務めさせていただきまする。」
イク「続いて、妃となったのは・・・。」
一同「・・・・・・。」×多数
イク「『マー』と『バタ子』と『あざみ』だよ!」
ひばり「ちょっと待ってください。どうして『たかのん』だけ、外されたんですか?」
ケモロー「大王! これは、どういうことだがや!? 馬鹿にするにも、ほどがあるで!」
イク「だ・・・だって・・・。」
たかのん「姉上・・・。おじいさま・・・。致し方ありませぬ。大王が、お決めになったことなのですから・・・。」
ひばり「たかのん・・。汝(なれ)は、それでいいの?」
マー「そうよ。汝(なれ)だけ選ばれないなんて、こんなのおかしいわよ!」
バタ子「大王? どうにかならないのですか?」
あざみ「私たち姉妹を切り離す、おつもりですか?」
たかのん「姉上様・・・。良いのです。私には、丹波を治める方を婿(むこ)に迎えるという務めが有るのですから・・・。」
イク「そ・・・そうそう。そういうこと。やっぱり丹波を治める跡継ぎが必要だと思ったんだよ。」
こうして「たかのん」だけが、選ばれなかったのであった。
つづく