JW607 賀古の松原
【垂仁経綸編】エピソード29 賀古の松原
第十一代天皇、垂仁天皇の御世。
日嗣皇子の大足彦忍代別尊(以下、シロ)は、播磨稲日大郎姫(以下、ハリン)を妻に迎えようと決意した。
そして、針間国(現在の兵庫県南部)に向かう。
それを聞いた「ハリン」は、父親の若日子建吉備津日子(以下、タケ)や、妹の伊那毘若郎女(以下、イナビー)が見守る中、驚きの声を上げるのであった。
ハリン「きゃぁぁぁ! シロ様!(⋈◍>◡<◍)。✧♡。」
イナビー「姉上・・・。そっちの驚きなんですね?」
ハリン「ごめんね・・・『イナビー』。汝が皇子のことを慕っているのは、知ってるけど、こればっかりは譲れないのよ。」
イナビー「姉上? 御心配くださりますな。私たちの時代は、通い婚。どこに通おうと、いつ通おうと、特に障りございませんわ。」
タケ「二人とも、もう良い。して、『ハリン』よ。何処に逃げるのじゃ? 探しにくい処では、話にならぬぞ。」
ハリン「南毗都麻の島に逃げようかと・・・。」
タケ「うむ。そこならば、目と鼻の先。良いのではないか。」
するとそこに、異母兄の武彦(以下、たっちゃん)がやって来た。
たっちゃん「エピソード483以来の登場じゃ!」
ハリン「あっ! 義兄上様! 支度が整ったのですね?」
たっちゃん「うむ。いつでも舟を出すこと能うぞ。早う致せ。皇子が着いてしまうぞ。」
ハリン「は・・・はいっ。」
イナビー「姉上! お気を付けて!」
こうして、姫は島に渡った。
一方、「シロ」の一行は、狩りをおこなっていた。
シロ「我は『ハリン』を妻とするため、針間まで来ておるのじゃぞ? なにゆえ、狩りなど行っておるのじゃ?」
ここで、皇子に付き従う、須受武良の首(以下、スズム)と、伊志治(以下、イッシー)が吼えた。
スズム「作者の陰謀にござりまする!」
イッシー「左様! 『播磨国風土記』に書かれた地名を紹介するのだとか・・・。」
シロ「なんとしたことぞ。」
スズム「あっ! そんなことを申しておったら、鹿が、一頭、現れましたぞ。」
シロ「丘へと駆けのぼって行くぞ。」
スズム「そして『比々』と鳴きましたぞ!」
イッシー「そこで、この丘を、日岡と名付けたのじゃ。兵庫県加古川市の加古川町大野にある、加古川東岸の小さな丘であると、言われておりまするぞ。日岡山公園が有る処じゃ。かつては、氷丘村が有ったとの由。」
スズム「では、皇子。この丘に登り、四方を望んでくださりませ。」
シロ「の・・・望めば良いのじゃな?」
イッシー「皇子? 如何にござりまするか?」
シロ「うむ。この地は、丘も原も、甚だ広い。また、この丘を見ると、まるで鹿児のようじゃな。」
スズム「鹿児とは、鹿のことにござる。」
イッシー「こうして、この地は、賀古郡と呼ばれるようになったのじゃ。二千年後の播磨町周辺のことじゃ。」
シロ「よし! 解説は済んだな? では、賀古の松原に向かうぞ。」
イッシー「加古川東岸の海辺に連なる松原のことじゃ。後の世に、尾上の松として、知られることになるぞ。加古川市尾上町長田の尾上神社に、松が残っておるようじゃ。」
スズム「されど、なにゆえ、松原に?」
シロ「隠れやすい処だと思うたのではないか?」
イッシー「もはや、ロマンじゃ。」
そこに、わざとらしく「タケ」、「たっちゃん」、そして「イナビー」がやって来た。
白い犬も連れている。
タケ「犬の散歩は、松原に限る。のう? たっちゃん?」
たっちゃん「左様にござりまするな。ところで、犬の名は、如何致しまするか?」
タケ「うむ。オリジナル設定ではあるが、『ハリン』は、真白と呼んでおったぞ。」
イナビー「あれ? 真白? どうしたのです? 海の向こうの島に向かって、吼えちゃって・・・。」
シロ「分かりやすい流れになっておりまするが、『播磨国風土記』に従って、尋ねますぞ。この犬は、誰が飼っておる犬なのじゃ?」
スズム「すなわち『ハリン』様の犬にござりまする。」
シロ「よくぞ、告げ教えてくれた。これよりは、告の首と名乗るが良い。」
スズム「ありがたき幸せ。」
シロ「皆の者! 姫は、目の前の島に居るぞ。直ちに渡るのじゃ!」
タケ「皇子よ。そう逸るでない。まずは、地名紹介じゃ。」
シロ「えっ?」
どうなることやら・・・。
次回につづく