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食と健康について考える

最近、Netflixで『DON'T DIE: "永遠に生きる"を極めし男』というドキュメンタリーが公開されているのをご存知だろうか?
アメリカの起業家ブライアン・ジョンソン氏が不老長寿を目指して数億円以上の予算を使って研究チームを立ち上げ、毎日もっとも健康的な生活を実践していくというドキュメンタリーだ。その徹底ぶりが関心を集めて目に留まったのだが、その中でも健康オタクの僕は特に食事が気になった。
ブライアン・ジョンソン氏の食生活はというと、朝イチのトレーニングを終えてからスーパーベジと呼ぶ数キロの野菜を朝食に摂り、午前11時前にはナッツ類を中心とした昼食を済ませて1日の食事を終わりにしていた。食事の献立は完全ヴィーガン食で、動物性食品はサプリメントで摂るコラーゲンのみという徹底ぶりだ。それと毎日数十種類のサプリメントを摂取しているが、それは金銭的にも全部は真似できない。

実は見てはいないんだけど(笑)

菜食をしている僕からすると、信条としてではなく不老長寿のためにブライアンさんがヴィーガン食を選択していることは、健康のためには菜食を中心にすべきだという持論とも一致する。加工肉はもちろん、赤身肉にも発がん性のある可能性が高いとWHOは発表しているし、肉類による炎症性は無視できない。また、ホルモン剤を投与されて不自然に育っている畜産動物から採れる食品全般は健康への懸念が不明瞭な点も含めて避けた方が無難だと思っている。強いて動物性食品を摂るなら、オメガ3脂肪酸が豊富で重金属汚染のリスクが少ない天然の小魚あたりだろうか。
氏が食事を午前中のうちに済ませているのは、16時間断食などで知られるオートファジーの効果を得るためだと予想できる。空腹時に機能するオートファジー(自食作用)によって細胞内の古くなったミトコンドリアやタンパク質を排除することで、若返りを誘発して老化が防げるとの研究結果がよく報告されているからだ。

それで僕も、食事を午前中だけで済ませることにした。まだ実践して2週間だけど、現在のところまでの体感でいえばかなり調子がいい。
夜にお腹を空かせて眠っても朝はあまり空腹の感覚はなく、起床直後に朝食を摂ることはないので朝8時前と午前11時過ぎの2食が1日の食事になっている。時間にすると20時間断食くらいしている。空腹時に糖質を摂取して血糖値の乱高下を起こしたくないので朝食には糖質を控えてナッツ類を摂り、昼食で玄米やオートミールを主食にした豆カレーなどを食べている。合間にプロテインやグリーンスムージー、食後にサプリメント、朝起きてリンゴ酢や天然塩といった感じ。カロリーは2000いかないくらい。

慣れれば腹が減ってしんどいということもなく、力が入らないという感覚もない。なによりも素晴らしいと感じるのは食後の眠気やぼんやりした状態がなく日中ずっと頭が冴えていることだ。筋肉量の低下は懸念されるが、日々ジムでトレーニングをしていても運動パフォーマンス自体にそれほど大きな悪影響は感じない。体重の推移を見ながら必要量のカロリーを確保していこうと考えているが、それで筋肉量の低下を十分に防げるのかどうかは今後判断していきたい。

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人にもっとも近い動物である大型類人猿ヒト亜科のチンパンジー、ボノボ、ゴリラの食性は植物性食品中心であることや、胃酸が弱くて生肉を食べることに適していない身体の作りからも、人類はかなり菜食寄りの雑食動物であると思う。
ヒト亜科の類人猿まで含めれば1000万年以上昔から菜食してきた歴史を踏まえると、進化論的に考えて現生人類が菜食をしてきた過去の人類種から肉食へと身体組成の転換が起こるだけの期間はなく、現代の極端な肉食中心の食生活が人類の健康に寄与するとはとても思えない。
しかしホモ・サピエンス直系の祖先が樹上から大地へと降り立ち、狩猟を行なって肉食するようになってから急激に脳が肥大化していったという説も根強い。栄養学的見地から言えば動物からのみ摂れる栄養素のおかげで脳の発達が起こるとは考えられず、単純に菜食に加えて肉食もするようになったことで摂取カロリーの増加が影響していると考えられる。多くの人が植物性食品よりも動物性食品をより美味しいと感じて好んで食べるのも、ホモ・サピエンス史のほとんど全ての時代において続いてきた狩猟と採集の食生活において狩猟の成功率は低く、狩猟モチベーション維持のために肉を食べることで脳の成功報酬系が強く刺激されるような回路が作られていったからではないだろうか。
高カロリー源の動物を狩れるようになって脳が発達したこと、狩りを成功させるために石器や言語の発展が急速に起こったことを踏まえると、人類史において菜食は進化であり肉食は文化であると言えるのかもしれない。

なので僕は別に肉食文化を否定するつもりは全くない。出アフリカを果たしたグレートジャーニーが寒冷地に定住して狩猟を中心に生活するようになったことや、その中で人類最愛の友である犬と共に暮らすようになったこと、言語によるコミュニケーションを駆使してチームワークを強化して共同体の規模を拡大させていったことなど、否定することなど絶対にあり得ない人類の歴史と肉食は密接に結びついている。

……しかしだ。
80億人にまで膨れ上がった人類の食を賄うには動物食では到底生産が追いつかず、現代の社会問題として畜産業による環境破壊はとても大きな問題になっている。
また、動物の命を利用可能な資源としてしか見做さない畜産形態は現行の社会倫理と大きく矛盾しているし、今後人類が直面する様々な社会問題においても倫理面で尾を引くことになる気がする。もし自分の仮説のように、狩猟をしていた名残りで脳の成功報酬系を刺激するために肉食を必要な栄養以上に美味しく感じるだけならば、いっときの快楽に惑わされずに肉体的にも社会的にも必要な食事を選択することはより進歩的な人間の証左と呼べはしないだろうか。

ヴィーガニズムについて書いた記事はこちら。大作!

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健康の話に戻すと、毎年数億円かけて専門家と研究しているブライアン・ジョンソン氏が健康のために菜食と断食をしていることは大きな意味を持つ。
ホモ・サピエンスの出現から約20万年、あるいは人類の祖先も含めた数百万年の間で、飽食の時代は現代のたった数十年でしかない。飢餓との闘いこそが人類史であったはずだ。そしてその闘いに打ち勝って生き残るために身体は適応してきたのだ。
『運命の女神は勇者に味方する』と古代ローマの詩人ウェルギリウスは言葉を残したが、平和を享受する幸せ者や贅を尽くす奢侈者ではなく、困難に立ち向かう勇者にこそ神は進化と適応という名の力を授けたのだと言える。我々全員の身体の中には勇敢な人類の遺伝子が刻まれていて、勇者になった暁には人智を超えた力が呼び覚ます。逆に言えば困難に打ち勝とうとしなければ力は生まれず、生命力は痩せ細り、引いては健康を損なうとも言えるはずだ。
ちょっとスピ的な言い回しになっちゃったけど、断食による健康効果のエビデンスがいくつも出てきている以上、また運動習慣の必要性や座っていることの不健康さを鑑みても、本来の人類が自然の中で生き抜いてきた姿こそが健康的なのだと思う。

ということで今のところの僕の結論は、大まかにいうと「菜食と断食」こそが人類にとって健康的な食生活だと考えている。
専門家じゃないから(特に断食は)オススメはしないけど、試してみる価値はあると思うので良かったら皆さんも一度やってみては?
ではまた!

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遠藤健太郎 Kentaro Endo
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