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花が教えてくれるから

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とある花が教えてくれる、日々のきらめき
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紫色の関係 | あじさい

紫色の関係 | あじさい

「この写真の紫陽花、本当に綺麗。紫陽花の色、青も紫も大好きすぎて、毎日見ていたい…!」

彼女からのメッセージが飛んできた。

私も紫陽花が好きだ。

でもなんでそんなに惹かれるのだろうか。その夜はなぜかすぐに寝付けなくて、窓を開けて考えた。
蛙が大合唱している。湿気をたっぷり含んだ空気、でも夜になって少し冷やされたそれは、肌にまとわりついても案外気持ち悪くはない。

私は考えた末に、もう一度写真

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遠くをみつめる | チューリップ

遠くをみつめる | チューリップ

2020年GW。これまでにない、黄金のGorogoro Weekとなった。
StayHomeな生活も、慣れたことには慣れてきて、今度は家から出ることが億劫になってきたくらいである。慣れってこわい。それでも、食べないと生きていけないし、食料を求めて近所のスーパーや、コンビニへ、散歩がてら出かける。家の近くにお店が色々と揃っているので、生きるためには困らない。ありがたい。だけどやっぱり、電車に乗って遠

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西向く赤に | ハナミズキ

西向く赤に | ハナミズキ

「東京の街路樹ランキング、1位は“ハナミズキ ”です!」
「ん〜。ハナミズキって…どんな花でしたっけ?」

この生活にならなければ見ることのなかったテレビ番組での掛け合いを半分パジャマで、ぼ〜っと眺める。
さて、「勤務開始」のメールを今日も上司に入れなければ。

テレビの中の他人事と思っていた「在宅勤務」は、あっという間に自分事となった。いまだにまだちょっと、慣れない。

「なるべく出社をしないで

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忘れない、春 忘れられない、春 | 桜

忘れない、春 忘れられない、春 | 桜

どうやら今年の春は、“いつもの”お花見ができそうにないな、テレビから流れるニュースから、世の中に漂う空気から、そう感じ取った。

今年の冬は暖かかった。なんだ、もう春が来たのか、と思った。
だけど、予想もしない、経験したことのない規模の北風が世界に、そして日本にもあまねく吹き荒れて暦の進行に逆らう勢いで、気持ちは冬のように冷え込んだ。

だけど、桜は咲く。下を向いてばかりじゃいられない。
春は、希

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ないものねだり | パンジー

ないものねだり | パンジー

春に咲く桜の花になりたかった
すべての目線を空に向かせて
人の心を前向きにする魔法を持つ
はらり、はらり、と散りゆくその儚さも
まるでドラマの中のヒロインみたい
そんな姿に、憧れる

夏に咲くひまわりになりたかった
宇宙の全ての光と熱が降りそそぐ大地に
しっかり根を張って揺るがない
その、芯の強さ
太陽に負けじと笑うその表情は
あたりをパッと明るく晴らす
そんな姿に、憧れる

秋に咲くコスモスにな

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雪が溶けたら | 水仙

雪が溶けたら | 水仙

身を寄せ合って、噂話?

香水に憧れて振りまくのは、
ちょっと強めの、シャンプーの香り?

他とは違う 特別な私になる憧れ
群れから外れて 居場所を失う恐怖心

何度も、ふたつを天秤にかけて
結局、後者に勝てないまま
日々を過ごす、ありふれた、女子中学生。

水仙の花は、時にそんなふうに目に映る。

少しうつむきながら
鏡の中の私の顔をじーっと、覗き込む。

クラスでいちばん、かわいいあの子、

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春告草とまあるい背中 | 梅

春告草とまあるい背中 | 梅

春告草(はるつげくさ)

ー梅は、こんな名前も持っているらしい。

春を告げる草、というのはなんとも聞こえはいいが、
梅が咲く頃は、現代人にとってはまだ冬のただ中である。

外に出るのは億劫だし、
こたつで丸まっていたいし、
あったかいお布団にくるまっていたい。

それに、外もモノクロ。
カメラを持って出かけても、
ちょっとつまらない。

だけど、
寒さを言い訳にするのにもなんだか飽きて、
冬の冷

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音と言葉と 意味と記憶と | 沈丁花

音と言葉と 意味と記憶と | 沈丁花

あわき ひかりたつ にわかあめ
いとし おもかげの じんちょうげ
あふるる なみだの つぼみから
ひとつ ひとつ かおりはじめる

じんちょうげ、って多分植物かなにかなんだろうな、と
この歌を聴いて以来、ぼんやり思っている。

言わずと知れた名曲、
ユーミンこと松任谷由実さんの「春よ、来い」の歌い出し。

この歌との出会いは、父の車の中だった。

雪国の私のふるさと、
冬の楽しみの一つが、父と休日

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