よく使われがちな「戦略」ってなんだ?〜マネプロ#8
こんにちは!
DeNAでHRビジネスパートナーをしている坪井(@tsubot0905)です。
マネジメントの進化を探求するnote
『マネプロ』は今回が第8回目です。
このマネプロnoteのシリーズでは、5分で分かりやすく学べるシンプルな構成と、相手とのコミュニケーションで使えるようなシンクロしやすい問いを意識した内容を心がけています。
さて、今回からマネプロ戦略編の始まりです。
戦略をどのようにマネジメントへ反映して
期待した成果を得るかは重要なテーマです。
また、戦略はつくる人よりも
つかう人の方が多いもの。
それを踏まえ、マネプロ戦略編では
・いかに戦略と向き合うか?
・どのように戦略を活かすか?
といった戦略をつかう人が参考にできる
考え方や内容をお届けしたいと思います。
今回のテーマは「戦略とは?」からスタート。
目次はこちら!
<戦略を使えるように>
マネジメント系の本や記事を読むと何かにつけ「戦略」という表現がでてくる傾向にあると感じます。「〇〇戦略」「戦略的〇〇」といった具合です。
「戦略」と付くだけで頭で考えてる感、すごいことをやってる感が出せて、ついつい簡単に表現してしまうのかもしれませんね、、
それで、結局「戦略」ってなんなのでしょう?
こうして改めて問われると答えられない方も多いのでないでしょうか。もし答えに詰まってしまったのであれば、あなたのいう戦略は、実は戦略ではないのかもしれません。
というわけで、
まずは「戦略」の言葉が持つ意味。
ここから再確認しましょう。
「戦略」についての解像度・理解度を上げることで、戦略の実現性はグッと高まるはずです。(マネプロ#2でお伝えした通り、マネジメントの機能の一つは戦略を実現することでしたね)
<戦略とは何か?>
軍事用語である戦略という言葉をマネジメントの世界に持ち込んだのは「経営者の役割(1938年)」の主著であるチェスター・バーナードだと言われています。
戦略の歴史から言葉の意味を読み解くため
Wikipediaで戦略の定義を調べてみると
色々と書いてありましたが、途中の説明に
戦略の定義は非常に多様であり、
一概に言うのは難しい。
と一文書かれていました・・・
Wikipedia様でも説明が難しいのだから、戦略とは難しい概念なんだな…と改めて感じますよね。(ちなみに、経営戦略の定義で調べると、組織の中長期的な方針や計画を指す用語である、とのこと)
突然ですが、この定義が難しい戦略について
"戦略ってなあに?"
と中高生に聞かれたらなんと答えますか?
経営方針、外部環境、競争優位、資源配分、事業計画、価値提供、差別化、ビジネスモデル…そういった言葉を並べて説明しても中高生には分かりづらいものですよね。
私は戦略をシンプルに表現するなら、
戦略は「勝つための方程式」だと伝えます。
ただし、方程式とは言っても
「正しい答え」があるわけではありません。
マネプロ#1で「マネジメントにライトアンサーはない」と述べましたが、戦略も同じです。
ライトアンサーではなく、これで勝つんだ!という意思のあるベストアンサーを追求して勝利の方程式をつくることが戦略には大事、という話です。
<戦略の足し算・引き算・かけ算>
戦略を方程式と喩えたので
+-×を使って考えるイメージをお伝えします。
まずは、かけ算。
今やっていること、できることに「何を掛け合わせて勝つのか?」という発想です。
わかりやすい例でいうと、
俺の株式会社の「俺の〇〇」シリーズが挙げられます。
俺の株式会社は2012年秋、新橋に「俺のイタリアン」一号店をオープンさせ、高級食材をふんだんに使った料理が破格で食べられると全国的に話題となり、瞬く間に大人気レストランの仲間入りをはたしました。
「ミシュラン星付きのシェフ」×「高級料理店の1/3の価格」×「1日3回転以上」の掛け合せによって繁盛店となり、この勝ちパターンを軸にイタリアン以外にも業態を広げた事業を展開しています。
続いて、足し算。
今やっていること、できることに「何を足して勝つのか?」という発想です。「何を積み上げていくのか」と考えても良いかもしれません。
たとえば、GE社でCEOだったジャック・ウェルチは「世界でシェアが1位か2位になれる事業しかやらない」という姿勢で事業の選択と集中を行いました。
結果、GE社の組織改革は成功し「GEがやっている製品はすべて最高峰」という信頼が積み上がって、ジャック・ウェルチは“20世紀最高の経営者”とも呼ばれるようになりました。
最後に、引き算。
今やっていること、できることから「何を引いて勝つのか?」「何をやらないか?」と発想します。
わかりやすい例は、Twitter。140字以上つぶやけないという制限を設けたサービスをずっと続けています。ご存知のとおり、投稿の気軽さとアクティブさが魅力のサービスとなる勝因につながっています。
このように+-×を使って、自分達のビジネスが勝つシナリオを構想すること=戦略である、というのが持論です。
<戦略という方程式の解釈>
ここまでのことをふまえて、戦略の解釈を図解するとこんな感じ。
・アウトプット:目指す成果の具現化アウトプットには事業や組織として成功したい基準を示すことが求められます。中長期の設定された期間において、目指すアウトプットを示すことでゴールが生まれます。
アウトプットのゴール設定により、ゴールからの逆算が可能になり、組織の意思決定や優先順位に大きな影響を与えます。
・スループット:重要項目の組み合わせ
戦略という言葉には隠された2つの”略“するプロセスがあります。それは「攻略と省略」です。
攻“略”は攻めの活動でビジネスの成功確度を上げること、省“略”は少ない労力でビジネスの成果を上げることです。
スループットでは「ビジネスをどう攻略・省略していきますか?」を問います。そこから重要な項目を定め、項目を組み合わせて自社の勝ち方を構想します。
戦略のアウトプットとスループットを構想して勝つための方程式をイメージする。これができると、戦略の解像度が上がり、戦略をつかうためのHOWが動きやすくなるはずです。
次の章では、
勝利の方程式の分かりやすい事例として、
吉野家について触れたいと思います。
<事例:吉野家の勝利の方程式>
吉野家のホームページ情報をもとに吉野家の勝利の方程式をつくってみました。
外食No.1のサービスの実現=うまい×やすい×はやい
こちらを一つずつ説明してみます。
・外食No.1のサービスの実現
私たちは、お客様からの支持の絶対的なバロメーターとして「客数」を重視しています。客数は、市場にいかに受け入れられているのかの指標であり、客数の増加こそ、お客様の支持の高まりを表すからです。
引用元:吉野家HP
吉野家の目指す外食No.1の基準は「客数」を重視していることを明確に示しています。
・うまい×やすい×はやい
「うまい・やすい・はやい」の3要素を志向することに変わりはありませんが、その優先順位と割合・内容は市場に応じて変化してきました。これからも変化させていく必要があります。しかし、今後とも「うまい」が最優先であり続けることは変わりありません。「うまい」は競争力の生命線だからです。
引用元:上に同じく
競争力の決め手となるのは「商品の品質」であり、吉野家は「うまさ」を最重要視することを明確に示しています。
ちなみに、昔は「はやい」が最優先でした。「はやい」は商品を出す早さだけでなく顧客の回転率を意識していたようです。
F1のピットインから着想を得て、食事をしたらすぐに出発できるように、食事するカウンターの椅子は地に足がつかない高さにして長居しにくいものにした、と聞いたことがあります。単なる言葉のコンセプトではなくビジネスに直結した店舗開発の一例ですね。
またまたちなみに、IBMも「Better×Faster×Cheaper」という吉野家と同じコンセプトの時期があったそうです。異なるビジネスモデルなのに方程式が同じなのは面白いですよね。そして、なぜか英語だとカッコいいのが不思議なものです(笑)
<戦略の立ち位置>
最後に、これまでのマネプロと関連させて、戦略がどう位置付けられるかということについてお伝えします。
前回(第7回)までのマネプロでは、マネジメントの2機能4領域の話、MVVを切り口にした企業理念の話をしてきましたね。
企業理念というものは、企業における最も重要な上位概念です。位置付けとしては、戦略よりも上です。
戦略は企業理念だけではなく、外部環境や社内資源に影響を受けます。企業理念という大切にしたいあり方を軸にしながらも、外部環境をふまえた適合性や社内資源をふまえた実現性によって変化するものなのです。
また、企業としての全体戦略は「事業・組織・業務・人材」のマネジメント4領域と連動させ、それぞれの活動に落とし込んでいく必要があります。
これを整理すると「戦略」は企業理念とマネジメント4領域をつなぐ立ち位置にあると言えます。
図解するとこんな感じでしょうか。
企業や事業を主語とした時に
・大切にしたいあり方が理念
・成功させたいやり方が戦略
このような位置付けで覚えておくとGood!
企業理念は意思決定を心で判断する際に使えるものでしたが、
戦略は意思決定を頭で判断する際に使えるものだと思います。
やり方が成功すると勝ちが積み重なり、
理想のあり方に近づく価値も積み重なる。
「勝ちから価値へ」ということです。
<今回のQuestions>
以上が8回目のマネプロでお届けしたかったコンテンツでした!
いかがでしたでしょうか?
ということでマネプロ恒例、最後の問いです。
今回のテーマを通じて、リーダーやマネージャーの方々に問いかけたい4つの質問を選びました。忙しい皆さんの思考の整理と、新たな行動の後押しになれますように!
※「自分はこう考える」「自分ならこれを問いかける」という考えはぜひTwitterにて「#マネプロ」を付けてつぶやいていただけたら嬉しいです!
<次回にむけて>
戦略をどのようにマネジメントへ反映して期待する成果にむけて変化を起こせるかは重要なテーマです。
そして、このテーマを探求して戦略の歴史や潮流から考察していくと、組織論の話と出会うことになります。というわけで、次回のマネプロは戦略と組織についてです。
次回は2週間後の水曜日。
良かったらぜひnoteのスキやフォローをお願いします。
今回も最後までお読みいただきありがとうございました!
読者のみなさんと共にマネジメントの進化を探求できれば何よりです。Twitterのフォロリツ大歓迎です!DMでの感想も是非!(@tsubot0905)
noteで取り上げた内容について、みなさんの持論や新たな問いかけの視点をもらうことでマネジメントの探求がもっと楽しくなるはず。ですので、みなさんからのリアクションを心待ちにしております。よろしくお願いします!