#038 「アルジャーノンに花束を」(ダニエル・キイス著)は万人が優しくなれる一冊
最近書店で目立つように陳列されることの多くなったように感じます。
「アルジャーノンに花束を」です。自分が読んだことがあるからバイアスとして目につくようになったのか、本当に目立つ位置に並んでいるのかはわかりません。しかし、「アルジャーノンに花束を」は絶対に読んだ方が良い一冊です。なぜかというと、人に優しくなれるからです。主人公チャーリィとチャーリィに接する人たち(特にギンピィ!!)を見れば、人の性善説的に優しいところが自ずと思い出されて、優しい気持ちになります。
序盤はとても読みづらい
主人公チャーリィの視点で物語が描かれます。主人公チャーリィは知的障害を持つため、うまく日記が書けません。誤字脱字が多く、全てひらがなで書かれているので最初の章はかなり読みづらいです。私は原文で読んだことはありませんが、この原文の誤字脱字ぷりを日本語でよく訳したと感動しました。チャーリィは物語が進むにつれて知能が上昇していくので、語彙が増えていき日記が読みやすくなっていきます。
知性と社会性は別物
この小説の真髄とも言えるテーマ、「知性と社会性は全く別物」ということが読んでいて伝わってきました。どちらかが成長するともう一方も成長するわけではなく、チャーリィの場合は賢くなったけれども他者との関わり方は最初から、ということになります。
チャーリィは異常に賢くなったので他者との関わり方もある程度は文献から得た情報から推測はできるようになるかも知れませんが、自分の話し方が相手に与える影響だったり、相手の気持ちを推し量る力などは知性とは別に経験を積んで磨く必要があるのだと知りました。
人間の尊厳は知能とは関係ない
チャーリィはこの小説で知能が飛躍的に上昇しましたが、人間の尊厳も同時に得られたかというとそうではありません。チャーリィは自分の知能が高くなるにつれて、自分より知能が劣る存在に対してこき下ろしたり悪態をつくようになります。とても倫理的に評価される行動ではありません。
知能がそこまで高いわけではありませんが、ギンピィという登場人物がいます。ギンピィは序盤はチャーリィに対して意地悪ばかり繰り返して憎まれ役でしたが、最後チャーリィに対して「弱者への優しさ」を体現するような行動をとり、人間の尊厳とは何かを考えさせられました。
人間の尊厳は、どのような要素から成り立つのでしょうか。少なくとも知能には依存しないと言えます。ギンピィが示してくれた「弱者に対する共感性、優しさ」などの美徳は一つの尊厳といえます。知能の如何に関わらず他者の価値を認めて、尊重すること。
「全ての人間は生まれながらに等しく価値がある」
いうのは簡単ですが、日頃職場で実践できているかというと悩ましいところがあります。「あの人は価値がない」とまで考えていないにしろ、「あの人の意見は特によく聞いておいた方が後々自分の役に立つだろう」みたいな下心はないとは言い切れません。無視しても良い人間などいないというのがこの小説から汲み取ることができます。
結論
本離れが進む現代ですが、おすすめの本は積極的に発信していきたいですし、誰かのおすすめの本も読んでいきたいと思っています。「あるジェーノンに花束を」は、人間の尊厳は知能に依存しない(だからと言って勉強しなくて良いと言っているわけではない)ことを教えてくれる一冊です。
他者を評価する際に外見や知性だけでなく、内面的な価値も見つけていきたいですね。知能は経歴書や資格などをみれば比較的簡単に見分けることができるかも知れませんが、内面的な価値は対話によってしか評価することができません。
どうやったら内面的な価値を見つけることができるかというと、「聞く姿勢を持つこと」が重要です。チャーリィは知性が発達しましたが、他者の意見に共感するなど傾聴するスキルは伸びませんでした。もっと傾聴する姿勢を意識していきたいと思いました。
おしまい。
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