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あの男と過ごした幾多の夏の思い出

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或る男と女が一緒に過ごした長い年月の中で、幾度と繰り返された夏。短い夏が始まり、追いかける間も無く終わってゆく。素晴らしい思い出も忘れたい想いも、また新たな夏を迎えるごとに少しず…
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#詩

幸福を探す女

ロードスターに乗る男は最後の話合いに応じることもなく、私からの電話には結局最初から最後まで出ることもなかった。私の20代最後の夏の恋愛は気温が下がるごとに冷めていき、夏の記憶として速やかにフェードアウトしていった。幸せを探す旅は続く。30歳最初の夏に期待を込めて。

夏が1番好きだ
しかも夏の始まりが。

欲望が汗と混じる夏
夏はいつも何かが始まる季節だ。

夏に出会い、永劫の別れも夏に訪れる。

貴重な夏を迎える為に
残りは我慢と懐古の季節になり
夏の記憶はいつまでも薄れない。

紫や橙の混じる夏の夕暮れ空
感情が入り乱れる私の心の様だ。

あの男と過ごした幾多の夏の思い出

2013/7/27あの川に飛び込みたい

悲しみと同化し、ひと時の涼しさをもとめるために

あの夏の夕暮れに戻りたい

いや欲を言うなら、一週間前にでも一か月前にでも戻れるならば

貴方を失くした夏の夕暮れ

夕暮れを迎える前の西日の光が

私の目線の先、アスファルトの上に逃げ水を作る

追いかけても追いかけても掴めぬそれの実態は

貴方が短い人生の中で探し続けても見つからなかった答えに似ている

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あの男と過ごした幾多の夏の思い出

あの男と過ごした幾多の夏の思い出

沖縄の海淀みなく広がる濃い藍は
女の愛より深いのか
男の魂胆が見える程に濁りなく
肌に焼きつく光線は
海の底まで射し込んで
女の網膜に反射し
そこに無いはずの愛情を求めて探す女は
怪しみながらも、男に盲目的に献身している
稀に星型をした砂が指を通り抜ける
その指に永遠を誓う指輪は見当たらぬ

まだ見ぬ島へ続く長い道路から見える海
引き潮の様子に自らの心境を重ねる男
子宝の神を参り嬉々とする女を横

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あの男と過ごした幾多の夏の思い出

夏の日常七月も終わる
蝉の鳴き声は五月蝿く
休暇の子供達が外に溢れる
冷房にあたり冷えた身体を
男の匂いの染み付く毛布で包む
著名人の不倫でざわめくワイドショーが
女に再度愛を意識させる

昼過ぎ、
惰性で男はまたこの部屋にくる
車の中で着替え
車の中に置いていけぬ昔の家庭の空気を
女の部屋に持ち込んで
また女は怒りを押し殺し昼食を用意する男の手元を見つめる

夕立の音で目が覚めた

男と少年、三

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