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#女神
復讐の女神ネフィアル 第1作目『ネフィアルの微笑』 第1話
マガジンにまとめてあります。
暗い灰色ばかりが視界に入る街がある。ジェナーシア共和国の中部に位置する、大きな河川沿いの街だ。
河川には様々な舟が行き交い、人々や物を流れに乗せて運ぶ。大抵は商用だが、単なる楽しみのために旅する者も少ないが全くいないわけではない。
街の名は《暗灰色の町ベイルン》。見た目そのままだ。街の建造物や河に掛かる橋、道の全ての石畳も、暗い灰色だけの街であった。
復讐の女神ネフィアル第7作目『聖なる神殿の闇の魔の奥』 第40話
アルトゥールはいつもよりもずっと精神を集中させて、ネフィアル 女神への長い祈りを詠唱した。
祈りの声は低く小さく、 離れたところにいるグランシアたちの耳にはほとんど入らないだろうが、傍らに横たわるアストラには聞き取れたはずである。
アストラは、ただ黙って横たわっていた。目を閉じ、両手を胸の前で組み合わせて静かに待っている。
アルトゥールは詠唱を続けた。いつも戦いに赴いた時には、即座に
復讐の女神ネフィアル第7作目『聖なる神殿の闇の魔の奥』 32話
アルトゥールは、紫水晶の色の瞳の視線をいったん卓上に落としてから、美貌の女魔術師に向け直す。
「本来は、誰かに代償を支払わせた上でなら、それに対して逆恨みしてネフィアルにさらなる報復を願うことは出来ない」
ネフィアル神官としての力を持つ青年は淡々と告げた。意図的に感情を消して、冷淡にも見える態度を示してした。
「しかしハイランがしているのは、正当なる裁きのための手続きとは言えない。だから
復讐の女神ネフィアル第7作目 『聖なる神殿の闇の間の奥』30話
マガジンにまとめてあります。
《裏通りの店》に戻った。すでに夕闇が迫り始めていた。まだ青い夜の闇と、黄金色が空に見える。東は青い闇、黄金色は西に。太陽はすでに沈んでいた。
ヨレイはいなかった。ロージェもだった。
「無駄足か。すまなかったな聖女様。だけどここの様子を見て、だいたい事情は察してもらえると思う。灰色の世界でしか、生きられない人たちがいるのさ。もちろん、君は知っているだろうが」
復讐の女神ネフィアル第7作目『聖なる神殿の闇の間の奥』28話目
それで、アルトゥールは静かに尋ねた。
「ハイランはきっとジェナーシア共和国の法を犯しているだろう。それもかなり。そこを押さえれば、僕たちは法の観点から見て、罪を犯さずには済む」
けれど暗殺を望むのなら。
「僕にはそれは出来ない」
「老婆の願いを叶えるために、ジュリア様がおられる場所にあっしと侵入しなさったのに、ですかい?」
「ああ、そうだな。誰かハイランに復讐を願うのか?」
それ
復讐の女神ネフィアル 第7作目『聖なる神殿の闇の間の奥』
ロージェはくたびれた上下の服を着ていた。生成りの木綿の下穿きを二重に重ね、上着も同じようにしている。
「ああ、久しぶりだな」
旦那と呼ぶのは止してくれと言ってきたが、もうアルトゥールはそのように口にしなかった。
「さあ、こちらにお座りになってくださいませよ」
ロージェはさっさと先に座る。大きな円卓の周りには、四つの椅子が並んでいる。椅子も円卓も頑丈な木製で、長年の煤がこびりついていた
復讐の女神ネフィアル【裁きには代償が必要だ】第7作目『聖なる神殿の闇の間の奥』第26話
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二人して歩いてゆくと、道行く人は彼らを遠巻きに見た。
黒いローブに長い黒髪の背の高い青年と、いかにも北方の民である様子を漂わせた、巨漢の戦士の組み合わせは目立つのだ。
ジェナーシア共和国の者は、羊の毛織物か木綿の服を着ることが多い。淡い灰色か、生成りの色だ。黒を着る者は少なく、革鎧で身を覆って歩く者も少ない。
街の警備の役人は、軽量の鎖帷子(くさり
復讐の女神ネフィアル【裁きには代償が必要だ】第7作目『聖なる神殿の闇の間の奥』第25話
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ヘンダーランの屋敷から持ち出した本と巻き物を魔術師ギルドに、正確に言えばグランシアに任せて、アルトゥールとリーシアンはギルドの塔のテラスから下りた。
マルバーザンが運び出してくれたのだ。
この異界の魔物の力を借りて、またヘンダーランの屋敷にやって来た。
マルバーザンは、出来るだけ人目につかないように、屋敷の裏庭に下ろしてくれた。
「ありがとう、助か
復讐の女神ネフィアル【裁きには代償が必要だ】第7作目『聖なる神殿の闇の間の奥』第23話
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ここはグランシア一人のために割り当てられた研究室である。布の垂れ幕で、寝台のある場所とは 区切られている。ここで寝泊まりも出来るのだ。
グランシアは、他に住まいを持たず、ずっとここで暮らしている。ギルドに属する者の全てが、そのような特権を与えられているわけではなかった。
金髪の女魔術師が扉を開けると、同じように淡い灰色のローブを着た女が二人いた。 グランシ
【復讐には代償が必要だ】復讐の女神ネフィアル 第7作目『聖なる神殿の闇の間の奥』第21話
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「僕の一生分?」
思わずアルトゥールは聞き返した。
「なぜそこまでしてくれるんだ? 確かに、上位の魔族の寿命からすれば、人間の一生は短い。それでも、単なる暇つぶしに付き合うってほどの短さではないはずだ」
「どのくらいになるんだ?」
横からリーシアンが訊いてくる。
「そうだな、僕たち人間にとっての一年分ぐらいには相当するんじゃないだろうか」
北の地の
復讐の女神ネフィアル【裁きには代償が必要だ】第7作目『聖なる神殿の闇の間の奥』第17話
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リーシアンは、それを聞いてにやりと笑ってみせた。 後ろから続いて階段を上がる。
「俺はハイランのことは気に入らん。かなり危険な奴だと思っている。しかし少なくともこの件に関する限り、お前は、いや俺たちはと言った方がいいな、救われた面もあるんだ」
ここで言葉を切って、紫水晶の色の瞳の青年神官の視線を正面から受けとめた。二人とも階段の途中で立ち止まる。
「お前の
復讐の女神ネフィアル【裁きには代償が必要だ】第7作目『聖なる神殿の闇の間の奥』第16話
マガジンにまとめてあります。
そこからアルトゥールはジュリアと別れて行動することにした。ジュリアは神殿にこの件を報告すると言った。
「せいぜい、もみ消されないようにしてくれ」
例によって皮肉な物言いになる。ジュリアは何も答えなかった。あきれたようにため息をついて、
「では失礼します、あなた方も気をつけて」
そう言い残してヘンダーランの屋敷の前から去っていった。
ラモーナ子爵令嬢
復讐の女神ネフィアル【裁きには代償が必要だ】第7作目『聖なる神殿の闇の間の奥』第15話
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もはや どれだけ言っても従者は頑なな心を変えず令嬢を連れて逃げ去ることもしないであろう。そうと察したのでアルトゥールは、もうそれ以上言わなかった。
無意識のうちに抑え込んできた冷ややかな闘志が、体の中に、そして精神にも湧き上がる。神官は通常は鋭利な刃物を使わないものだが、その時の意識は従者が持つ剣よりも、なお鋭く研ぎ澄まされていた。
ラモーナの悲鳴が聞こえ
復讐の女神ネフィアル【裁きには代償が必要だ】第7作目『聖なる神殿の闇の間の奥』第14話
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従者は、彼はおそらく馬車の御者をしてここに来たのだろう。そう察せられるが、その忠実な男の目には怒りが燃えていた。
従者が持つ剣は刃が短く、従者自身の二の腕の長さほどしかないが、剣先は極めて鋭く、優れた腕の鍛冶屋の鋳造によるものと見て取れた。それだけのことを瞬時に、アルトゥールは見て取った。
まっすぐに自分の方へ向かってくる剣先を弾こうとして、メイスを横に払