【厳然たる事実に立ち向かえ】ウィルトンズサーガ2作目『深夜の慟哭』第17話
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「すぐに? この夜に、ですか?」
貴族の令嬢が出歩くには遅過ぎるのでは、そう言いかけて思い直す。そうだ、彼女はヴァンパイアなのだ。もうじき、そうなる。新月、明日の夜には。
「ですが、今はまだ人間の体のままなのですね?」
「すでに力の兆候は現れていますの。お待たせしましたわね。もうかなり月が細いので、夜のほうが力が出るのですわ」
「昼日中には出歩けるのですか?」
「ええ。力は弱まりますけれど」
「お前は、アントニー。大丈夫……じゃな