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医学・解剖学

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ルチャーノ・ステルペローネ(小川熙訳、福田眞人医学史監修)『医学の歴史』原書房

ルチャーノ・ステルペローネ(小川熙訳、福田眞人医学史監修)『医学の歴史』原書房

 …同じタイトルの本の感想文が続いて恐縮ですが(笑)

 ステルペローネは1924年生まれのイタリア人病理学者・医学史家。医学知識の啓蒙・科学ジャーナリズムにも関心を持ち、国営放送(RAI)の医学番組のディレクター・コメンテーターを28年間務めていたと略歴にはあります。イタリアでは100冊以上の著作を誇る著者とのことですが、日本語で訳出されているステルペローネの著作は本作のみ。

 そして本書の和

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梶田昭『医学の歴史』講談社学術文庫

梶田昭『医学の歴史』講談社学術文庫

 入院中に読んでました。
 タイトルの通り医学の通史ですが、こんなに面白くていいの?と思っちゃうぐらい、医学が宗教・哲学的なまじない・祈祷から科学に変化している様が読み物としてよくまとめられております。治療や予防といった大きな目的を背景に、学問が人文科学から自然科学へ、そこからさらに社会科学へとも進展しようとしていくなど、「医学」そのものの変化を感じやすい一冊でもありました。

 エピソードの書き

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ノーマン・カズンズ(松田銑訳)「笑いと治癒力」岩波現代文庫

ノーマン・カズンズ(松田銑訳)「笑いと治癒力」岩波現代文庫

 入院しているとき、コメントでおすすめされた本。
 ちなみに1981年に日本語で最初に刊行された時のタイトルは『死の淵からの生還――現代医療の見失っているもの』。更に1979年に刊行された際の原題は『ANATOMY OF AN ILLNESS AS PERCEIVED BY THE PATIENT』(拙訳:患者の立場から感じた、ある病気の解剖学)とだいぶ一般化されたタイトルとなっており、必ずしも「

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セルフケアと"美術"解剖学

セルフケアと"美術"解剖学

 先日コロナに感染した際、私は経験したことの無い胸痛に苦しんでいた。

 痛みを感じる箇所は左胸寄りの中央部。肋骨をくっつけている胸骨の一番下、みぞおちの上辺りと言うとわかりやすいだろうか。その時は扁桃炎と咳のピークで、当初は肺炎や気管支炎、さらに薬の副作用(心筋梗塞・狭心症等)の可能性も疑っていた。
 とりあえず副作用説を消すため、私は薬剤師に電話をかけた。
「薬を抜いても大丈夫ですよ」
 とい

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「鑑賞者」としての美術解剖学

「鑑賞者」としての美術解剖学

1.美術解剖学との馴れ初め

 タレントの松嶋尚美さんは地元に司馬遼太郎の石碑があったことをきっかけに司馬遼太郎を読み出した…という消されたWikipedia情報がある。真偽のほどはわからないし、わざわざ確認する気も無いんだけど、人はそういう、「なんで?」と言われそうなきっかけで突如として新たな趣味・関心を開拓することがある。

 私の場合、美術解剖学がそれだった。過去に漫画っぽいイラストを描いて

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