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【授業】型にはめることが自由な表現を促す
アクティブラーニング全盛の時代、いかに生徒の表現(発言、意見文、作品など)を引き出すかは、私達教師の腕の見せどころであり、大きな悩みどころでもあります。
そんな中、「自由に思ったことを書きましょう」という課題や問を出す先生がいます。自由にのびのびと表現させることが、生徒の表現を引き出し、ひいては生徒の成長につながる、とのお考えなのだと思います。
これが悪いと言いたいわけではないのですが、私はこの問い方に反対です。
「自由からの逃走」という言葉(少し意味や文脈は異なりますが…)があるように、まるっきりの自由は不安をもたらします。
その不安は、生徒の表現への意欲を下げさせると思うのです。なので私は、生徒の表現を、あえて型にはめた方が”自由”な表現を引き出すことができると思うのです。
〈私の教育思想〉
先述の通り、生徒の表現をあえて型にはめることで、より”自由”な表現を、より多く引き出すことができます。なぜなら、まるっきりの自由は不安を煽るからです。
思春期真っ只中の生徒たちは、他人からどう見られるかに非常に敏感です。なのでまるっきり自由な課題だと、クラスメイトからの評価(どう見られるか、何を言われるか)を恐れて(恥ずかしがって)、表現から逃げてしまうことがあります。
ですが、型を用意してやれば「先生にこう表現しなさいと言われたから」という言い訳ができます。言い訳ができる状態を作ってやることで不安が軽くなり、表現に向かいやすくなるのです。
また、表現させるには「何を表現するか(表現内容)」と「どう表現するか(表現方法)」を考えさせる必要があります。
まるっきり自由な課題だと、生徒はこの両方を考えなくてはいけません。負担は大きいですし、やはり不安も大きくなるでしょう。
ですが型を用意してやれば「どう表現するか(表現方法)」を考えなくてよくなります。その結果、生徒は「何を表現するか(表現内容)」に集中できるようになります。
考えることが少ないほうが「これならできそうだ」と思う生徒は増えるはずです。そのため生徒の表現を、より多く引き出すことができるのです。
また表現内容に集中できるということは、より広い、より深い表現ができるということでもあります。タイトルにある「自由な表現」とは、このような意味です。
表現方法に型をはめることで、表現内容がより”自由”に、広がり・深まりのあるものになるのです。
傍論ですが、能楽の大成者世阿弥は、芸事の上達手順を「守破離」と示しました。やはりまずは型を守る=型にはまることが必要なのです。
型の中では表現しきれなくなってきたと思ったら、型を破り、型から離れればいいのです。
〈私の工夫〉
私は、授業における表現活動の全てで同じ型を使わせています。具体的には以下のとおりです。
①主張:私は~と考える。
②根拠:なぜなら~だからだ。/理由は〇つある。第一に~だ。第二に~だ。
③例示:実際~だ。
④反駁:確かに…だ。しかし~だ。
⑤結論:以上のことから~といえる。
この型は「PREP」とよばれるプレゼンのフレームワークをもとにしたものです。
PREPとは「Point(主張)-Reason(理由)-Example(例示)-Point(主張)」の略で、この流れでプレゼンを進めると伝わりやすくなると言われています。
私はここに④反駁を加えた型を使っています。これは、他者からの反論を想定することで自分とは異なる意見の良さにも気づき、多面的・多角的に考えられるようになってほしいからです。
生徒は、基本的にはこの形に沿って自分の意見を表現していきます。
ただ、型の使用を強制しているわけではありません。あくまで「これを使うと便利」というだけです。
そのため表現することに慣れてきた生徒は、この型をアレンジして書くこともあります。そのことによって叱られたり、減点されたりすることはありません。
3年間同じ型を使い続けることで、同じ課題における自分の成長度合いを確かめやすくなるという効果もあります。
レポート(文章による意見表現課題)など形に残るものは、卒業直前に読み返させると「こんなにひどいレポートを書いてたのか笑」という感想が、たくさん出てきます。
またこの型は、高校・大学進学後も約似っっているようで、3年間担当した生徒からは「レポートは本当に嫌いだったけど、今となっては一番役に立っている」という感想を、卒業数年後にもらうことが多いです。
〈まとめ〉
「自由に思ったことを書きましょう」という課題は、一見生徒の自主性を広く認めた良い課題に見えます。
しかし実は、自由すぎるこの課題は生徒の表現を引き出すことができません。
生徒に考えさせたい、表現させたいのは「表現内容」です。
ならば表現方法には型をはめ、内容に集中させてやることで、より多くの、より自由な表現を引き出すことができるのではないでしょうか。