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【書評】探究学習における教師の役割とは?〜『「探求」する学びをつくる』を読んで〜
新学習指導要領が施行され、高校では「総合的な探究の時間」が導入されました。
私は中学校の教員なので高校の実態はわかりませんが、「学習」が「探求」に変わって、どれほどの変化があったのでしょうか?
実態はともかく「探求」は昨今の教育における重要なテーマの一つとなっています。
でも、そもそも「探求」って何?どうやるの? 今回紹介する『「探求」する学びをつくる』は、そんな疑問にアメリカの先端事例「ハイテック・ハイ」を紹介しながら答えてくれる一冊でした。
印象に残った言葉
「深い学びの体験をデザインする教育者にとって、最も重要なのはコラボレーションです。正解を教えてくれる本やカリキュラムはないし、誰かが教えてくれるわけでもありません。」
まず、教育者の役割が「学びの体験をデザインする」となっています。
もはや「何を教えるか」でも「どう教えるか」でもない。「どんな体験(経験?)を用意するか」を考えなくてはならない。
「Teacher(教える人)」という言葉すら、適切でなくなっていくのかもしれません。
また、私達教師も「正解のある」学校教育の中で育ってきたので、授業方法や探究学習の方法も、つい「正解」を探してしまいます。
でも、これも否定されています。生徒に探求させるのと同じように、教師も「探求」のあり方を「探求」する。
これがあるべき「探求」の姿であり、そのプロセスが「深い学びの体験」になっていくのかもしれません。
「評価(アセスメント)に関しては、評価そのものよりもフィードバックに力を入れます。評価はどうしても成績策定のための割り切らなければならない部分もありますから。」
「探求」学習を考えたとき、最も大きな心配事の一つに評価があります。
しかしハイテック・ハイの教師はこのように言い、実際に成績とは別のフィードバックペーパーを発行しているとのことです。
数百人という生徒を見なければならない環境では現実的ではないかも知れませんが、この割り切り方は参考にするべきかも知れません。
「『批評』は『審判』することではなく、ましてや作品をけなすものでもなく、より良いものをつくっていくための『プロセス』なのである。」
探求学習の過程の一つとして大切にされていることに「批評」があります。
私が「非攻撃型自己主張」の記事で書いていたことだ!と嬉しくなりました。ですが、私の書いていたものでは足りませんでした。
批評を受けて自分の作品を見直し、より良く仕上げていく時間が必要です。
今の私の授業では、「見直し、より良く仕上げていく時間」を確保できず、批評しあって終わりになってしまっていました。
もう一度、授業の進め方を見直さないといけないと思いました。
疑問に残ったこと
本書の中には、度々「美しさ」「エレガンス」「エクセレンス」といった類の言葉が出てきました。
探求では「つくる」ことに重きをおいているとの記述もあり、美術・創作的要素を多く含む実践であるとの印象を受けました。
ですが私達は、言葉を使って学習し、言葉を使って考えます。「なんとなく美しい」を目指すことに、学習として、どのような意味があるのでしょうか?
私はどうしても、言葉で理論的に(=誰もが納得できるように)表現することのほうが大切なのではないかと思ってしまいます。
まとめ
疑問に書いたように、納得できない部分もありました。
しかし、「探求」という学び方を理解するためには、とても勉強になる一冊でした。
読みながら自分の授業を振り返ることができました。
「どのような体験(経験)を用意するか」を教師としての自分の役割と捉え、もう一度自分の授業をつくりなおしてみたいと思います。
紹介した本
書 名:「探求」する学びをつくる
著 者:藤原さと
出版社:平凡社
出版年:2020/12/3
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