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【読書】暗やみに能面ひっそり
2025年2月12日(水)、『暗やみに能面ひっそり』を読みました。「小学校中学年から」とありますように、児童書です。記録を残します。
■本の概要
『暗やみに能面ひっそり』は、2023年9月に、BL出版から出された本です。作者は佐藤まどかさんで、絵はアンマサコさんが描かれています。
能面師を祖父に持つ少年の話です。
〈あらすじ〉
小学四年生の宗太は、夏休み、京都のおじいちゃんのところですごすことになった。
和室ばかりの、めいろみたいに古い家、
能面師のおじいちゃん、
かべにかかったいろんな表情の能面たち……。
宗太も教わりながら、能面を打たせてもらうことになった。
こわくておもしろい毎日がはじまる!
■面白かった点
(1)物語を通して頭に入る知識
私は、時々、能狂言を観に行くことがあり、そこから本書を手に取りました。
鑑賞後に能楽堂を出る時ぐらいに、「今日の面は、〇〇だったね。」と会話している人たちを見かけることがあります。私は、ストーリーを追うことが中心で、能面やその表情の動きを追うまでには至っていません。自分とのレベルの差を痛感する場面です。かと言って、数多くある能面を、むやみに覚えるのも無理があり、関心を持った面から少しずつ頭に入れるようにしています。
本作では、物語の中で「能面」が描かれており、違った視点から知識が、すぅ~っと入ってくる感じがして、面白かったです。
例えば、有名な「般若」の面の前後として、般若になる前の「生成」や、般若を更に進化させて蛇となった「真蛇」が紹介されていました。「生成」→「般若」→「真蛇」という流れです。
加えて、どの面が、どういった演目で使用されるかも、本に挿まれていた付録紙に書かれていました。
(2)能面師の方の協力
(1)に関連しますが、本書では、能面師の烏丸光広さんが協力されています。それもあって、能面を打つ工程や作業場の様子が、より現実感をもって描かれていたように思います。また、読後に、能面師の方を検索してみるなど、いつもの能面を観る側でなく、作る側のことも意識することが出来ました。
(3)現実の世界
能を観るとき、現実社会で自分が感じたこととの対比を持ってみることがあります。
本書も、能面や能をに触れることで、宗太が現実社会(人間関係など)で、成長していく場面が描かれていました。
創作された世界と現実世界、この二重構造は面白いです。
■最後に
能狂言関連では、演目を扱った本や、歴史を扱った本など、様々な本があります。専門書的な本も少しずつ読んで行きたいです。本を読んだり、専門家の人の話を聞くと、理解が深まるように思います。
本日は以上です。