マガジンのカバー画像

随筆まとめ

14
ネットのブログは透明な日記みたいです
運営しているクリエイター

記事一覧

随筆14

随筆14

東京は風が冷たい。もうすぐ今年がおわる。
今年は社会人になった。
フリーターになろうと決意した矢先転がり込むように入社して9か月がたってしまった。
ギャル営業のイケPR会社に入社するつもりだったが、ちょうど1年前の12月に内定辞退をして、バイトでもしてふらふらする心づもりをしていたらなんとゴリゴリのベンチャーに入社した。
まいにちのように酒を飲んで仕事をしていた学生時代と違って、いまは昼に働いて夜

もっとみる
随筆13

随筆13

「私に恋人がいないのは、愛に対する努力が足りてないからだって言うんですよ。こんな時間だし仕方ないか、酔っ払いの戯言と思って聞いてたけど、お前はまだ本気になりたいと思う人にまだ出会えてないだけだ、とかアツく散々言われて。なんかほんともう、悔しいんですよ。
だって私はたくさん愛されて愛し方を覚えて、いつか誰かを愛す準備をしたいだけだもん。ひとつしか愛し方を知らない人なんてつまらないじゃないですか。好き

もっとみる
随筆12

随筆12

全身蕁麻疹に見舞われた。
社会人も7ヶ月をすぎ、もうすぐ師走になる。

友達の家で寝て、仕事に行った次の日全身が痒くて皮膚が燃えるみたいだった。
絶対ダニだ、最悪だ、と思っていたら掻いたところが綺麗にミミズ腫れになっており、絵が描けそうな雰囲気だった。
掻くと腫れて、どんどん広がって痒くなり、全身がキャンパスみたいになった。

赤くただれてぶくぶくとしてくるものだけが蕁麻疹だと思っていたため、

もっとみる
随筆11

随筆11

地元では、夕陽が落ちる色が都会とは違って見える。
東京から1時間とすこしの地元の空気がスッと体に入ってくるとき、首の後ろあたりで私をこわばらせる何かが外れるような心地がする。

夜の秋の風は乾燥している。
隣の家の暴力的な金木犀がこちらにまでしっかりと香ってくる。
冷たい秋風はわたしの肌の潤いを奪って吹き抜ける。

姉がなくなって6年経った今日の天気は、台風一過で大晴れ。
久しぶりに会う親戚はどん

もっとみる
随筆10

随筆10

いつのまにか9月だった。
ということは入社して5ヶ月も働いているみたい。
それで23歳になった。
今年の誕生日こそは恋人と過ごしたいな、なんて思っていたけど無理だったし、普通に仕事でした。

新しい生活を求めて引っ越しをした。
前に住んでいたところを少し洒落た感じにしたら、今住んでいる街になる。
住んで1週間も経たないうちにGの赤ん坊に出会った。親玉に出逢ったら失神してしまう気がする。
帰り道、秋

もっとみる
随筆9

随筆9

ものすごく熱が出た時に食べた冷凍のイチゴは人の舌みたいだった。
日曜はじまりのカレンダーを見て、ものすごく違和感を感じた、月曜はじまりじゃないとダメだ。

終電より3.4本早い電車で帰る。
今日は座れなかったけど、雨が降っていたから座るよりも立っていた方が良かった、ラッキーだったと思うことにした。
耳から爆音でBPMが上がりそうな曲をいれてつ家路につく、人がいないので少しだけ歌ったりする。

いい

もっとみる
随筆8

随筆8

本当に恥ずかしながら、体調を崩した。
人間は精神よりも先に体が壊れると、簡単に選択を変更したくなるんじゃないかと思う。
実際精神がイカれてきていても会社に通う人間はたくさんいるのだし。体が第一。ここに関してはまごうことは無い。

会社を平日4日欠勤し、土日を挟んで6日間、ずっと家で天井を仰いでいた。婦人科系の免疫疾患だったのだけど、人生でいちばんしんどかった。
せっかく休んだしいろんなことを考えた

もっとみる
随筆7

随筆7

生き返るかの瀬戸際みたいな様子で1ヶ月くらい生死を彷徨った植物が枯れている。
4ヶ月くらい前、会社が決まらなくて実家に帰った時、ホームセンターで買った観葉植物が枯れている。
でもこれは多分もうダメだ。根っこまで枯れている。
このことを話したらもうすぐ2年の付き合いになるドライバーに「あんたの代わりに枯れてくれたんだよ」と言われた。

わたしは土も変えずにずっと水だけをやっていたので、繊細な植物はみ

もっとみる
随筆6

随筆6

サンマルクカフェで時間を過ごすときはいつも、クラムチャウダーを頼んでしまう。海鮮独特の風味を帯びたクリーム色のスープは、小腹が空いている時にとてもよい。コロコロしたじゃがいもやベーコンが入っているのも嬉しい。
ところで私は先程からずっとサンマルクカフェで作業をしているのだけれど、隣の席の男の鼻息が荒い。

しかもなんか汗臭い。中学のときの、プールのモワッとしていて熱気

もっとみる
随筆5

随筆5

いつぶりかの新幹線に乗っている。
新幹線は広い。揺れも優しい。なんとなく新しい匂いがする。
持ってきた本を開く気力がなかなか起きないまま、考えている。考えるフリをしている。

振られたんだな、会社に振られた。
社長面接もして感触も最高だったはずなのに振られた。社員4名と食事会までしたのに。
「こんな飲み会じゃ断りの連絡が来ちゃうかな笑」「君に会えた縁だと思っているよ」って言ってたじゃん。
誠実さっ

もっとみる
随筆4

随筆4

辛いものが好きだ。
前、だいぶ前になるがワサビそばだかそばワサビ風味だかのカップ麺をたべたときのはなしをしたい。

ワサビの辛さは脳天まで届くし気持ちいい、と思ってしまうほどの麻薬的中毒性がある。
山ワサビとか超テンション上がる。
口に入れてわかるヤバイと思った瞬間ではもう遅くてその3秒後あたりから鼻腔中を叩いてワサビが暴れまわる。時に耳の方までまわってきて思考をダメにする。声にならない声を出しな

もっとみる
随筆3

随筆3

小説は良い。念願の読破冊数が15冊にも満たない私が言ってもまるで説得力は無いが、とにかく良い。

嫉妬するような美しい文章に出会うときも、誰かの人生の代弁をしているかのような壮大さを秘めている文章に触れるときも、とにかく美味しい。美味しい文章を食べている者は美味しい言葉を吐ける、私はそう信じている。
ので、自分の好かない人間のエッセイ本などを食べた時には頭の真ん中が腐ったような心地になる。だって、

もっとみる
随筆2

随筆2

半ば盲信的に、義務的に映画を見た正月だった。
実家の居心地は良すぎて、昔は嫌いだった漬物が美味しいと感じる年になったことに感慨深くなったりする。
いよいよ社会人になる年になってしまった。
ハッピー令和3年。

7年ぶりくらいに父親がお年玉をくれた。お年玉をくれたというより、新しく買った5Gの携帯の操作方法を教えてやるから、という名目でお金をもらった。もっと正直に言うとせびったに近い。金ピカのキティ

もっとみる
随筆1

随筆1

冷たくなった珈琲を啜っている。卒論を提出し終えた身体はいつもと何も変わらないように思えた。それが、卒論の出来栄えや達成感がイマイチだったことと関わっていないと信じつつ、読みたかった本を読んでいる。あと3時間でアルバイトの時間になる。

読書家と思われたかった。でもわたしは、実際は年に10冊程度しか本を読まない。しかもエンタメ的な私小説や詩歌の作品ばかり読んで満足している。年に3回くらいは堅めの文庫

もっとみる